恋愛、結婚、離婚、再婚、婚活、浮気、不倫……。世は変われども、男と女のいさかいが尽きることはありません。行政書士・男女問題研究家の露木幸彦氏のもとには、日々、そんな泥沼状態から抜け出さんと多くの相談者がやってくる。その痛切なトラブルエピソードをシェアし、ぜひ他山の石、もしくは人の振りみてわが振り直していただきたい。

第1回目(前編・後編)のテーマは、「一線を越える」行為に対する男女の意識差。ちょっと背筋が寒くなる話です。

前編のあらすじは……都内在住の34歳メーカー社員がある婚活で32歳の派遣社員の女性と出会い、4回目のデートで初ベッドイン。しかしその後、女性の束縛が激しくなり、関係を切ろうとした男性に女性がさまざまな復讐をしかけてきた。

男に逃げられた「32歳」の暴走が止まらない!

はらわたが煮えくり返るとはこのことでしょう。

彼女は竣太さんに総攻撃をしかけてきました。考えてみれば、商社の派遣社員の彼女も、これまでさまざま男女経験があったはずです。32歳となって、真剣に結婚相手を探そうと婚活パーティーに参加したのかもしれません。それだけにせっかく「いい人に巡りあえた」のに幸せが逃げていくのを、指をくわえてみているわけにはいかなかったのでしょう。

彼女はLINEでオブラートに一切包まない言葉の銃弾を次々に撃ち込んできました。

「エッチする気なんてないのに無理やり、ホテルに連れ込んだんでしょ。しらばっくれないで!」

▼「同意していないのに行われた性交渉」だと難癖

もちろん、性交渉はお互いの同意の下に行わなければなりませんが、今度は「同意していないのに行われた性交渉」だと難癖をつけてきた、と竣太さんは感じたそうです。

「ホテル2人きりで入れば、当然、彼女はそのつもり(性交渉をするつもり)なんだと決め付けていました」

竣太さんは当日のことをそう振り返りますが、「ホテルに行くことに同意した=性交渉に同意した」というのはあくまで竣太さんの目線です。一方、彼女の目線では「ホテルに行くことに同意したけれど、性交渉に同意していない」だから、絶対に自分が正しいという竣太さんの言い分はなかなか通りにくい。

ホテルに行くことに同意なら性交渉も同意か?

一般論として、もし、カップルの行き先がラブホテルなら、セックスありきの密室なので「ラブホテルに行くことに同意したのに性交渉に及ぶつもりはなかった」というのは無理があります。しかし今回は残念ながら、そうではありません。行き先は1泊5万円の都心の外資系高級ホテルでした。奮発したのが裏目に出たのです。

必ずしもセックスだけをする部屋ではないので、「ホテルに行くことに同意=性交渉をすることに同意」と結びつけるのは難しいです。結局のところ、竣太さんは彼女から性交渉の同意を取り付けていないので「非合意の性交渉だった」と指摘されれば言い返せません。

そんな流れに乗じてか、彼女のLINEはさらに攻撃力を増してきました。

「私は『エッチしてもいい』なんて一度も口にしていないわ。それなのに力任せに押し倒したんじゃないの。サイテー! (ワインを)飲みすぎて途中から覚えてないし」

竣太さんは当初、こうした“口撃”に怒りを覚えましたが、休みなく攻め続ける彼女に戦慄を覚えたといいます。

▼逆上した彼女は相手を強姦魔呼ばわり

抵抗できない女性に対して力ずくで押さえつけて肉体関係を迫る……彼女は竣太さんが「強姦魔」だと言わんばかりでしたが、竣太さんは決して強引に押し倒したわけではありません。ハグからキス……ごくふつうの段階を踏んだはずだ、と語ります。

「彼女が露骨に嫌がれば、無理強いするつもりはなかったんです」

竣太さんは腕力にものを言わせて彼女をがんじがらめにしたわけではないので、彼女が力いっぱいに抵抗すれば、途中で性交渉を中断していたと言います。

「抵抗できないほど酔っぱらっていたわけでもないのに!」

竣太さんは語気を強めます。お酒に酔っていたので歩行を手助けしたとはいえ、彼女は自分の足でホテルまでたどり着いたのだから、その「言い分」は当然といえば当然です。竣太さんによれば、彼女が最初から最後まで拒否しなかったから「大丈夫」だと思って最終的には射精にまで至った、と。「拒否しない=同意があった」という主張です。

