史上2番目、現職では最年少の市長として弱冠28歳で四條畷市長に就任した東修平さん。2017年1月に就任したばかりの彼が、年収1430万円の「副市長」を、エン・ジャパンの中途採用サイト「エン転職」等で大々的に募集。その発表会で、東さんは「副市長は女性に」と熱望する発言を行って話題になった。「女性副市長公募」の意図とは。
東 修平(あずま・しゅうへい)●四條畷(なわて)市長。1988年生まれ。大阪・四條畷市出身。外務省、野村総合研究所インドを経て、2017年1月の四條畷市長選挙で初当選。

――まず、四條畷市はどんな街でしょうか。

この街は面積が小さいにもかかわらず、人口が約5.6万人と多く、最高のコンパクトシティー。都心からも近く、駅近で、国道や高速道路のおかげで非常に利便性が高い。それなのに若い世代の人口、とりわけ15歳以下の減少が激しく、財政的にも非常に厳しいというのが現状です。

そんな背景があり、28歳で、政治経験もなく、親族に政治家がいるわけでもない自分が市長に当選しました。これは危機感が市民にもあったということ。成功している自治体なら失敗を恐れるかもしれないですが、私のとるべき行動は守りではない、攻め続けることだと認識しています。

――副市長というポジションを民間の転職サイトを使って公募するのは前代未聞です。これもその意識の表れでしょうか。

副市長については、いわばこの市の「経営者」ですから、優秀な人材を全国から集めたいと考え、一般公募にしました。市の公募ではなく、民間のエン・ジャパンと組んだのは、とにかくスピード感があったから。今回は企画から公募開始までたった1カ月。市役所でやっていたら3年はかかります(笑)。そして、エンさんにとっても新しい取り組みということでプラスに感じていただき、一円も税金を使いませんでした。

「上も下も女性」という環境をつくる

――「女性」にこだわったのはなぜですか。

この組織には多様化が必要だからです。組織全体が、「市長が言ったらやる」という空気で、活発な議論は皆無。また、市の大きな決定をする部長会の参加者は全員男性で、違った視点からの意見がまったく出てこない。

2017年4月の人事異動でたくさん女性を昇進させ、人事課長や企画課長も女性にしました。私はここで「このチームでみんなでやろう」と口を酸っぱくして言っていますが、オジサンたちはすぐ「お手並み拝見」状態になってしまう。でも、副市長が女性になれば、上にも下にも女性がいて、男性たちも変わらざるを得ないでしょう。

――副市長になる女性に対して具体的に求めることは。

市長は大きな方向性や最終判断を担いますが、地元を回ったり、省庁に予算を取りに行ったりする外の仕事にも多くの時間を割く必要があるため、副市長には市役所の実質的な経営を任せたい。ビジョンは一緒に考えますが、優秀な行政担当者たちと政策を進め、それを率いてもらいます。

それと同時に、働き方改革も担ってほしい。市役所は9時5時勤務といわれますがまったくそんなことはなく、結構ブラック。そのため、優秀な部長クラスの職員は「ひたすら働いて成果を出す」というのが成功体験になっていて、部下にもそれを強いがちです。ですので、多様な人材が働けるような職場にして、その人たちが生産性を上げていけるような新しい働き方を理解し、改革できるような人が着任してくれたらと。

この間面接した女性は、「私は結婚したかったけれどできなかった」と話していました。その女性なら、「その状況でこういう制度があれば働きながら結婚できた」と具体的に理由がわかるので、それを政策に反映できるはずです。あるいは、実際に子育てしながら働いてきた人なら、その経験を反映できる。今までの画一的な人材の「成功体験」とは違った視点を取り入れていきたい。

もちろん、「こうしたらいい」と思うところは女性職員にもたくさんあるはず。でも意思決定できるポジションではなかった。だからこそ副市長。これは市長選から公約していて、市民にも納得してもらっているし、議会や職員も了承しているので、あとはいかにそこに思いのある人が来て、変革を実現してくれるかだけなんです。

(右下写真)四條畷市の様子。中央部に飯盛山があり、東側が住宅地区、西側にけいはんなの研究都市地区がある。

――女性副市長の公募を決めたとき、内部の動揺はありましたか。

別のインタビューで女性の人事課長が「女性副市長が来たらハレーションが起きませんか」と質問されたのですが、彼女は「直前までインドで働いていた28歳が急に会社の社長になるほどのサプライズを超えることはない」と。何より私が市役所の“異物”(笑)

補助金に頼らず働く女性にやさしい街に

――どのような街づくりを目指していくのでしょうか。

働く女性にやさしいベッドタウンです。残念ながら、関西で働く女性やママさんにやさしい街を挙げるのは難しい。だからこそ、そんな街に価値があると。家を買うときの決定権は女性にあるといいますしね。

とはいえ財政力が地域では一番弱いので、「保育料無料」というような過当競争はやりません。負けますから。だからこそ、民間の力を借りて、どんどん子育て環境や教育環境を整えていく。今度、地元の中学校とシリコンバレーをつないで授業をするんですよ。民間と自治体で成功事例をつくるためにいろいろ試してもらう“パイロット(試験的)自治体”を目指そうと思っています。

「四條畷に住んでるなんていいね」といわれるようになり、地元に住んでいる人が誇りを持てるような街にするのが市長としての役割です。近隣では奈良・生駒市や大阪・箕面市のような街づくりを見習っていきたいと思います。

――あくまでも人口流入による税収増を目指すのですね。

はい。今、地方がどこも「インバウンドをやる」といっているのは、観光に関する施策をやれば半額くらい国から補助金が出るから。「うちはやらないのか」と私に言う人もいますが、やりません。現時点では観光で四條畷には人は呼べない。ないものはない(笑)。

――そのぶん税収を人材に投じるということですね。

それが一番コスパがいいんです。今度長期学生インターンも始めるんです。「市長直下で街づくりをしませんか」と。地元の有力者を説得に回るプロセスも経験してもらう(笑)。公募した副市長とマーケティング職、学生、それに特別参与を加えた7人の「外部部隊」をつくり、内部に電気ショックを与えられたらと思います。

こうした取り組みが成功していけば、近隣自治体がまねをし、その隣もまねて……ということをやっていくと、人口の奪い合いではなく、日本全体がより良い方向に動いていくと思うんです。新しいシステムを生み、日本が前に進んでいくことと、街が良くなっていく姿とが重なっていけばいいと思っています。