住宅ローン専門金融機関の国内最大手・ARUHIが、今年8月に働く女性たちのためにセミナーを開催。イー・ウーマン代表の佐々木かをりさん、ファイナンシャルプランナーの金子千春さんが登壇し、女性が幸せな人生を送るための知恵を伝えた。

HAMADA'S POLICY

日本一働きやすい会社を実現したい

女性の活躍や働き方の多様性が話題になっているが、働く女性たちが世の中で正しく遇されているとは言いがたい。アルヒの浜田宏社長は「そうした働く女性たちを応援したい」との思いで、今回のセミナー開催を決めた。

アルヒはまた、佐々木かをりさんが主催する「国際女性ビジネス会議」をゴールドパートナーとして支援。それも「他の女性ビジネスパーソンが何を考えているのか、社員に見聞を広めてほしい」との願いからだ。

「日本の社会はムラ意識が強く、滅私奉公をよしとする一部の『中年おじさん』が主流。すべての面で彼らに都合よくできています。一方、女性や転職者、外国人、自営業者などには、生きにくい社会なのです」

その浜田氏自身は外資系企業での経験が豊富。人と群れるのが性に合わず、「私自身、キャリアも含めて日本社会では“非主流派”。だから、女性の大変さが多少なりともわかります」。

アルヒは住宅ローン専業の会社。業務の中心となる審査は分厚い書類を扱い、緻密な事務作業をチームで協力して行う。女性に適した仕事ともいえるが、浜田氏が「日本一働きやすい会社」を目指した結果、こうした業務に秀でた人材が多く集まるようになった。

「そうした女性たちはアルヒの財産であり、エンジンです。理想はまだ道半ばですが、『早く帰れ、有休取れ、産休取れ』を実践して社員の有休消化率は100%を目指しています。社員の離職率も大幅に低下しました」

住宅ローンも外国人など、銀行では借りにくいといわれている人たちにも門戸を広げた。「金融機関がメインストリームにしていない人たちにも家を持ってほしい。それがアルヒのミッションだと思っています」

最近では、保険料の優遇、家電や家具等の購入の優待などの特典も加え、女性の住まい選びをサポートする独自の住宅ローンサービス「ARUHI With Woman」をスタートさせた。

アルヒはいま、住宅ローン専門金融機関では取扱額が日本一。数年後には、メガバンクも含めて住宅ローン取扱額日本一を目指す。「皆が最大の力でチームに貢献し、幸せに働けるなら、それは可能だと信じています」

意欲、能力、チームワークを満たす人が集える会社にしたい

浜田 宏●はまだ ひろし
アルヒ株式会社 代表取締役会長兼社長 CEO兼COO
1959年生まれ。早稲田大学卒業後、山下新日本汽船(現 商船三井)などを経て、サンダーバード国際経営大学院でMBA取得。デルコンピュータ(現 デル)の日本法人代表取締役社長・米国本社副社長、HOYA代表取締役等を歴任し、2015年より現職。

 

アルヒ株式会社(旧 SBIモーゲージ)
住宅ローン専門の金融機関。【フラット35】など全期間固定金利の住宅ローンに定評。購入者事例のデータベースに基づき家探しをサポートする「イエトヒト」、住宅購入後、数々の優待を提携企業から受けられる「メンバーズクラブ」などを展開、住生活プロデュース企業を目指す。

SEMINAR Part1 キャリア編

佐々木かをりさんが語る、幸せになるための心構え

人が輝き、幸せを感じるために

「働きやすい会社」には、働き手自身の努力も大切ですよね

佐々木かをり●ささき かをり
株式会社イー・ウーマン 代表取締役社長
上智大学卒業後、通訳、翻訳の(株)ユニカルインターナショナル設立。2000年、働く女性の声を発信する(株)イー・ウーマン(www.ewoman.jp)設立。現在両社の社長を務める。毎夏、1000人の働く女性たちが集まる「国際女性ビジネス会議」を主催。時間管理のための「アクションプランナー」手帳(www.actionplanner.jp)も考案。2児の母。

