「貰えるお金」は知るだけでお得

国や自治体には実に様々な制度、助成金などがあります。それらを利用するには、まずはどんなものがあるのかを知り、申請をしなければいけません。これを面倒と感じ敬遠するのは、とてももったいないこと。こうしたお金の原資は、私たちが納めている税金や社会保険料です。使えるものは上手に利用すべきでしょう。

またどんな制度があるのかを知っておくだけで、実はお得。なぜなら、いざというとき公的な助けが得られることがわかっていれば、不安に駆られて過剰に保険に加入する……ということを防げるからです。

では実際にどんな制度があるのか、いくつかご紹介しましょう。

●高額療養費制度

病気やケガで入院をすると、医療費が高額になることがあります。そうした際に医療費の負担を軽減できるようにしたのが「高額療養費制度」。1カ月の医療費が一定額を超えた場合、その金額が払い戻されます。

この制度で忘れられがちなのは、次の(1)~(3)の場合、負担額をさらに軽減する仕組みがあることです。(1)1カ月の間に同一人が複数回受診(2)1カ月の間に同じ世帯の複数人が医療機関を受診(3)直近の12カ月間に高額療養費の支払いが4回以上

特に(2)は見落としがちですので、注意が必要です。該当する可能性があるなと思ったら、一度家族全員の医療費を調べてみてください。

●医療費控除

家庭内で1年間に医療費が10万円以上かかった場合、所得からその分を差し引き税金を軽減してくれるのが「医療費控除」です。

対象になるのは、病院、歯科医院などの治療費、入院費、医師の処方箋による薬代などだけではありません。市販の風邪薬や胃腸薬、治療のためのマッサージ、鍼灸代、通院時の交通費、妊娠と診断されてからの定期検診や検査などの費用、レーシック手術費用なども対象となります。

控除を受けるには確定申告が必要です。世帯で一番所得の多い人が申告するといいでしょう。

●障害年金

年金といえば老後に受け取る「老齢年金」が一番に思い浮かびますが、現役世代を支える年金もあります。そのひとつが、年金の被保険者が病気やケガで障害認定された場合に支払われる「障害年金」。一度申請し認定されると、その状態が続く限り受給し続けることができます。

障害という言葉から四肢の不自由、失明などをイメージする方が多いと思いますが、対象となるのはそれらだけではありません。精神疾患(躁うつ症、統合失調症など)。目の疾患(白内障、緑内障など)。呼吸器疾患(肺結核、気管支ぜんそくなど)。悪性新生物(がん)、白血病、糖尿病なども対象となります。ただ、罹患したら障害認定されるのではなく、あくまで肢体や精神系統の障害の“状態”で判断されます。障害年金は知らずに申請を逃している方が多くいるようです。

●専門実践教育訓練給付金

専門的・実践的な教育訓練として厚生労働大臣が認定した講座を受講した場合に給付金が受け取れます。支給額は、受講者が支払った教育訓練費用のうち40%(年間上限32万円)から60%(同48万円)と手厚いのが魅力です。

対象講座は国内MBAや法科大学院のほか、看護師、栄養士、救急救命士などもあります。本気で学び、仕事に活かしたい人には見逃せない制度です。

自治体独自の制度は問い合わせるのが正解

以上のように、どこに住んでいても受け取れるお金のほかに、地方自治体によって設けられている制度もあります。「住宅の耐震診断費用・耐震補強工事助成金」、地方に移住して就職すると貰える「UJIターン支援金」、人口減に悩む自治体では「結婚仲人報奨金」などがそうです。こうした助成金や補助金は、各自治体が独自に設けているものが多く、制度の有無、対象者、金額などは問い合わせて調べる必要があります。

「こういう制度がありますよと、もっと役所が教えてくれればいいのに」と思うかもしれませんが、役所にとっては、一部の方だけ対象となる情報に関して、個別に案内するのは難しいものです。賢く使うには「自分で調べ、申請する」ことが必要。方法としては、住んでいる自治体に電話をして「00に関して使える制度はないですか?」とたずねるのが一番てっとり早く正確です。ぜひ一度問い合わせてみてください。大いに助かる情報が見つかるかもしれませんよ。

