40代後半で初めて触れ、勉強の必要性を痛感

私は今、関東近郊の都市ガス会社さまにガスや電気を販売する「広域営業部」を統括しています。各社さまへ営業にお伺いすることも多く、お客さまの販売量や売り上げ、利益といった数字は必須情報です。ここを押さえておかないと、スムーズな会話やよい提案ができないので、自分なりに工夫しながら、事前に頭にたたき込むようにしています。

東京ガス 執行役員 広域営業部長 小西 雅子さん
東京ガス 執行役員 広域営業部長 小西 雅子さん

経営関連のビジネス数字に接するようになったのは40代後半から。入社後は20年ほど食の研究に従事し、家庭向けガス販売のPR業務を経て、関連会社を60社ほど束ねる人事総務部門に異動。ここで初めてビジネス数字を見ることになりました。その前も実験のデータ分析などで数字に触れてはいましたが、ビジネス数字はまったく違う世界。見たことのない数字ばかりで、新鮮さと同時に「私に読み解けるのか」と不安も感じ、勉強の必要性を痛感しました。

最初にしたのは各社の最低限覚えておくべき数字を書き出すこと。迅速かつ的確に対応するためには売り上げ規模などを頭に入れておくことが必須と思い、主要な数字の桁数を覚えたり、各社の一覧表をつくってノートに貼ったりしていました。書いて覚えるタイプの私にはこの方法が合っていたようです。これは営業部門にいる今も続けていて、お客さま先への訪問前には必ずノートを開き、数字を見返しています。

私の数字力の磨きかた

定量的にも定性的にも考えられる力を

ただ、結果として今は、お客さまとの会話の中で細かい数字を語ることはほとんどありません。私の役割は、お客さまと一緒に課題解決に向けたストーリーをつくり共有すること。数字はその展開を決めるための裏づけとして頭に入れておき、営業の場では目指すべき姿やそのための解決策を話すようにしています。

例えば、お客さまと一緒に競合他社に勝つためのストーリーを考えるとき。B to B to C営業と呼ばれるものですが、省エネ性の向上や低炭素化、レジリエンス向上、エネルギーサービスの導入など様々な付加価値メニューを駆使してエンドユーザーさまのご要望をかなえるストーリーを考えます。一方でそれらの事業性については各種数字を基に詳細に検討。何が実現可能で何が不可能か、様々なストーリーを想定してそれぞれ数字で判断しています。

「数字を知ると物事がシャープに見えて、判断や選択がしやすくなりますね」
「数字を知ると物事がシャープに見えて、判断や選択がしやすくなりますね」

私は営業になってから、物事を定量的に見る力の重要性を再認識したように思います。あまり数字が身近ではない業務でも「たくさん」のような抽象的な見方、つまり定性的な見方をしている物事を、数字を使って「何割」と定量的に表すと、ぐっとシャープに見えてくるのではないでしょうか。そうすれば自然と選択や判断の物差しが明確になり、語る内容もより具体的になる。その意味で、営業はもちろん、一見数字に関係ないような業務でも、数字で理解することはとても大切だと思います。

ただ、定量的な考え方ばかりしていると定性的な力は置き去りになりがちです。私の実感では、職位が上がるほど期待されるのは後者のほう。ですから、最初は定量的な考え方を、その後は意識的に定性的な力を磨くことをおすすめします。これはストーリーをつくる力であり、コミュニケーション力とも言えるもの。場数を踏んで、相手の心をつかむ工夫を続けることが大事ですね。

数字にまつわる愛用品

私も両方の力を大切にしています。計算や暗記だけでなく、数字を基にしたコミュニケーションで自分の価値を出していきたい。過去には、お客さまに求められるまま数字だけの提案をして叱られてしまったこともありました。慌てて再度チャンスをいただき大事に至りませんでしたが、数字だけでは心はつかめないと思い知らされた出来事でした。

営業という仕事の要は、数字の裏づけをもってストーリーをつくり上げること。これからもこの力を磨き続けていきたいと思います。