転職面接で聞かれる、圧迫系のいじわるな質問にはどう答えたらいいのか。キャリアカウンセラーの中谷充宏さんは「圧迫系の質問は、面接官のねらいがわかれば答えることができる。キレたり開き直ったりすることなく、指摘をいったん受け止めたうえで、相手企業に対する熱い思いをPRしてほしい」という――。(第3回/全6回)

※本稿は、中谷充宏『20代~30代前半のための 転職「面接」受かる答え方』(秀和システム)の一部を再編集したものです。

採用面接
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当社で働くには、少し経験が足りないようですが?

【面接官が知りたいのはココ】
秒殺レベルの致命的な経験不足ではないよ
経験不足を補う今後の取り組みや勤労意欲を

若手ゆえに、応募企業が求める経験が不足している場合があるでしょう。

しかし、まったく足りないなら、とっくに書類選考で不採用になっているはず。

面接に呼ばれている現状を踏まえつつ、経験不足については下手に言い訳せず、素直に受け止めておきましょう。

「吸収力には自信があるので、経験不足はすぐに補えます」と強気で押し切ろうとするのはNGです。

大切なのは、この経験不足をどう補っていく心積もりなのかを、入社後の具体的な取り組みを盛り込みつつ説明できるかです。たとえば、「この経理業務の経験不足を補うために、日商簿記1級取得へのチャレンジや、会計ソフトの操作勉強会への積極参加に取り組んで行きたいと思います。簿記については、A簿記学校の通信講座を受講中です」といったように、入社が叶いさえすればOKではなく、具体的に目標を立ててキャッチアップしていくという自己啓発力・研鑽力をアピールしてください。

たとえばこういう人の場合

25歳女性、大卒。新卒入社した会社で勤務中。今回は2社目の転職で、異業種・同職種への応募。

NG!
経験不足は、入社後の頑張り次第で、どうにでもなると考えています。

↑開き直りと感じられる回答は避け、具体的な取り組みを語りましょう。

OK!
確かに経験不足と自覚しています。
御社の求人の「求める人物像」に「実務経験3年以上」とありましたが、私の経験年数は達していません。
しかし、この経験不足は、仕事への高いモチベーションを維持しつつ、とにかく目の前の業務に集中して日々補っていくしかないと思っています。
大学の同窓で、御社に新卒入社した友人に3年遅れて入社することになりますが、この年数差を埋めて追い越すのは、並大抵の努力では難しいでしょう。
オフの時間もフル活用して、最短で周りに追いつけるように、一生懸命頑張りたいと思います。

↑まず素直に指摘を受け入れた上で、自分の考えをしっかりと展開できています。またオフの時間活用にも触れることで、その本気さが伝わることでしょう。

「やる気」をアピールされていますが、働く以上当然では?

【面接官が知りたいのはココ】
若手だから、やる気をPRせざるを得ないのは分かるよ
売りとなる経験・スキルがなければ、ポテンシャルを感じさせてほしい

冷や水をぶっかけられた心境になる人も多いでしょう。

若手ゆえ経験・スキルがまだ乏しいため「やる気」一辺倒のPRにならざるを得ないのは、仕方がありません。それは面接官も理解しています。

その上で、それ以外の新しい「売り」を語ってもらいたいのです。

もちろん、経験・スキルがあればそれを、なければ入社後の活躍が期待できるようなポテンシャルを感じ取ってもらう方法でPRするしかありません。

たとえば、「確かにそうですね。入社意欲が強すぎるあまり、ついやる気だけが先行してしまいました。前職では、新商品発表会のプレゼンターを担当し、多くの聴衆相手でもひるまない度胸や話し方、パワポの資料作成ノウハウを身につけました。この経験は、未経験業務でも必ず役立つと思っています」というように、応募企業で活用できそうな経験・スキルを語るなどして、うまく切り返してください。

たとえばこういう人の場合

24歳女性、大卒。新卒入社した会社で勤務中。今回は2社目の転職で、異業種・異職種への応募。

NG!
実績がまだありませんが、やる気だけは誰にも負けないくらいあります。

↑ここは「やる気」一本で押さないで、違うPRを持ってきましょう。

OK!
社会人経験も浅く、また未経験への応募ですので、売りとなる経験やスキルがまだありません。そのため「やる気」を全面的にアピールする結果になってしまい、大変失礼いたしました。
ご指摘の通り、プロとして働く以上、やる気があって当たり前だと思っております。
ただ、私はやる気だけの人間ではありません。
たとえば、幼少から武道でメンタルを鍛えました。厳しい稽古を乗り越えた数々の経験を思い出せば、つらいことがあっても全然平気です。
断られてナンボの新規開拓営業は精神的につらいと聞きますが、この強みを武器に、全力で取り組みます。

↑指摘を受け、自分の言動を反省しつつも、「やる気」以外のPRについてエピソードを交えてうまく訴求できています。

高い実績を残して待遇も良いのに、なぜ辞めるのですか?