 

どうしたら幸せになれるのでしょうか。それはある意味で簡単なこと。自分が幸せを作り、感じる人間になればいい。多くの人とつながり、役立ち、貢献していけばよいのです。

このところダイバーシティという言葉を耳にしますが、これは単に女性の割合を増やすことではありません。人の数だけ視点があるから、相互にそれを認め合い、十人十色のアイデアが出る状態をつくること。その多様な視点により、会社にとっても、チームにとっても、いい結果が生まれることなのです。

だから「働きやすい会社」とは自分に都合のいい会社ということではありません。各自が最大の成果を出せる環境があり、各自が毎日貢献すること、その両方がそろうと、働きやすい、ということになるのです。

働くことの意味とは

そもそもwork という言葉には、機能する・役に立つという意味があります。ダイバーシティな社会・組織では、各自の存在意義が問われるということです。ただ出社すればいいのではなく、今日の自分の仕事ぶりが会社の売り上げをアップさせたか、職場の雰囲気を良くしたか、会社を1センチでも前進させたかと毎日意識することも大切でしょう。会社の役に立ってこそ、働いているということだからです。

セミナーは2016年8月31日に開かれた。会場は働く女性を中心に、多くの来場者があり、盛況だった。

役立つ人となるためのキーワードの一つが「I statement」。「私」を主語にして、自分の意見を伝える技術だと私は教えています。また、大切なのは、イエスから考える思考。何かを依頼されたり、提案されたら、まず「Yes」と考え、その方法を探るのです。新しい仕事にも挑戦しましょう。

「責任」、と考えると重いですが、英語のresponsibility と考えると、対応能力ですから、たとえ失敗したとしても、必ず次にその経験を活かせる。何かを引き受けるたびに対応力が高まります。

自らを“予約”すること

自分の力をいつも100%出すことも大切です。その方法の一つが、時間管理。約束の管理ではなく、自分が持つ時間全体を見える化し、自分の行動をマネジメントするということです。私は「アクションプランナー」という手帳で、自分を“予約”する、という時間管理術を教えています。会社や家庭のことなど、すべてを一冊に書くことで、自分の行動が一元的に見えてきます。この手帳は、いわば自分の人生脚本で、自分というタレントを自分というマネジャーが動かしていくという感覚です。人は自らがハッピーだと最大の生産性を発揮します。自分の力を発揮して、社会や組織に貢献する。輝きは自らが放つものであり、幸せは自らがつくり出すものなのです。

SASAKI&HAMADA TALK

誰もが公平に扱われ、夢が実現できる世の中へ

【浜田】「幸せは自分でなるもの」とのお話に感銘を受けました。最近、幸せ度が薄いと思っていたけれど、単に自分ができることをし足りないだけなんだって(笑)。

【佐々木】自分が周囲に貢献して、そこで、役立てば幸せになれる。会社で働くのも同じことです。アルヒさんは「日本一働きやすい会社」を目指しておいでですよね。

【浜田】ええ、まだ道半ばですが、今日の佐々木さんのお話をヒントにして、社内で話をしようと思っています。

【佐々木】「働きやすい会社」って同時に厳しい側面もありますよね。仕組みをつくるのは会社ですが、その仕組みの中で働き手が自ら輝き貢献する強い気持ちが必要です。

【浜田】まさに! そういう気概を持って、誰もが幸せに働ける会社にしたい。アルヒは【フラット35】という、ある部分公的な住宅ローンを扱っています。だからこそ、日本にお住まいの方に、可能なかぎりすばらしい家を持っていただきたい。お客さまも、すでに2割は女性なのですよ。

佐々木】例えばLGBTの人も、世の中に8~10%いるといわれています。こうした人たち向けに新たな市場を開拓できれば、ビジネスとしても経済合理性にかなっているんですよね。