一方、彼女に言わせれば、「途中で拒否したら何をされるかわからない」という恐怖感にさいなまされたということかもしれません。そして、竣太さんのことがあまりにも怖くて、とても拒否できるような状況ではなかった。

「拒否する=同意がない」「拒否しない=同意があった」という二者択一ではなく、「同意していないけれど拒否できないこともあり得る」と反論されれば、竣太さんはどうしようもありません。なぜなら「同意の有無」は彼女の心のなかの問題で、彼女の気分次第でどうにでもなるからです。

前述の通り、2人が恋人同士の場合、暗黙の了解(きちんとした同意は不要)で済ませても構わないでしょうが、それは2回目、3回目の話。竣太さんが彼女と肉体関係を持ったのは初めてなので今回の場合、彼女がお酒を飲みすぎて、きちんとした意思疎通が難しい状況だったとはいえ、せめて1回目はきちんとコミュニケーションを取っておいたほうが良かったかもしれません。

「最後までヤルなんてサイアク。これレイプでしょ!」

劣勢一方の竣太さん。彼女はここぞとばかりに「あなたはレイプ犯だ」と言わんばかりの強力な核弾頭を着弾させたのです。

「(私は)途中で『嫌よ』と言った。それなのに最後までヤルなんてサイアク。これってレイプなんじゃないの!」

彼女はそんなふうに竣太さんをレイプ犯に仕立てようとしてきたのですが、私は竣太さんに当時のことを今一度思い出してもらいました。彼女は本当に「抵抗」したのでしょうか?

竣太さんは目を閉じて、あの夜を反芻した後、か細い声で話し始めました。その骨子はこうです。

・性交渉の最中、彼女は「いやん」といったやや甘い声を上げていた。
・竣太さんは彼女の声を「拒否」と受け取らず、あくまで「あえぎ声」と捉えた。

▼どこまでが「嫌よ嫌よも好きのうち」なのか

「嫌よ嫌よも好きのうち」と言いますが、結局のところ、言葉を発する側の意図と、受ける側の解釈、どちらが優先するのかです。「いやん」と「嫌!」ではニュアンスは180度、変わってくるでしょう。

もし、彼女が本当に苦痛でやめてほしくて「嫌!」と言ったのなら、彼女の言葉を無視して性交渉を続けたと断罪されても仕方がありませんしNOの意味だと斟酌できなかった竣太さんに問題があると言わざるを得ません。

私が竣太さんを通じて2人のトラブルの概要を聞いてきて感じたこと。それは彼女の気持ちは理解できる部分はあるもののLINE攻撃はあまりにも一方的で独善的で殺気立っていたということでした。竣太さんが恐れおののき震えあがってしまったのも無理はありません。中途半端に反応しようものなら揚げ足を取られて、ますます事態が悪化してしまうのではないかと何の“交渉”もできず、かえって彼女を怒らせてしまったのもいたしかたなかったかもしれません。

ただし、竣太さんが全面的に正しいとは言えません。

そもそもホテルの部屋には2人しかおらず「密室」だという点が裏目に出ています。よってお互いの言い分が食い違った場合、白黒をつけようがなく、竣太さんは客観的な反論ができません。

「両親にも会社にも、あんたがしたことすべてを話す」

最初のLINEから10日が過ぎようとしていた日。竣太さんの気を引くことができずに業を煮やしたのでしょうか。彼女がまたしても大噴火しました。

「あんたは外面だけいいから、周りからまともな人間だって思われているんでしょ。でも実際には真逆。欲望のまま生きるサイテー人間。本当の姿を周囲の人間に知ってもらおうよ。私に対して何をしたのかを!」