【面接官が知りたいのはココ】
退職に関して不審な点はないだろうね?
前向きで先を見据えた退職理由なら、ぜひ聞かせてほしい

このご時世、成果を出せる力と環境があって、かつ好待遇なら、普通は退職しないはずなので、今回の退職には「トラブルを起こした」といったマイナスの理由があるのか、それとも前向きな理由があるのか、そこをぜひ説明してほしいと、面接官は思っています。

面接を受ける女性
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「今の会社への不満が原因で辞めた」はNG

たとえば、「確かに現職では顧客に恵まれ、高い実績を残すことができました。続ける道もありましたが、元々志望していた○○の方向に進むべく退職を決意した次第です。

確かに転職には不安もありますし、周りからももったいないと言われていますが、この先○○で食べていくという決意は固く、1年前から準備してきましたので、決意は揺るぎません」と、現職の良さを認めた上で、前向きで先を見据えた自身の計画に基づく退職なんだということを語ってください。

なお、「いや、私の上げてきた実績からすると、とても厚遇とは言えないですよ。だからもっと評価してくれる~」といった不満に基づく退職理由は控えましょう。

たとえばこういう人の場合

29歳男性、大卒。新卒入社した会社で勤務中。今回は2社目の転職で、異業種・異職種への応募。

NG!
営業職として、今以上のキャリアアップを図るためです。

↑抽象的なので「何か不審な点を隠す意図があるのか?」と勘繰られてしまいます。

OK!
確かに、それなりの実績も上げてこれましたし、給与や休みも競合他社より多く、待遇も良いと思います。
転職活動をするほど、これを実感します。
しかし父と兄が一級建築士の仕事をしている関係で、前々から住宅に関わる仕事に就きたいという思いが強くありました。
異業種にチャレンジできるのは30歳までと言われていますから、今しかないと考え現職を辞めることにしました。
もともと安定志向があるわけでもなく、待遇の良さで進路を決める性格でもありません。念願の職業に就けるなら、条件はゼロからのスタートでもかまわないと思っています。

↑謙虚に前職の恵まれていた実情を語りつつ、自分のキャリアへの思いにシフトして退職に至る経緯を丁寧に説明できています。

あなたのその思いは転職しなくても、現職の社内異動で実現できますよね?

【面接官が知りたいのはココ】
「社内異動を試みたがダメだったので転職」はNG
当社の応募職種への熱い思いを聞かせてほしい

たとえば「営業から広報へ」というように、違う職種への転職を志望した場合に、こうした質問が出されます。

中谷充宏『20代~30代前半のための 転職「面接」受かる答え方』(秀和システム)
中谷充宏『20代~30代前半のための 転職「面接」受かる答え方』(秀和システム)

最大のポイントは、「社内異動を試みたが叶わなかったので、やむを得ず御社を志望」という流れは絶対にNGということ。単なるその職種志望ではなく「御社でその職種に就きたい」ということをPRしなければなりません。

だから額面通り受けて「そうなんですが、何度社内異動の希望を出しても叶わなかったのですよ」と、そのまま伝えたらダメなのはお分かりでしょう。それよりも、「私がやりたいのは、御社の○○職であって、○○職であればどこでもいいわけではありません。今、御社は経済発展著しいインドで事業を展開し、その中でも成長分野に特化した製品を次々と投入しています。その躍動感、ダイナミズムを感じられる中に身を置き、私も○○職として、御社とともに成長していきたいのです」というように、応募企業に焦点を置いて、熱い思いを語ってください。

たとえばこういう人の場合

30歳男性、大卒。新卒入社した会社に勤務中。今回は2社目の転職で、同業種・異職種への応募。

NG!
会社に聞いたことはないのですが、多分そういったのはできないと思います。

↑「現職でも希望職種に就ければ問題ない」と感じられるような回答は受け入れられません。

OK!
確かに現職でもジョブチャレンジ制度というのがあり、志望する職種に異動するチャンスはあります。
しかし、仮に購買部に社内異動できたとしても、今の購買・調達は外注任せで私が本当にやりたい国際調達に携われません。だからこの制度への応募は毎年、見送ってきました。
そのような中で、国際調達をメイン業務とする御社の求人を見つけ、応募させて頂いた次第です。
御社と競合となる同種製品を扱っていましたから、製品の特性や材質には一定の知識がありますし、必須となる語学力も磨いてきましたので、未経験の職種ではありますが、早い段階でご期待に応える自信があります。

↑現職では叶わない業務が応募企業にあること、そして扱う製品に造詣があることから、応募企業でこそ実力を発揮できることをうまくPRできています。