一般的には、転職を繰り返すことをタブー視する向きもあるが、ここで紹介する4人の女性は、数回の転職により仕事を見つめ直し、自分の道を見つけキャリアアップしている人たち。転職で人生が好転した女性たちの生き方をレポートする。

CASE.1:ゼロから伸びていく会社で働けるチャンスを生かしたい。情熱ある経営者を支えるのが使命
●村上美里さん(29歳)

ロボットベンチャー企業「フラワー・ロボティクス」で広報を一手に担う村上さん。

村上美里さん

新卒で入ったのは大手新聞社系のリサーチ会社だったが2年で退社。転職先の携帯サイトの会社では、革新的な経営者の直下で働くことにおもしろさを感じた。やがて1000人規模の会社に働きにくさを感じ、小規模なベンチャーキャピタルに転職。起業をサポートする仕事で「情熱をもった人を助けたい」という自身のビジョンにぴったりだった。数年で今の会社から声がかかり3回目の転職を果たす。ロボットデザイナーでもある代表はユニークで仕事への情熱は桁外れだが、ビジネスとしてはまだまだ課題山積。代表を支えるスタンスで広報を任され、東奔西走の毎日だ。

「どうなるか未知数の会社」と語る村上さんは楽しそうだ。「転職を重ねて、自分が何者なのかわかった気がします。私は経験が乏しくても『できます』と言ってしまう派で」。変化を恐れず挑戦することで、人生は良い方向に進んできたという。「良いものが人に知られないのは寂しい。認知を広め、価値を生み出す仕事に魅力を感じています」。今後も広報やプロモーションの分野で大いに活躍しそう。

CASE.2:「いつもすごくラッキーなんです」。必要な時に必要な人に出会える強運を100%無駄にせず前進
●小林葉子さん(44歳/仮名)

編集者から税理士にキャリアチェンジを果たした小林さんは、サーフィンが趣味のアウトドア派。

小林葉子さん(仮名)

短大卒業後、OLを経て派遣会社に登録して働いていたが、偶然カフェで知り合ったイギリス人にスカウトされて編集の仕事をすることになった。その後業界で名の知れた編集者の下、メディアの仕事をこなす。次に転職した編集プロダクションは医療関係の仕事。意外と時間があったので、資格を取ろうと選んだのが税理士。5科目をいつ取得してもよく、一度取得した科目は一生キープできるので、通信教育で地道にやれば取れるだろうと思ったのが理由だそうだ。軽い気持ちで選んだ道だが、生来の努力家で、懸命に勉強に励み、税理士事務所に転職もして必要な実務を経験しつつ、足掛け6年で資格を取得した。今は自宅近くにある税理士事務所で働く税理士さんだ。

「これまでの仕事はひとつも無駄ではありません。編集者の事情もわかるし、医療関係の仕事をしていたからその分野のニーズにも対応できる。税理士は転職経験があるほうが仕事に幅が出るよう」。いつも誰かが助けてくれるから……そう微笑む人柄も、良い縁や運を引き寄せているよう。

CASE.3:乗っかってから考えるタイプ。母になり、企業に勤めるだけではないいろいろな道が見えてきた
●渡辺恭代さん(44歳)

農学部卒のリケジョ。最初は建材関係の専門商社に入社。商社勤務になったので経営を学ぼうと思い大学院に通った。

渡辺恭代さん

3年後にコンサルティング会社に転職、人材教育部門で人事関係の仕事を始める。その後システム関係の仕事に進み、組織開発の初歩を経験。のちに人事業務に特化した大手コンサルティング会社に転職。人事制度の設計などに従事する。やりがいはあったが13時間労働もざらで超ハードワーク。子育てとの両立は不可能と、妊娠を機に退職。そこからきっかり4年間は専業主婦。2人の子どもの世話をしつつ、社労士の資格を取得する。

その後前職の上司に誘われ個人経営のコンサルティング会社に入社し、人事制度設計や組織開発などを担当。数年後ハイスキルママのための人材エージェント「Waris」に登録。現職の企業に人事スタッフとして紹介され、契約社員で週4日5時間労働という時短で仕事を続けている。実は、地元の学童保育業務を請け負うNPOを運営していて、時短は社会活動と両立するための条件だった。子育てが一段落する5年後に向け、企業人事に軸足を置くキャリアに戻るか、地方自治の仕事に挑戦もありか、と模索中。

CASE.4:それぞれの職場に感謝しつつ、よりやりがいのある働き方を求めて
●福士恵子さん(43歳/仮名)

現在、インテリアデザイナーとして大手建設会社で派遣社員として働く福士さん。

福士恵子さん(仮名)

転職は4回目。新卒で入社したのは大手ハウスメーカー。ここで出会った先輩は今でも見守ってくれているメンターだそう。もっとデザインを学びたいと退職し、海外へ留学。3年間の海外生活中は、現地の建築プロジェクトにも参加。給料は家賃程度と超低賃金でも充足感にあふれていたが、貯金が底をつき帰国。正社員での就職先を探しつつも派遣会社に登録。紹介された都市計画分野の会社でデザインに携わった。仕事の新鮮さは感じていたものの、派遣では「どんなにがんばっても成果がない」と、転職。大手不動産系インテリア会社に契約社員で入社。2年後にさらに転職し、中堅の建設会社に正社員として再就職を果たす。が、ここでは人間関係に悩まされ、7年でやむなく退社。半年の充電期間を経て、現在の職場に派遣で就職。

「どの職場でも仕事にはすごくやりがいを感じました。転職ごとにステップアップも実感。ただ、やはり派遣と正社員ではあらゆる面で違う。再度、正社員として総合的に仕事を回したい」と、正社員への道に意欲を燃やしている。