仕事に家事に育児に介護……と、現代の働く女性たちは忙しすぎます。プレジデントウーマンでは、働く女性の仕事と生活を“ラクにする”をテーマに、業務や家事の一部を外注するシェアサービスについて学ぶイベントを開催しました。内閣官房シェアリングエコノミー伝道師の蓑口恵美さんをはじめ、人気シェアリングサイト「ココナラ」と「タスカジ」の広報担当者とユーザーも登壇。「シェアエコ上級者」が教える驚きのアウトソース術とは?
※写真はイメージです(写真=iStock.com/sankai)

そもそもシェアリングエコノミーとは?

知っているようで知らないシェアリングエコノミー。まずはシェアリングエコノミーとは何かということから、蓑口さんのレクチャーはスタート。

「シェアリングエコノミーとは、スキルや場所を提供するホストと、そのサービスを受けるゲスト、つまり個人対個人が、インターネット上のプラットフォームで売買することを言います。スマホがあって、インターネットにつながれば、個人でも経済活動ができるようになります」

現在、シェアリングエコノミー協会に所属している企業は約300社。大きくは次の5つに分類されます。

(1)空間のシェア
ホームシェア、駐車場・会議室などを貸す。Airbnb(エアビーアンドビー)が代表的。
(2)物のシェア
メルカリに代表されるもの。ブランドバッグや服などをフリマやレンタルで貸す。
(3)移動のシェア
車やバイク、自転車などを貸す。自分で買わなくても必要なときに使えるサービス。
(4)お金のシェア
銀行から借りなくても、多くの人から小さなお金を借りて、事業が始められるしくみ。
(5)スキルのシェア
各人がスキルを多面的に提供。労働人口が減る中、最も期待されているサービス。

「国としても2020年の東京オリンピック開催に向けて、こういったシェアリングエコノミーを国家戦略の一つの価値と位置づけ、いろいろな省庁が後押ししています」

月1万円の予算でどれだけラクできるか

「日本の働き方を変えたい」と3年前に二つの会社で正社員として働くダブル正社員を経験した蓑口さん。当然ながら時間的余裕はなく、常に顔には吹き出物が……。「時間がほしい」という気持ちが心の底からわき上がったときに、シェアサービスの利用に踏み切りました。そんな蓑口さんが最初に決めたことは、予算だったとか。

10月23日に開催した「働く女性の仕事と生活をラクにするシェアリングの極意」は、50人以上の方が参加。大盛況でした。

「予算は月に1万円まで。これなら1、2回の飲み代でまかなえるかなと。月1万円でいろいろな困りごとを誰かにお願いしようとノートに書き出しました」

「料理めんどい」「名義変更どうしよう」「結婚式の準備どうしよう」……書き出した困りごとに対処できるシェアサービスを探し、実際にアクションを起こした蓑口さん。そのうち家事代行や書類作成代行、名義変更の事前リサーチについては大きな成果があったと言います。

「名義変更に関しては、結婚によってマイナンバーを変える、運転免許証を変える、パスポートを変える、それにひもづけてクレジットカード、銀行の口座と、自分の契約しているあらゆるサービスの住所と名義を変えなければいけないですよね。私自身、個人事業主登録をしていたこともあり、より複雑でどの順番でどこに行けばいいのかわからなかったんです」

確かに、名義変更は面倒くさい手続きの一つ。蓑口さんはこの手続きのどの部分をどうアウトソースしたのでしょうか。

「東京都のこの区に住んでいて、ここに住民票があって……という情報をお出しして、『結婚して名義変更したいのだけど、一日半の有休で全部変えられる方法をリストアップして、タスク表にして出してください』とお願いしたんです。そうするとマイナンバーから変えなさい、次は運転免許証です、運転免許証はこの日にここに行きなさい、持って行くものはこれだよと、同じ区に住んでいた方がリサーチしてタスク表を作ってくれたんです。費用は約3000円でした。そのタスク通りに行動すると、本当に1日半で終わってしまった。自分でやっていたら2カ月くらいかかっていたかもしれません」

講演後の懇親会でも体験を語る蓑口さん

一方、結婚式の準備依頼は失敗だったと言います。

「結婚式は人生で一回しかないので、どういうことをお願いすればいいのか、私自身がわかっていませんでした。そういう1回きりのもので、自分もゴールのわからないものはシェアでやらないほうがいい。伝えるのに時間がかかるだけで何も成果が得られませんでした。そういう意味でも予算を決めておいてよかったですね」

「女性ラクしなさい条例」ができたら

蓑口さんは最後に会場にむかって質問を投げかけました。

「月に1万円、必ずシェアサービスを何かお願いすることになったら何をお願いするでしょうか。日本で『女性ラクしなさい条例』ができて、明日から使わないといけないとしたら、何をしますか?」

