銀行預金はマイナス金利にはならない、と思う

日銀がマイナス金利政策をスタートさせました。

日銀は、私たちが利用している都市銀行など(市中銀行)にとっての銀行。都市銀行などが日銀に預ける預金(当座預金)の一部が、マイナス0.1%になったのです。マイナスということは……、預けたお金に利息が付くのではなく、逆に手数料を払うことになります。

「私たちの預金もマイナス金利になってしまうのか」が気になるところですが、明確な答えは出ていません。

銀行は一般顧客の預金にマイナス金利を適用することに否定的といわれていますが、法律的にはマイナス金利の適用を禁止するようなものはないそう。とはいえ、マイナス金利政策を導入している欧州では、口座維持手数料をという名目で手数料をとっている銀行もあり、日本の大手銀行の中にも、大口顧客を対象に口座維持手数料の徴収を検討しているところもあるようですが、検討や実施には時間がかかり、すぐに実施、ということは考えにくいでしょう。

個人向け国債なら0.05%は確保

マイナス金利や口座維持手数料などが適用されなければ、預金が元本割れする心配はありませんが、だからといって安心、とはいえません。メガバンクでは預金金利が次々と引き下げられ、普通預金は0.001%~0.002%、1年定期は0.025%程度という水準です。

一部の銀行ではこれより高い金利を設定している例もありますが、それでも、マイナス金利政策のもと、預金でお金を増やすのは難しいといえます。

安全重視で、少しでも有利に増やしたいなら、「個人向け国債変動10年」が候補になります。2016年2月募集分は0.05%と、メガバンクの1年定期の2倍。そんなものか~と思うかもしれませんが、「個人向け国債変動10年」には利率の最低保証があり、0.05%より下がることはありません。つまり、もしもマイナス金利政策が続いても、0.05%は確保できる、ということです。

個人向け国債の「3年固定」や「5年固定」も0.05%が保証されていますが、金利が低い時期に固定金利型を選ぶと、世の中の金利が上がってもその恩恵を受けることができませんから、変動金利型の商品を選ぶのがセオリーです。

債券には利払いや償還(元本の払い戻し)が滞るリスクがありますが、国債は事実上、国が保証しており、安全性が高いといえます。毎月発行されており、銀行や証券会社などで1万円から購入可能です。

株式の配当を狙ってみる

老後のために増やしたいお金や、使う時期が決まっていないお金など、リスクをとれるお金については、株式の配当利回りを狙う、という選択肢もあります。

株式を買うと、年に1~2回、企業から配当金が支払われます。

配当金は企業が得た利益を株主に還元するもの。業績がよければ配当金が増える要因になりますが、もうひとつ、配当金の多寡を左右するのが、企業による株主重視の姿勢です。株主を重視する姿勢を強めるとより多くが配当金として支払われることになりますが、ここ数年、外国人投資家からの圧力も影響して、配当金を増やす企業が増えています。

もうひとつ、ポイントになるのが、株価です。

配当は株主投資の大きな魅力であり、値上がりしたところで売って売却益を得るというより、配当目的で投資する人も少なくありません。

配当目的で投資する場合、投資家は「配当利回り」をチェックします。

配当利回りとは、投資した金額に対して何%の配当が得られるかを表すもの。

●配当金額(年間)÷株価×100

……で求められます。

東証1部に上場している企業の平均は、1.9%(2016年2月19日現在)です。

配当利回りは、株価によって左右されます。

たとえば三井物産。1株あたりの配当金は64円です。

2カ月前の11月19日、同社の株価は1560 円で、上の計算式にあてはめると配当利回りは4.11%でした。これでも配当利回りとしてはかなり高い水準ですが、2月19日の株価1315円で計算すると、配当利回りは4.87%に上昇します。

株価が下がったために、配当利回りが上がったというわけです。

業績がいいのに株価が下がっているお宝企業を探そう

どの企業がいくら配当しているのか、配当利回りはどれくらいなのかは、「Yahoo!ファイナンス」や証券会社のホームページなどで確認できます。配当利回りは、最新の株価と、企業が発表している配当金の予想をベースに計算されているのが一般的で、株価の動きによって刻々と変わっていきます。

「Yahoo!ファイナンス」などでは配当利回りのランキングを公表していますから、参考にするといいでしょう。

業績がよければ配当金額が増える「増配」もあり得ますが、悪化すれば配当金額が下がる「減配」も考えられます。また、株式には値動きがあり、値下がりする可能性や、損が膨らむ危険性もあります。

配当は出たけれど株価が下がる一方、というのでは、意味がありませんから、投資する際には、業績が順調かどうか、しっかりチェックしてください。

先進各国が大規模な金融緩和を続けてきて世の中にはマネーがあり余っているため、企業の業績とは関係なく、株価が上がったり、下がったりする傾向が強くなっています。すべての企業ではありませんが、業績好調な企業もあり、業績がよければ配当金は出せる、でも株価は下がっているから配当利回りが高い、という現象が起きるのです。

「有望だと思っている企業があるけれど、株価が高くて手が出なかった」というケースなどは、この機会に株価や配当利回りをチェックしてみるとよさそう。身近なところから、業績好調な企業を探してみましょう。

フリーライター 高橋晴美(たかはし・はるみ)
1989年よりライターとして活動。資産形成、投資信託、住宅ローン、保険、経済学などが主な執筆テーマ。