彼女はそうやって前置きをした上で、さらに復讐の中身を明らかにしたのです。

「ご両親にすべて話す。だって、あんたは都合の良いことしか伝えていないでしょ。最初から体目当てで近づき、『一緒になりたい』と甘い言葉をささやいて信じ込ませると強引にホテルに連れ込み、酒を無理に飲ませ、抵抗できなくなったところで力任せに押し倒したレイプ犯。そして都合が悪くなるとポイ捨てするような詐欺師に自分の息子を育てた覚えはないはず。きっとご両親は悲しむでしょうね!」

彼女は、竣太さんが実家を大事にしており、両親との関係が良好で「孝行息子」と思われていることを知っていました。だから、それを逆手にとってまるで両親を人質に取るような形で脅しかけてきたのですが、これだけで終わりませんでした。

▼「このまま今の会社にいられるかな?(笑)」

「まさか職場の上司はあんたがナンパ師で詐欺師、そしてレイプ犯だなんて知らないでしょうから、もし私への仕打ちの一部始終を知れば、大変だろうね。長年、築いてきた人間関係はパー。人事考課はボロボロになるでしょうし、これから一生、昇進・昇級できなくなって困るでしょうね。このまま今の会社にいられるかな?(笑)」

竣太さんはほとんどパニック状態です。

新卒で就職したこの会社には12年在籍しており、上司や人事部、取引先を良好な関係を築いてきました。竣太さんは私に言いました。「彼女との関係がうまくいっている頃、勤務先の会社名をポロっと漏らしてしまったことが致命的でした……」。

万が一、彼女が会社へ匿名で密告するようなことがあれば、竣太さんは社内で釈明に明け暮れなければなりませんし、最悪の場合、社内に居場所を失い自主退職に追い込まれるかもしれない。12年の努力がすべて水の泡に消える可能性もあることをリアルに感じたとき、竣太さんは目の前が真っ暗になったそうです。

なぜ、彼女の“脅し”に完全に屈したのか?

そもそも彼女の目的は何だったのでしょうか? 私と竣太さんは改めて冷静に考えました。

「警察への被害届」「両親への密告」「職場への通告」はあくまで目的を達成するための手段に過ぎません。唯一の目的は「彼との復縁」です。もし、竣太さんが復縁に応じなければ、「元彼」の親戚関係や仕事関係がどうなろうが知ったことではないので、前述の復讐を本当に実行するぞ、とすごんで見せているのでしょう。

本当に実行するか否かは、わかりません。また、実行したとき、親や会社が竣太さんをとがめるかどうかも定かではありません。両親も人事部も上司も、「今回は大変だったな」と一笑に付す可能性もあるでしょう。

果たして竣太さんはどのような結論を出したのか。

最後は相談者本人の判断です。後日、その判断を聞いて私は驚きました。結局、彼は……。(1)既読スルーをやめて、(2)彼女に謝罪の返事をし、(3)交際を再開することにしたそうです。

彼女の“脅し(作戦)”に完全に屈したのです。

▼まさかまさか、猟奇的な彼女と復縁するとは

言うまでもありませんが、独身男性には交際の自由が認められており、どんな女性と付き合ってもいいはずです。にもかかわらず、「猟奇的」と竣太さんが感じていたはずの彼女を選ぶことになるなんて。今後も何かあれば、彼女に罵詈雑言を浴びせられ、振り回され、付きまとわれ、悩まされ続けることは想像に難くありません。

竣太さんにとっての最高のシナリオは、彼女がLINEに無反応な男に愛想を尽かして別れを切り出してくれることだったのかもしれません。ところが、彼女の執念深さは尋常ではありませんでした。別れようと思っていた相手と付き合いを続けなければならない心境とはどんなものでしょうか。同じ男性としては、つい同情してしまいます。

しかし、もとはといえば、竣太さんは自らの詰めの甘さ(「交際の有無」「性交渉の同意の有無」「拒否の有無」「抵抗の有無」が曖昧)があだとなって招いた結末です。ここで読者の皆さんにお伝えしたいのは、彼女の“弱み”を握られ配下に置かれるようなことは、どんな男性にも起こり得るということです。決してひとごとではないのです。