スケジュール欄が常に埋まっているビジネスパーソンは有能である。そう考える人は多いかもしれません。ですが、「超整理」シリーズなどで知られる野口悠紀雄氏は、「スケジュールに白い部分がなければ、重要な仕事はできない」と言います。野口氏が「大きな成果をあげようとするときに求められるのは、空白の時間をつくる能動的なタイムマネジメントである」と提唱する理由とは――。

手帳の空白を死守せよ!

多くの人は、手帳に予定がぎっしり入っていないと、自分が社会から必要とされていないように思えて、不安になります。しかし、スケジューリングでは、「いかにして白くするか」を考えることが大切なのです。

手帳に入る予定の多くは、会議や面談、打ち合わせなど、誰かに時間を合わせる受け身の予定ではないでしょうか。そうなると、予定が入れば入るほど、主体的に使える時間が減っていくわけです。つまり、時間泥棒に自分の時間を盗まれていることになります。

スケジュールがぎっしり埋まっているビジネスパーソンは有能と思われがちですが、実際は逆です。ひたすら受け身の予定をこなして時間を費やしている人です。そうした人が、腰を据えて取り組まなければならない重要な仕事ができるでしょうか。重要な仕事を遂行するためには、主体的に使えるまとまった時間、つまり白いままのスケジュール欄を確保しなければならないのです。

私の場合、最も重要な仕事は本を書くことです。本一冊の執筆に2~3カ月はかかりますから、打ち合わせなど執筆以外の仕事は入れないようにして、手帳に一定期間の空白を死守します。

もちろん、その人が置かれている立場によって、自分のために確保できる時間には違いがあります。しかし、「手帳は白くすべきだ」と認識し、白い部分を確保することが大切なのです。

旅に出て、空白の時間をつくる

経営者など人の上に立つ人は、手帳を白くしなければいけません。

私はある出版社の企画で、アメリカのベストセラー作家、故マイケル・クライトン(『アンドロメダ病原体』『ジュラシック・パーク』など)と対談したことがあるのですが、そのときに彼は、1年に1回は一人で海外旅行をすると言っていました。彼は旅によってつくる空白時間で、思考していたのでしょう。

組織のトップに立つ人には、マイケル・クライトンを見習ってほしいと思います。1週間でもいいから旅に出て、空白の時間をつくるべきです。経営者が日々の仕事に忙殺されているようでは、会社の将来は危ぶまれます。部下を引き連れての旅ではいけません。外部との交信もシャットアウトします。誰にも邪魔されることなく考えるとき、見えてくるものがあるはずです。

組織のトップではなくても、スケジュールを白くすることができれば、空いた部分を中長期的な目標に向かうための時間とすることができます。会社に勤めているのであれば、新規プロジェクトを企画立案したり、ステップアップのための勉強をしたりと、予定に追われていてはなかなかできないことに着手できるでしょう。

スケジュールを白くするためには能動的なタイムマネジメントが必要です。しかし、能動的なタイムマネジメントの実行は、容易ではありません。

予定を執行する能力は向上したが……

インターネットやデジタル機器の発達とともに、現代人の予定を執行する能力は飛躍的に向上しています。しかしスケジュールを組み、計画を練る能力は低下しているのではないでしょうか。スマートフォンやパソコンのスケジュールアプリだけでスケジュール管理をしていると、その傾向は強くなるように思います。

スマートフォンなどのスケジュールアプリには一覧性がありません。一覧性がないと、明日の予定、1週間後の予定、1カ月後の予定、そのさらに先の予定を、連続したスケジュールとして視覚的に把握することができないため、重要な仕事を軸に予定を組むという、本来あるべきスケジューリングができなくなるのです。

紙とウェブの特質を知り、併用する

紙の手帳には一覧性を求めることができます。もっとも、旧来の紙の手帳は、多くが見開きを1週間単位としています。これと別に年間の表が用意されていることもありますが、書き込むスペースが限られています。しかも、週のスケジュール表と2本立てでは、ダブルブッキングなどが起きる危険もあります。

紙の手帳が本来持つ優位性を活かし、同時に問題点を解消したのが、私が考案した『「超」整理手帳』です。最大のポイントは、スケジュールシートを蛇腹式に折りたたむワイドなものとしたことです。これによって、8週間を一覧することができます。

前に述べたように、スケジュール帳は、「いかにして白くするか」が大切なのですが、『「超」整理手帳』を使うと、空白の時間をつくるならどのあたりに設定すると実現性が高いかが一目瞭然です。こうして能動的なタイムマネジメントが可能になります。仕事への向き合い方や仕事から得られる成果も変わってきます。

理想的なスケジューリングのために

現在、私はスマートフォンのスケジュールアプリにもかなり依存するようになっているのは事実です。『「超」整理手帳』のデザインを用いたスケジュールアプリをiPhoneに入れており、これを使うと日々の用事の確認や実行の正確性が増すからです。しかし、紙の手帳が必要なくなったかといえば、まったくそんなことはありません。スマートフォンのスケジュールアプリと紙の『「超」整理手帳』を併用しています。

スマートフォンのスケジュールアプリは、予定を確実に実行するためのもの。紙の手帳は予定をコントロールするためのもの。それぞれの機能を理解し、併用することが理想的なスケジューリングにつながるのです。

野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)
早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問
1940年東京生まれ。1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、 スタンフォード大学客員教授などを経て、 2005年4月より早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授。 2011年4月より 早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問。一橋大学名誉教授。2017年9月より現職。