在宅勤務などの「リモートワーク」には、警戒心をもつ世代もいる。リモートでも全員の仕事を可視化するには、どんなITツールを使えばいいのだろうか。雑誌「プレジデントウーマン」(2017年6月号)では、悩める読者に対し、IT活用のプロがマンツーマンで指導した。おさえるべき4つのポイントとは――。

遠隔でも的確に状況を把握したい

海運会社で船の船隊整備に携わるチームに所属し、4月から課長代理になった甲山可奈子さん。

会社は今後、リモートワークを導入していく方針で、先月、試験的に在宅勤務を行ったのだそう。その中で見えてきた課題は「対面と変わらないコミュニケーションをすること、チームの進捗を把握してフォローすること」なのだとか。

「まず、デジタル化成功のコツは導入でつまずかないことです」と言うのは、日本でのリモートワークの先駆け、ソニックガーデンの創業者・倉貫義人さんだ。

「特に年配の方の場合はリモートワークへの恐怖心があります。まずはそれを取り除くため、目の前でビデオチャットをやってみせるなど、便利さを実感してもらうとよいでしょう。また、コミュニケーションは、雑談グループを設置することで、何気ない会話もしやすくなると思います」。チーム全体の業務の把握には「Trello」というサービスを推薦。

「これはタスクを記入したボードに付箋やメモを貼るアナログの管理をデジタル化したものなので、受け入れやすいはず」

教える人

ソニックガーデン 代表取締役社長 CEO 倉貫義人さん

自ら立ち上げた社内ベンチャーから、株式会社ソニックガーデンを創業。新しいワークスタイルを取り入れ、リモートワークを推進し、広くそのノウハウを伝えている。

 

相談する人

大手海運会社 甲山可奈子さん

海運会社にて、船を使った運搬、船の発注などに携わる。通常はデスクワークが多いが、今後、社内ではリモートワークを取り入れる方向で、トライアルを実施中。

 

お悩み2:中級
リモートワーク導入!
誰が何をやっているかお互いに確認したい!

【甲山】10人のチームで私と、上司が1人、同僚が2人、残り6人が後輩です。会社がリモートワークを試験的に取り入れ、私のチームでは先月からSkypeを導入しました。

【倉貫】リモートワークで大変なことはありますか。

【甲山】「リモートワーク=人さまに迷惑をかけるもの」という意識が根強い人もいて、根付くには時間を要するのでは、と感じています。

【倉貫】気持ちの問題が大きいのですね。「チャット=さぼっている」と思われてしまったりして。

【甲山】そうなんです。会議のコールをするタイミングがつかめなかったり、気軽なおしゃべりを難しく感じてしまって。

【倉貫】後輩が多いということは、それぞれの状態も把握しないといけないわけですね。

【甲山】はい! 情報共有を効率的にしたいのですが、気軽な雑談もしたいんです!

チャレンジ!
リモートでも全員の仕事を可視化する!

――セルフIT革命(1)―― デジタル付箋で簡単進捗管理
「Trello」で、部下の動きを把握しプロジェクトを管理

TODO、進行中の仕事、終わった仕事を、タスクボードの付箋を貼りかえる要領で管理。チームの現状が一目瞭然。

(1)「Trello」をチーム全員でスマホにインストール。
(2)アプリを立ち上げ、「To Do」リストを共有し、担当者を振り分けて色分け。
(3)取り掛かっている仕事は「Doing」に移動、終わったら「Done!」に。

タイムリーなフォローが可能に


――セルフIT革命(2)―― Skypeでも、普段通りの会話を
Skypeは、目の前でやってみせると感覚がつかみやすい

いきなり遠隔で使うのではなく、会議室に集まって、全員でビデオ会議を展開して、慣れるところから。

(1)Skypeのページを開き、使用しているデバイスを選択してダウンロード。
(2)アカウントを作成し、プロフィールを設定。
(3)通話音声テスト後、使用開始。

みんなで使えば怖くない! 慣れで全員が使用可に


――セルフIT革命(3)―― 雑談グループでコミュニケーション
リモートワークでも気軽に話せる場を

オフィスでみんなと働いている感覚で、お互い話しかけやすいように雑談グループを設置。気軽な会話ができる。

チャットの抵抗感が減った!


――セルフIT革命(4)―― デジタルオフィスを体験してみる
「Remotty」があれば、リアルと同じ感覚に

「Remotty(リモティ)」というチャットツールなら、WEBカメラで相手の状況がわかり、隣の席にいるような感覚に。

ITでのやりとりがより身近に

ボードの活用で問題点が解決!

甲山さんが早速着手したのは「Trello」でのTODOリストと進捗の管理。チーム内で業務進捗状況をシェアしたところ、劇的な変化が。

「これまで課題だった『誰が何をやっているのかわからない』『後輩への指示が場当たり的になってしまう』ということがなくなり、業務分担の隔たりも解消。滞っている業務に対してタイムリーなフォローが可能になりました」と甲山さん。

また、スマホで確認できるため、出張時にも後輩の業務進捗状況が把握できるようになった。

「本格的に会社がリモートワークを導入するまえに、コミュニケーションの問題についても1つずつ取り組んでいきたいと思います」

▼解決!
●チーム全体の進捗が見渡せるように
●グループチャットで気軽な会話が可能に

倉貫さんおすすめツール
プロジェクト管理ツール Trello
https://trello.com/
チーム内で現在誰が、どの案件に携わっているのか、進捗はどうかを共有できるアプリ。スマホで管理でき、コメント投稿も可能。