妻、母、娘、仕事人……多くの役割の板挟みで苦しくなったらどうすればよいのでしょうか。上場企業で管理職を18年継続しているいくみ@女性管理職&ブロガーさんは「人生1度きりですから、自分が好きなようにやっていくこと。周囲から「どうよ?」と思われることを気にするのではなく、自分自身で「これよ!」と思える生き方をすることでよいのではないでしょうか」といいます――。

※本稿は、いくみ@女性管理職&ブロガー『女性管理職が悩んだ時に読む本』(日本能率協会マネジメントセンター)の一部を再編集したものです。

仕事人、妻、母の3つの役割をどうこなすか

仕事も頑張りたいし、家事や育児にも一生懸命。女性管理職のプライベートの悩みは、妻や母としての役割をどう果たしていこうかという点や常に時間に追われてしまうことに尽きます。私は妻としても母としてもかなりイケてない口ですが(笑)、アップアップぶりをお恥ずかしながら披露させてもらいます。仕事人と家庭人、役割や時間のバランスの取り方。ここがもっとも悩ましいものです。まずは役割について。「好きこそものの上手なれ」と言われるとおり、仕事好きだからこそ40年近く続けてきて、管理職に就くこともできたと振り返るのですが、私にとって家事や育児は「好き」という感覚よりも「やるべきこと」という感覚が上回ってしまいます。この感覚からすると、つい、仕事人を優先してしまいがちになるのですが、家事や育児も私の役割の1つであることに変わりありません。それぞれの立場の板挟み状態。どう切り抜けていけば良いでしょう? 例えば仕事に集中したい時に急な家庭の用事ができてしまったり、逆に家庭のことをやりたい時に、急に仕事の呼び出しがあったり……その度に右往左往してしまうのです。

木製のシーソー
写真=iStock.com/MicroStockHub
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長続きの秘訣は「ゆるっとこなす」こと

どちらの自分も同じ自分。言い換えれば仕事人と家庭人両方の生き方を選んだのは自分自身なのですから、できる範囲でそれぞれをやっていきましょう。あっちもやりたいのに&こっちもやりたいのにって、焦ってしまっても身体は1つしかありません。どちらか一方をやっている時はその為の時間なのだと捉えて全集中すればよいです。色々な役割、すべて完璧にこなそうとせず「ゆるっとこなしていこう」そんな考え方が長続きの秘訣です。

「孫がかわいそう」と言われた日々

一方、自分の両親との関係性についても、ある意味役割の1つと言えるでしょう。個人的な話で恐縮ですが、2022年時点で父は91歳、母は90歳、ありがたいことに健在。今でこそ長生きして人生を十二分に楽しんでいる両親に深い尊敬の念を抱いていますが、何しろ「昭和1桁生まれ」女性が子育てしながら働くなぞ、もってのほかだという考え方の世代。私が息子を出産した後にも仕事を続けようとしている時に「何のために働くのだ?」「孫がかわいそう」とさんざんお小言を聞かされてなかなかに苦手な存在でした。両親が娘の私に対して望む姿はおそらく「家庭をしっかり守って夫や子供を支える役割」だったと想像しますが、両親には申し訳ないのだけれど、親の望むとおりに生きるかどうかは自分が決めること。私はそうでない生き方を選びました。両親にしてみれば、私自身というよりも孫のことが心配でいても立ってもいられない……そんな日々だったのかもしれません。

女の赤ちゃんの手を握る老婆の手が接写
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自分が「これよ!」と思える生き方をすればいい

妻や母としてイケてない私ですが、きっと娘としても相当イケてない存在、イケてない尽くしです(笑)。でもね。人生1度きりですから、自分が好きなようにやっていくこと。周囲から「どうよ?」と思われることを気にするのではなく、自分自身で「これよ!」と思える生き方をすることでよいのではないでしょうか。私がそう思っているということは、息子も同じように思っているだろうから。自分が親の立場になった時には、「こうすべき」ということを極力息子には言わずに「元気でやっているなら、よし!」と見守りに徹することを心がけるようにしました。ただ、親の介護が必要な状況になっていたら、こんなふうに自分の主張ばかり通すことも叶わなかったかもしれず、改めて両親に感謝の思いです。夫の両親は我が父母より1回り近く年下ではありますが、やはり2人とも健在。長く商家を切り盛りしていたので義父母とも毎日忙しく働いていて、嫁の私が働いていようが、たまにしか帰省できずにいようがお構いなしの大らかさで接してくれたことも、ありがたいことこの上ありません。親の期待がどうであれ、子供は元気で楽しくやっていればOK。もちろん、子供の親に対する期待もしかり。自分が子供の立場であっても親の立場であっても、役割ってそこを軸にすればよくて、大切なのはたとえ親子間であったとしても、相手をリスペクトする心根です。

