経済が混乱する中、難しい決断に直面するリーダーが増えている。正しい答えに向かう道を見つけることはできなくても、そこに横たわる危険を避ける方法はいくつかあるのだ。

どんな危険が潜んでいるかを探り、避けていく

関係者に重大な影響を及ぼす決定を下さねばならない状況に直面したら、きわめて決断力のあるマネジャーでさえ絶望的な気分になる。われわれは日々、あまり深く考えずに決定を下しがちだが、キャリアを左右するような問題の場合はじっくり考える必要がある。一つのアプローチが常に有効なわけではないが、確実に正しい結論に到達するための重要な要素が存在することは確かである。

プレッシャーにどう対応するかは人によって違う。ブライアント大学の経営学教授、マイケル・ロベルトは、「意思決定に関するあなたの知らないこと」と題した2001年の「ハーバード・ビジネス・レビュー」の論文で、「(意思決定者は)往々にして急いで結論を出しすぎるか、逆にいつまでも迷って決定が遅くなりすぎる」と述べている。

決断の頃合いを見つけるのは難しいと、ダートマス大学タック・スクール・オブ・ビジネスの経営学教授で、『Why Good Leaders Make Bad Decisions』の共著者、シドニー・フィンケルシュタインも言う。「及ぼす影響が大きければ、それだけ時間をかける必要がある。どれだけ時間をかけるかは、事の重大さによる」。

あなたが近道をとりたいと思おうと、さまざまな選択肢をじっくり検討したいと思おうと、一番大切なのは、どんな危険が生じる可能性があるかを認識し、それを避ける方法を知ることだ。

なぜ一人で決断してはいけないか

重大な決定は一人で行ってはならない。他の人々に相談することで、異なる意見を知ることができ、結果、より多くの情報を基に決定を下すことができ、決定の影響を受ける人々の支持を勝ち取れる公算が高くなる。

だがその際、リスクも認識する必要がある。「大勢を参加させたら、ほぼ確実に小さな集団が主導権を握って決定し、残りの多くの人の意見がほとんど反映されないおそれがある」と、フィンケルシュタインは言う。

また、グループの戦略的方向性を変える、新しいマネジャーを採用するというような重要な問題については、多くの意見を聞く必要があるが、最終的には一人の人間が責任を負う必要がある。最終的には「リーダーが決めなくてはいけない」と、フィンケルシュタインは言う。

最初の直感は、ときに正しいこともあるが、おそらく論理的思考に基づいてはいないだろう。自分の最初の反応を疑ってかかり、もっとデータを集めた時点でそれを吟味することが大切だ。また、自分の考えの論拠を必ず他の人々に説明しよう。

「直感で決めることのリスクの一つは、こちらの思考プロセスを人々が理解できないことだ」と、ロベルトは「ハーバード・マネジメンター」の意思決定に関する項で述べている。

「大規模な秩序だった分析を行う場合は、人々はそのプロセスを追っていけるが、直感の場合は違う。直感は稲妻のようなものだ。リーダーがどのような経緯でその結論に達したのか、人々には理解できない」

フィンケルシュタインが指摘しているもう一つの落とし穴は「予断」である。意思決定プロセスの早い段階で初期情報に基づいて意見を固め、後になってわかったことがあってもその意見に固執することだ。

「このタイプは自分の見方を裏づけるデータや実例は挙げるが、それと矛盾する情報は無視する」と、彼は言う。こういったときは要注意で、別の見方があるのではと自問する必要がある。自分の意見に自分で反論をぶつけ、当初の想定を批判的な目で再検討するか、信頼できる同僚にその役目をやってもらおう。

多くの人が、現在の課題を過去の経験と関連づけて重大な決定を下す。これは役に立つこともあるが欠点もある。経験が現在の課題と関係がなくても、人々は過去に頼る傾向があると、フィンケルシュタインは言い、ロベルトも同じ指摘をする。

「問題は、2つの状況の類似点だけに注目して、相違点は概して無視することだ。だが、往々にして相違点こそが問題のあるところなのだ」。過去の経験はデータの源泉としては役立つが、それらの経験が現在の問題にどれくらい関係があり、役に立つかをよく考えよう。

必要に応じて修正する勇気を

「われわれはみな、偏った見方をする状況に陥る」と、フィンケルシュタインは言う。この手の偏りは、自分が愛着を持っているもの(人、場所、部署など)をひいき目に見るという形をとることもあれば、自分個人の利益を全体の利益より優先するという形をとることもある。

「自己利益がわれわれの考えに影響を及ぼすことは広く知られているが、私が調査で発見したのは、自己利益に影響された判断の多くが意識下の産物であることだ」と、フィンケルシュタインは言う。「われわれは自分が自己利益に影響されていることに気づいてさえいない」。

リーダーは実行しやすい案や自分が部下から最もよく思われる案に傾くおそれがあるが、それはもっともな判断理由ではない。自分の偏った見方を認識し、それを脇に置いて、最善の解決策に到達することに集中しよう。

これらの課題をクリアした後でも、決定は完璧なものにはならないだろう。解決策を推し進める前に問題を完全に把握できることは滅多にないからだ。が、それはお手上げという意味ではなく、状況をよく観察し、必要に応じて調整する必要があるということだ。「数日後、1週間後、もしくは1カ月後に、決定を見直し、現在の必要性とのずれがないか確認しよう」と、フィンケルシュタインは言う。

顧客に影響を及ぼさずにコスト削減に成功

ケーススタディとして一例を挙げよう。コリーン・オキーフは、上級副社長兼協働ソリューション・グローバルサービス担当ゼネラルマネジャーとしてノベルに入社したとき、きわめて難しい決定を下さねばならない状況に直面した。2009年には多くの企業が同じ状況にあったが、米国マサチューセッツ州ウォルサムに本社を置く、このグローバルなITインフラソフトウエア会社も大幅な予算削減を行おうとしていた。コリーンの使命は、顧客に影響を及ぼさずにコストを削減することだった。入社間もないときだったので、彼女は責任は自分にあるものの、一人で決定するわけにはいかないとよくわかっていた。

彼女はチームリーダーたちに頼んで、仕事のことを一番よく知っていて、自分の利益を脇に置いて建設的な提案ができる人々を推挙してもらった。「メンバーは、自身や仲間の仕事に影響を及ぼす提言をすることになるのをわかっていた」と、彼女は語る。彼女は最初にこの点を率直に伝え、未来は誰にとっても不確かなのだから、できるだけ保身に走らないようにしてほしいと、全員に指示した。

この指示を受けて、チームは3つの選択肢を作成し、それぞれについて、リスクと実現される削減額、そして優れた顧客サービスという目標をどのように達成し続けられるかを分析した。彼らはこれらの選択肢をコリーンに示し、彼女が最終決定を下しやすいよう、そのうちの一つを推奨した。その後、彼女は経営陣に、この案を3段階に分けて実行すれば、どんなリスクも軽減できると請け合った。おかげでチームは決定を途中で見直し、それぞれの段階で必要な変更を加えることができた。

メンバーは自分の利益に関係なく、最善の策を提案することに成功した。チームはコストを大幅に削減しながらも顧客サービスに対する積極的な取り組みを維持することに成功したのである。「われわれは顧客の満足度で成功を測定しているが、結果は間違いなくホームランだった」と、彼女は語っている。