【浜田】そうですね。それに、お客さまは日本人だけではありません。全体の10%は永住権を持つ外国人の方なのです。彼らは日本に来て、仕事をして地域に貢献している。女性も含めて、そうした正しく遇されていると言いがたい人たちは、われわれの仲間じゃないですか。

【佐々木】同感です。多様性が実現されて、誰もが公平に扱われ、働きたい人が働き、家を持ちたい人が家を持てる。そうなれば世の中も、すばらしいサイクルになっていきますよ。

SEMINAR Part2 マネー編

金子千春さんが語る、人生をイメージする大切さ

早めに計画を立て、不安を安心に変える

金子千春●かねこ ちはる
千春コンサルティング事務所代表
ファイナンシャルプランナー・宅地建物取引主任者
日本長期信用銀行(現 新生銀行)入社後、約10年間、個人コンサルティングに従事し、2004年に独立。保険の見直しや住宅ローン相談、資産運用等のコンサルティング、セミナー講師として活動中。

 

幸せになるために、自分で主体的に予定を決めて書き込むという時間管理術のお話がありました。これは長い目で見た人生も同じです。

幸せな人生のためには、まずライフステージごとに、どのようなものに、どれだけお金がかかるのか、とくに老後にどれだけ必要なのかを知り、準備することが大切です。

そのおおまかな流れはこうです。
(1)自分にはどのようなライフイベントが起こりそうかをイメージする
(2)それぞれの費用の概算を知る
(3)自分の実際の生活の収支を把握する
(4)ライフイベントを実現するための資金計画を立てる

まず、人生でいつ自分がこうしたい、こうなったらいいと思うことを、時系列的に表にしてみましょう。何歳で(20XX年)◯◯の資格を取る、結婚する、家や車を買うなどです。そのとき優先順位もつけておきましょう。

お金がかかる三大イベント

次に、それぞれのイベントに実際いくらかかるかを見ていきます。一般的には、「教育、家、老後」が人生でもっともお金がかかる三大イベントです。

あくまで統計資料による参考例ですが、教育費は子ども1人当たり、大学まですべて公立に通った場合でも、800万円ほどの資金がかかります。高校卒業までは、できるだけ家計のフロー収入から捻出するようにしましょう。

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人によって必要な金額と、お金が必要な時期はさまざま。それぞれの費用の概算を知り、資金計画を立てましょう。

家は、分譲マンション購入の場合、約3600万円(全国平均なので都市部ではもう少し高くなる)ほど。戸建ても含めて購入時までに、住宅価格の2割ほどを、頭金として準備しておくのが理想です。

家を買うべきか借りるべきかは、個人の判断ですが、買った場合と借りた場合の総住居費用は、実はそんなに変わりません。ただ、購入すれば、自分の資産として手元に残る点がポイントでしょう。

老後の備えこそが必要

老後についても、個人がどのような老後を送りたいかで変わってきます。平均的な生活でも毎月28万円弱を使っていると統計にあります。うち住居費は2万円弱ですが、実は住宅ローンを完済している人が多いので、この程度に収まっています。賃貸ならば、もっと多くの額が必要になるでしょう。

老後のために住宅費を減らそうとする人もいます。ある調査では、「老後の安心のため、住まいを持ちたいと思った」を、住宅を購入した理由として挙げているのです。

老後にどれくらいのお金を準備しておくのか、イメージすることがとても大切。そのための資産形成はさまざまです。住宅ローンも含めて、今後のお金の出入りを計算しましょう。もし、お金が足りないなら、優先順位を考え、イベントの内容を修正したり、予算を工夫して調整します。

三大イベントのなかで、とくにお金のかかるのは老後。公的年金がさらに引き下げられる可能性が高く、介護の費用についても、国からの補助が削減される方向なのです。

何事も早めの準備が大切です。今後の人生で収支がどうなるのか、貯蓄がどうなりそうかなどを定期的に見直して、できるかぎりの対策を立て、不安を安心に変えましょう。