Q.結局泣きをみるのは妻、「いっそ養子にして相続人に」はどうか?

年老いた親の世話を誰がするのか――。相続という観点からもこれは大きな問題です。なぜなら、親の世話や介護は原則、相続財産の多寡に反映されないからです。いまだに長男の嫁が義理の父母の世話をするケースが少なくありませんが、嫁は法定相続人ではありません。どんなに献身的に面倒を見ても、何も受け取る権利がないのです。

そんな嫁の労に報いる方法の1つが養子縁組です。養子になれば、法定相続人となり実子と同等の財産を受け継ぐことができます。手続きは簡単で、住所地の自治体に書類を1枚提出するだけ。デメリットはほとんどありません。養子になっても実の親との関係は変わらず、戸籍謄本の「父・母」の横に「養父・養母」が加わるだけです。

問題は、ほかのきょうだいとの関係です。長男の嫁が養子になれば、1人当たりの法定相続分が減少します。仮に相続人が母親と長男、次男の3人であれば、法定相続分は母親が2分の1、子どもは4分の1ずつです。ところが、長男の嫁が養子になると、子どもの法定相続分は、6分の1ずつになってしまいます。次男にしてみればおもしろいはずはなく、その気持ちがトラブルの火種になります。たとえ次男が納得しても、その妻が黙っていません。「長男の嫁」対「次男の嫁」となり、余計こじれます。

遺言で嫁に財産を残す方法もありますが、実際に遺言を残す人は1割程度。現実的とは言えません。また、親が亡くなってから遺言で突然、長男の嫁に財産の一部が移ることを知れば、これもトラブルのもとになります。

夫は自分の親を看る、妻は夫の親も看る

養子縁組をせず、遺言がなくても、介護の功績が認められるケースはあります。しかし、介護をヘルパーなどに委託をしたと仮定して、日当×日数分の金額が権利として認められるだけで、負担の重さに見合いません。

そういう意味でも、養子縁組か遺言で対策を講じておくのが理想ですが、長男から親に進言するのは考えものです。「親に死んでほしいのか!」となりかねません。そこで、私がお勧めしたいのは、3ステップでアプローチをする方法です。

第1ステップは、普段から親の話をよく聞くこと。年に何回か、近況などじっくり話を聞く機会を設けてみてください。第2ステップは終活の確認です。要介護状態になった場合や、終末医療について、親の希望を聞きます。第3ステップでようやく死後の話になります。葬式には誰を呼んでほしいのか、呼んでほしくないのか、どんな葬儀がよいのかなどを聞いてみます。

親は、よく話を聞いてくれる子どもは親孝行だと感じます。「ほかのきょうだいよりも多めに財産を残してあげなきゃね」という言葉も出るでしょう。そのときがチャンスです。妻の養子縁組などをさりげなく話題にするといいでしょう。

手続きは書類1枚提出するだけ。問題は取り分減で生じる兄弟紛争
天野 隆
税理士法人レガシィ代表社員税理士。公認会計士。慶應義塾大学経済学部卒業。アーサーアンダーセン会計事務所を経て現職。税理士法人レガシィは、累計相続案件実績件数で日本一。