会場では活発なディスカッションがあり、掃除洗濯から小鳥の世話をお願いしたいという意見まで多くのアイデアがでました。

「ココナラ」で日々の業務をアウトソースしてみる

蓑口さんのレクチャーのあとは、人気シェアサービスサイト「ココナラ」と「タスカジ」の広報担当者とユーザーが登場。参加者のみなさんから質問も飛び出し、会場は大いにわきました。まずは「ココナラ」広報の古川芙美さんからココナラのサービスについて説明がありました。

「ココナラは知識、スキル、経験といった、それぞれの“得意”を気軽に売り買いできるスキルマーケットです。まずは出品者がサービスを出品して、オンライン上でそれを買いたい人が買うという、いわゆるECサイト。やりとりは1対1で非公開、直接会わずにオンラインで完結するのが特徴です。働く女性が日々の業務の効率化を目的に買うなら、エクセルの作成やライティングなど。独立・起業したいときは、事業計画書や契約書の作成依頼はもちろん、自分専用の税理士さんや社会保険労務士さんも探せます」

自分のスキルを活かして副業も可能

一方、売るほうについては、実際にココナラで“翻訳”というスキルを売っている宮下りかさんが、登録のきっかけから話してくれました。

ココナラ広報の古川芙美さん(左)と、翻訳の仕事を出品している宮下りかさん(右)。

「本業は海外のタレントやコンテンツを日本に紹介するエージェント業です。私はバイリンガルでありながら、翻訳や通訳への苦手意識が強くて。でもそれを少しずつ実践する中で克服できれば、と思ったのが登録のきっかけです。ですからプロフィールには、私はプロではありません、翻訳会社に頼みにくい相談をお受けできます、と書いています。値段も今は日英翻訳が1000円ですが、最初は500円から始めました」

結果的に「この響きはネイティブが聞いて自然でしょうか」「英語の日記を添削してください」といった依頼も届くようになり、宮下さんだからこそできる英語のサービスを提供することになったそう。「自信がつき、苦手意識が消えるのを実感しています」と宮下さん。現在は1週間に2時間程度で毎月数万円の収入を得ているそうです。

自分にぴったりの家事代行を見つけるには?

次に登場したのは、家事代行を担うタスカジ広報マネージャーの門出万里子さんと実際にハウスキーパー(=タスカジさん)として働くakiさん。まずはタスカジの事業内容を門出さんから。

タスカジ広報の門出万里子さん(左)と、ハウスキーパー(タスカジさん)として働くakiさん(右)。

「タスカジは仕事をしたい個人と家事を頼みたい個人をつなぐプラットフォームです。他の家事代行サービスと大きく違う点は、自分に合いそうな人を自分で選べる点ですね。利用料は1時間1500円からと業界最安値水準。業務内容が掃除、整理収納、洗濯、買い物、料理、作り置き、ペットケア、チャイルドケアと幅広いのも特長です」

タスカジさんの得意分野は、人それぞれ。料理だけの人もいれば、料理と洗濯、あるいは家事全般をこなせる人もいる。akiさんの得意ジャンルは“料理”と“整理収納”だ。

「料理はもともと得意だったので、始めてからご好評いただいていたのですが、キッチンの使いにくさが際立つお宅がけっこうあって……。キッチンや冷蔵庫をちょっと使いやすくすると作業効率がぐんとアップします。そこから整理収納の仕事にもつながりました」

懇親会でも、家事シェア依頼のコツなど、直接聞くことができる機会が。

いまは週に2~3回働いているというakiさん。akiさんなりに工夫していることといえば、プラスαのサービス。

「たとえばリクエストが子ども向けのものだとしても、冷蔵庫にアルコールがあれば、ちょっとしたおつまみを作っておくと喜ばれますね」

ただし、マッチングサービスに相性はつきもの。大雑把なタイプにとっては、几帳面すぎるタスカジさんは合わないこともある。

「スポットなどで1回試していただきながら、自分に合うタスカジさんを見つけていただけたら。もちろん1回きりになってしまっても全く問題ありません」(門出さん)

シェアリングでの出会いが人生を豊かにする

「シェアサービスの先にこういった方たちとの出会いがあれば、みなさんの人生はきっと豊かにラクになり、やりたいことに時間を使えると信じています」と最後に締めくくった蓑口さん。

今回のイベントに参加した方からは、こんな声が……。

「書類代行やペットケアなどニッチなサービスが、こんなにたくさんあると思いませんでした。これなら自分に合うサービスがあるかもしれない。ぜひ使ってみたいです」(40代女性・会社員)
「今日の話を聞いて、自分も得意分野を活かして副業できそうだなと思いました。ハードルの低いところから始められるので、いつかやってみたいですね」(50代女性・団体職員)
「今の副業の仕事を見直す、よいきっかけになりました。いまは英語の家庭教師をしていますが、オンラインを使えばもっと効率よくできるかもしれない」(40代男性・自営業)

参加者の方それぞれが、シェアリングについて新しい情報を持ち帰ったイベント。今後、シェアリングの人気は、どんどん広がりそうです。