「お先に~」と帰るのは心苦しいが…

仕事をしていると定時だけで終われないことも多々あり、時には休日(土日祝)の対応が必要なことも発生。自分たちの都合だけで物事が運ぶわけでなく、当然そこにはクライアントの都合が存在します。部下さんたちが臨機応変に対応してくれているなか、管理職だけ「お先に~」と職務を終えるのは心苦しくて仕方ありません。さりとて、子供が幼少の頃はお迎え時間が迫ってきていて、後ろ髪を引かれるように去っていかねばならず。コロナ禍以降はリモートワークが浸透してきているので、ワーママ部下さんたちの様子を見ていると、やや時間的な制約も緩和されつつあるように感じますが、それでもカウントダウン状態にあることに変わりなし。常に時間に追われてしまうの、もう、無理~! って叫びたくなることもしばしばです。

赤いプッシュピンを持つカレンダーのコンセプトイメージ
写真=iStock.com/XtockImages
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定時後の対応をどうするか

人に与えられた時間は1日24時間で、どのような立場・状況であったとしても等しく同じ。パソコン持ち帰りやら会社スマホ携行やら、いろいろな道具を与えられたりしますが、定時以外であれば「できる限り速やかに対応する」ということでかまいません。逆に、管理職仲間のなかには「プライベートの時間は一切対応せず」を貫いている人もいて、否定するつもりはないのですが、「そこ、徹底する所じゃないでしょ」とつい思ってしまいます。大事なのは、自分主体ではなく相手主体で考えること。自分は家庭事情で先に帰ってきているけれど、部下さんたちはまだ仕事をしている場合に、知らん顔で通すのか、相手の気持ちに寄り添うのか? 私はできる限り後者でいたいです。定時以外の対処法、無理ならばもちろんスルーでも仕方ありませんが、可能な範囲でチェックするようにして、より早めにレスポンスすることで、部下さんたちとの信頼関係構築やその後の「自分の積み残し防止」に役立つこともあります。ちなみに、部下さんたちと「急ぎの場合はスマホにチャットをお願い」等、その連絡手段について限定をしておくと、あれもこれもチェックする必要がなく済むので便利です。

子供の長期休暇が辛い

いくみ@女性管理職&ブロガー『女性管理職が悩んだ時に読む本』(講談社現代新書)
いくみ@女性管理職&ブロガー『女性管理職が悩んだ時に読む本』(日本能率協会マネジメントセンター)

普段の仕事生活に加えて、さらに時間との闘いに追われてしまう時。それは子供の長期休暇の際です。具体的には夏休み、冬休み、春休み。保育園生だとあまりこうした季節ごとの長期休暇スケジュールには影響されませんが、小学生以降は常に悩ましい問題。小学校の時は学童保育が開所してくれているものの、平時だとランチは給食で気にしなくても済むところ、長期休暇は弁当持参。中学生以降だと、朝から子供の留守番状態ですから、ランチや場合によっては夕食も用意して出かけなければならず、帰宅してからは深夜まで台所に立ちっぱなしなこともザラです。中学以降は部活に励んでもらうもうね。ある意味「母親の策略作戦」。子供だけで参加できるキャンプや合宿に申し込んだり、中学生以降はとにかく部活に励んでもらう。周囲には、子供自身で食事を作って食べるという習慣を励行しているご家庭もあって、立派だなぁと感心しきりでしたが、私は甘いのかもしれませんが、1人っ子だったこともあって「1人調理1人食べ」は寂しいだろうなぁと、あえてその方法を子供にはお願いしませんでした。また、ママ友同士の交流を日頃から深めておいて、お互いに預けたり預かったりということで凌げたことも多々。長期休暇が終わって次の学期が始まった時は心底ホッとしたものです。子供の長期休暇は折々必ずやってきて、残念ながら避けて通ることができません。自分1人で頑張ろうとせずに、周囲のイベントやサポートの力を借りて乗り切っていきましょう。