認可・認可外の保育施設の見学では、施設・設備といった外見は何よりインパクトがあります。ほとんど施設・設備だけに目を奪われてしまう人もいるでしょう。でも、施設が新しければいい、清潔だったらいい、というわけでもないのです。

保育室環境の良し悪し

ぴっかぴかの何もないフローリングの床は、見るだけでも気持ちがいいものです。でも、それだけで「いい施設」と判断してしまうのは、早計。

子どもが1日過ごす場所としてどうでしょう。

<0・1歳児>
●安全・衛生も大事ですが、家具などで区切られたりして、家庭的な落ちつける空間になっていることも大切。
●子どもをベビーサークルやベビーベッドに入れたままの保育は×。ハイハイやつかまり立ち、よちよち歩きに適した環境で、安全な玩具を手の届くところに配置するなど、子どもの活動(遊び、探索活動)を促すように工夫しているのが、「子どもの発達によい」保育環境です。

<2歳以上児>
●体が活発に動く時期ですので、全員が部屋に入ったとき狭苦しくないかは、子どもにとっては重要です。
●年齢とともに遊びが豊かに複雑になっていく時期です。おままごとのコーナーがあったり、年齢に合った玩具が自由に使えるように置かれているかどうかもチェックポイントです。就学前は「遊び」が教育です。
●一人遊び系の知育玩具に偏っている保育施設もありますが、就学前は、子ども同士のかかわり遊びで、社会性を育んでいくのも重要な教育です。
●物語絵本の豊かさなども、その施設の知的水準が現れるところです。絵本コーナーをつくっている施設もあります。

そもそも中を見せてくれない施設はアウト

保育施設の見学はたいていどこでもさせてくれますが、「子どもが不安定になる」「衛生上問題がある」などの理由で保育室をまったく見せてくれない施設もあります。

しかし、わが子が1日過ごす場所を見ないで預けるなどということは、おかしなことです。衛生面の配慮から0歳児の部屋は立ち入れないという施設でも、ガラス越しに中が見れるようになっているのが普通です。

1秒たりとも見せられないという施設には見せたくない理由があるのかもしれません。保育室を見せてくれるかどうかは、やはり信頼性の点で大切だと考えます。

入園後、送迎のとき玄関で子どもと荷物を受け渡しする施設があり、保護者から「ラクでいい」と好評だったりするようですが、私には疑問です。送迎時に子どもが生活した環境を見ることは、いろいろな情報が得られて安心できますし、密室化しがちな保育室の「見える化」は大切だと思います。

園庭がないことをどう考えればいいのか

最近は、認可保育園にも園庭のないところがふえてきました。でも、園庭があったほうが、子どもが楽しいし、保育士さんもラクだし、何よりも教育的に豊かな保育を実現しやすいのは確かです。幼稚園の基準では、園庭は必ずなければならないことになっています。

特に3歳以上児は、なるべく園庭のある施設に通えるようであってほしいというのが、私の正直な気持ちです。整備する自治体には、園庭をできる限りつくらなくてはいけないという意識をもってほしいと思います。

でも、待機児童問題が深刻な都心部などには、実際それが難しくなっている地域があります。また、「うちの園は園庭がなくてもとてもいい保育をしているので、満足しています」という保護者の声もあります。

園庭も、保育の質の一部でしかなく、それだけで保育を評価できないのは言うまでもありません。では、園庭がないというデメリットはどのように挽回できるのでしょう。

戸外遊びを保障する

求められているのは、子どもの戸外遊びです。心身の土台をつくる乳幼児期だけに、戸外遊びは、次のような意味から重要です。

(1)思いっきり体を動かし、運動神経の基礎をつくる。
→運動を繰り返すことで筋肉の動きを脳が学習していきます。子どもは自然な遊びの中でこそ、一番活発に体を動かします。
(2)自然にふれて五感を育む。
→この時期に1日の大半を過ごす場所は、心の原風景になります。
(3)自然にふれて探究心や創造性を育む。
→自然は不思議に満ち、変化に富んだ教材です。土や砂などを素材に、固い玩具ではできない遊びを楽しむことも、子どものさまざまな力を引き出します。

戸外遊びが保障されているかどうかは、見学のときに次のようなことを確認します。園庭がない場合は、園外保育つまり「お散歩」の質が見どころになります。

・お散歩の頻度(園庭がない施設の場合、晴れていれば、ほぼ毎日出かけるくらいがよい)
・お散歩場所の状況(安全に遊べそうか、樹木や土などの自然環境があるか、お散歩に同行してみるとわかる)
・お散歩の体制(引率者は十分か、通る道は安全か、これもお散歩に同行してみるとわかる)
・園庭がある施設の場合の園庭の活用度(砂場や遊具の使いこまれ方などを見る、園庭でどんな遊びをしているか聞いてみるとよい)

調理室は適正規模?

幼稚園型の認定こども園などでは、調理室がなく、外部の給食業者を使っている場合もあるでしょう。

でも、施設内に調理室があれば、離乳食やアレルギー食を一人一人に合わせて微調整できたり、園内で栽培した野菜を調理したり、クッキング保育をしたり、調理室を活用した行事ができたり、食育が豊かになります。

60人以上の定員の保育施設なのに、家庭のキッチンを少し大きくした程度の設備しかない施設も見かけますが、そうなると、アレルギー対応が十分にできなかったり、素材からの調理が制約されたりということがあるようです。

いざというときの安全性は?

●非常時の避難路は確保されているか、通路に物が置かれていて実際には使えないなどということがないか。
●保育室の高い位置に物が積まれていて、地震のときに子どもの上に物が落ちてくるような状態になっていないか。

関連して、自然災害のときに予定されている対応も聞いておきましょう。

子どもの目線で見てみよう

見学では、子どもがそこで1日を過ごすということを念頭に置いて眺めてみてください。腰を落としてみれば、子どもの目線で何が見えるかがわかります。

単調な壁にぐるっと囲まれている環境と、窓の外に緑や遊んでいる大きい子どもたちが見えたり、玩具や絵本が置いてある棚が見えたりする環境では、子どもの気持ちもずいぶん違うでしょう。

待機児童が多い中、保育施設を選べない地域も多いのが現状ですが、希望順位を決めるときには、ここに挙げたことがなるべく多く合致する施設、子どもの気持ちになって納得できる施設を選んでいただきたいと思います。

保育園を考える親の会代表 普光院亜紀
1956年、兵庫県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。出版社勤務を経てフリーランスライターに。93年より「保育園を考える親の会」代表(http://www.eqg.org/oyanokai/)。出版社勤務当時は自身も2人の子どもを保育園などに預けて働く。現在は、国や自治体の保育関係の委員、大学講師も務める。著書に『共働き子育て入門』『共働き子育てを成功させる5つの鉄則』(ともに集英社)、保育園を考える親の会編で『働くママ&パパの子育て110の知恵』(医学通信社)、『はじめての保育園』(主婦と生活社)、『「小1のカベ」に勝つ』(実務教育出版)ほか多数。