主な「申請するともらえるお金」

※制度・助成金の名称は自治体により異なる場合があります

【全国で貰えるもの】

名称:高額療養費制度
対象者:健康保険の被保険者および被扶養者
もらえる額の目安:上限なし
金額の決め方[地方自治体の例]:1カ月の医療費のうち、一定額(年収370万~770万円程度の場合、8万~9万円程度)を超える金額が払い戻される
申請先:健康保険組合、市区町村(国保)

名称:医療費控除
対象者:1年間に家族の医療費が10万円以上の人
もらえる額の目安:上限約90万円(所得控除の上限は200万円)
金額の決め方[地方自治体の例]:1年間に支払った医療費(保険適用を除く)のうち10万円を超える金額を所得控除
申請先:税務署

名称:障害年金
対象者:国民年金・厚生年金の被保険者
もらえる額の目安:年額58万5100~97万5100円
金額の決め方[地方自治体の例]:障害の程度による
申請先:年金事務所

名称:専門実践教育訓練給付金
対象者:雇用保険の被保険者等で、厚生労働省が指定する講座や授業を受講した人
もらえる額の目安:上限48万円
金額の決め方[地方自治体の例]:受講費用のうち40%(年間上限32万円)~60%(同48万円)。
申請先:ハローワーク

名称:出産育児一時金
対象者:出産育児一時金
もらえる額の目安:42万円
申請先:健康保険組合、市区町村(国保)

【自治体により貰えるもの】

名称:出産祝い金
対象者:出産した人(自治体が定める条件に合う人)
もらえる額の目安:数万~100万円程度
金額の決め方[地方自治体の例]:【北海道福島町】第1子5万円、第2子20万円、第3子100万円(うち30%は町内商品券、第3子は3年分割)
申請先:市区町村

名称:太陽光発電システム補助金
対象者:太陽光発電システムを設置しようとする人
もらえる額の目安:数万~20万円程度
金額の決め方[地方自治体の例]:【東京都多摩市】戸建て住宅で1設備あたり5万円
申請先:市区町村

名称:生垣緑化助成金
対象者:戸建てや共同住宅で生垣・壁面緑化をした人
もらえる額の目安:数万円程度
金額の決め方[地方自治体の例]:【兵庫県神戸市】戸建て住宅で5000円/m(総額5万円)
申請先:市区町村

名称:耐震診断費用助成・耐震補強工事費助成
対象者:自宅の耐震診断や耐震補強工事を行った人
もらえる額の目安:数万~数十万円程度
金額の決め方[地方自治体の例]:【東京都台東区】耐震診断費用の全額(木造の場合。上限15万円)、または半額(木造住宅以外の住宅の場合。上限50万円)
申請先:市区町村

名称:住宅リフォーム助成
対象者:自宅のリフォームをした人
もらえる額の目安:数万~20万円程度
金額の決め方[地方自治体の例]:【東京都目黒区】上限10万円(一般・バリアフリーリフォーム)、または20万円(アスベスト除去)
申請先:市区町村

名称:家賃補助・住み替え助成
対象者:賃貸住宅に住んでいる人、引っ越しをする人
もらえる額の目安:数万~30万円程度
金額の決め方[地方自治体の例]:【東京都新宿区】子育てファミリー世帯が区外から転入する場合、契約時の礼金・仲介手数料の合計・最大36万円、引っ越し費用の実費・最大20万円
申請先:市区町村

名称:UJIターン支援
対象者:地方へ移住する人
もらえる額の目安:数十万~150万円程度
金額の決め方[地方自治体の例]:【北海道沼田町】町内に土地を購入して1年以内に住宅を新築した場合、150万円(町内業者施工)または80万円(町外業者施工)
申請先:市区町村

名称:結婚仲人報奨金
対象者:人口減に悩む地域で、カップルの仲を取り持った人
もらえる額の目安:5万~20万円程度
金額の決め方[地方自治体の例]:【山梨県小菅村】永住を前提として村内に住所を有している若者の結婚を成立させた場合、20万円
申請先:市区町村

井戸美枝
CFP・社会保険労務士。2013年から社会保障審議会委員。著書に『世界一やさしい年金の本』(東洋経済新報社)、『知らないと損をする国からもらえるお金の本』(角川SSC新書)などがある。