Bさんの悩み

結婚して約10年。共働きで夫婦2人の生活を楽しんできた。妻も35歳になり、子どもがほしいと思い始めたBさん。現在は通勤に便利な場所で賃貸アパート暮らしだが、子どもが生まれたら家の購入も考えている。

家計簿はつけていても、毎月の収支を合わせることで手一杯だ。年収は夫婦合わせて800万円だが、仕事帰りに惣菜を買う、夜も外食が多いなど共働きゆえの出費も多く、生活費をボーナスから補填する月もある。

夫婦共通の趣味である観劇と海外旅行に惜しみなくお金を使ってきたためか貯蓄が180万円しかなく、もう少し貯めておくべきだったと反省している。

子どもができたら妻は仕事を辞めたいと思っているが、そうなったとき夫の収入だけでやっていけるだろうか。

家計再生コンサルタント 横山さんのアドバイス

DINKS家庭にありがちなパターンだ。夫婦合わせて年収は800万円と少なくない。にもかかわらず貯蓄が180万円というのはいかにもさびしい。

夫婦共働きの場合、互いのお金の使い道はノーチェックとなりがちだ。それが浪費のもととなり、フタを開けたら夫婦ともに貯蓄がないというケースが多いが、Bさんの場合は理想的な夫婦同一会計である。

にもかかわらずこうなった原因は、「困らない」からだろう。生活を楽しんでも赤字にならないため、危機感の欠如から使いすぎてしまう。仕事のストレス解消のため、休日にパーッと使ってしまうのもDINKS家庭の特徴である。「稼いでいるからこその落とし穴」だ。

家計を立て直すには、まず毎月使っているお金についてざっくり「消費」「浪費」「投資」の3つに分けることから始めよう。

「食費」は本来生活に必要な「消費」にあたるが、「必要以上の贅沢」については「浪費」となる。Bさんの場合も「食費」が「消費」+「浪費」になっている。

2人とも多忙のため、ランチも夜も外食が多い。これは体にも家計にもよくない。毎日弁当を持っていけとは言わないが、夕食はなるべく自炊にして栄養バランスを見直すとともに食費をカットしていこう。

次に気になるのが「娯楽費」。観劇は「投資」ともいえるが、毎週のように舞台鑑賞に出かけるのは「投資」ではなく「浪費」だ。Bさんは観劇代の上限を月2万円と決め、回数を減らした。

2人で通っていたジムも退会して公共施設に通うことで、教育費を2万円から6800円にダウン。ほかに通信費、被服費など各項目を少しずつ減らして月1万円だった預貯金を約12万円に増やすことに成功した。

FPの仕事をしていると「貯蓄はどれくらいあればいいか?」とよく聞かれる。私は「とりあえず年収の半分を目標に」とアドバイスしている。それがクリアできれば、マイホームの取得や投資など次のステップに進めるからだ。

だがBさんはまだこの最初のステップがクリアできていない。Bさんは「子どもが生まれたら夫1人の収入でやっていきたい」というが、マイホームを持ちたいなら、妻が仕事を辞めるのは厳しい。

マイホームのための費用、子どもの教育費、老後費用は計画的に準備する必要がある。Bさんの場合、35歳をすぎてからこれらすべてを準備しなければならず、妻が仕事を辞めるのは大きなリスクだ。

現状の夫婦共働きなら月々12万円以上が貯蓄できるが、妻が仕事を辞めるとそれができなくなるばかりか、ボーナスで生活費を補填する必要が出てくる。とりあえずマイホームは後回しにして子育てをしながら貯蓄額を増やすことを考えよう。

同時にBさんは、老後に向け12万円のうち1万円ずつ投資信託(ETFや外貨建てMMFなど)で「積み立て」をスタートさせた。超低金利下のいま、預貯金でお金は増えない。毎月1万円を投資信託で30年間投資し続け、もし3%で運用できれば約590万円になる。しかし運用しなければ360万円だ。この差は大きい。

30代は、時間を味方にできるのが強みだ。幸いBさんは投資に興味があり学ぶ意欲も強い。老後までの25年という時間を活用し、情報収集のみで終わらず運用することでお金を増やしてほしい。ハイリスクな商品に手を出すことはお勧めしないが、ミドルリスクくらいまでのものを狙えば、たとえ失敗してもやり直しがきく。

老後資金の運用は、50代をすぎると失敗が許されないため勧めないが、まだ30代のBさんなら、チャレンジしてもいいのではないだろうか。

世代別「老後破滅」ウイルス&処方箋

●ガラパゴス症候群

【症状】それなりに収入があるので夫婦2人で趣味を楽しみ、年に1度くらいは海外旅行にも出かけている。節約や副業もいま話題になっているようだが、自分たちには関係ない世界の話だというささやきにかき消されて耳に入らない。「これまでどおりの生活でも将来は何とかなるさ」と変化を拒む。

【処方箋】無目的に趣味を楽しんでいると、その先には貧困が待っていることを忘れずに。子育てや住宅購入といったイベントはすぐそこにある。10年、20年といった長い目で人生を考えて、貯蓄を視野に入れた金銭感覚を身につければ病気の慢性化も防げる。

●「プチ貴族」幻覚症

【症状】使い道を気にせずお金を使う。本人に自覚症状が表れないため、初期段階での発見が難しい。特権階級意識を起こす菌は無意識のうちに増殖し、外食、趣味、旅行といった各項目に転移する。

【処方箋】外食は高い店でなくても回数が増えればそれなりの金額に。クリーニングなども1回の支出は小さいが毎回となると高額になる。週末にまとめて料理するなど自炊の頻度を増やそう。地道な努力によって幻覚症状は消えていく。

家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー
横山光昭

1971年生まれ。FPとして司法書士事務所に勤務した後、2001年に独立。5300人以上の家計を再生した実績を持つ。