ゴーン社長に代わって西川廣人氏が社長兼CEOに就任。西川社長は「第4、第5のパートナーも出てくる」とさらなる再編に乗り出す。

新しい日産をつくっていく大きなチャンス

「突然ゴーンさんが日産を退いて私に代わったということではない。三菱自動車が3社目のパートナーをして加わった後、どういう体制が一番いいかを考えた時、『ゴーンさんの役割を整理しないといけない』と私とゴーンさんで議論した。その時から今回のシフトの準備が始まり、今に至っている」

4月1日付で日産自動車の社長兼CEOに就任した西川廣人氏は、4月3日に複数のメディアとの共同インタビューを行い、こう答えた。その表情は厳しく、口調も淡々としていた。インタビュー中は常にそんな様子で、ほとんど笑顔を見せなかったが、一度だけ笑った時があった。

それは「知名度や発信力でゴーンさんに劣るのではないか」という質問が飛んだ時だ。すると、西川氏は「それはどうしようもないですね」と笑いながら答えた。しかし、再び厳しい表情に戻って、「あんなカリスマ性がある経営者はそういない。個人的な技量は及ばないにしても、新しい日産のイメージをつくっていく大きなチャンスだと思っている」と続けた。

西川氏は1953年11月生まれの63歳。77年に東京大学経済学部を卒業し、日産自動車に入社。主に購買部門を歩き、社長・会長を務めた辻義文氏の秘書も務めた。その後、欧州日産へ出向し、2000年にカルロス・ゴーン氏が日産の社長になってからは購買企画部部長としてコスト削減をゴーン氏とともに進めた。

03年常務執行役員、05年副社長、14年チーフ・コンペティティブ・オフィサー(CCO)を経て、16年に共同CEOに就任している。「ものづくり系の部門をはじめ、米国、欧州、アジア事業なども担当し、日産の事業のほとんどすべてを知っている人。日産の強みも弱みもよくわかっている。ただ、プライベートなことは社内でほとんど話したことがない」と日産関係者は話す。

非常に数字に強く、真面目で細かいことまできちっとやるタイプというのが社内の一致した見方だ。何かあるとすぐに担当者を呼びつけて確認し、事細かく指示を出すそうだ。また、ゴーン氏の考えを社内で一番よく理解し、ゴーン氏の気に入るような提案をするのがうまい、という声も聞かれた。そんな西川氏だからこそ、ゴーン氏は日産を任せられると判断したのだろう。

三菱自動車に続く第4、第5のパートナーが出る

西川氏は、今後の経営方針について、次のように話す。

「私の1番のミッションはスローダウンさせずに日産を着実に進化、成長させること。それに加えて、私が特に意識しているのは変化の激しい時代をチャンスとして捉えること。『技術の日産』というDNAの上に、自動運転や電動化などインテリジェント・モビリティという新しい技術をのせて、商品やサービスとして提供することだ。インテリジェント・モビリティとしての強い顔、ブランドのイメージを伝えていくということを強力に進めていきたい」

特に「技術の日産」についてはこだわりがあるようで、インタビュー中に何度もその言葉が出てきた。日産は現在、自動運転や電動化のリーダーを目指すビジョンを掲げている。自動運転では、昨年夏にミニバン「セレナ」に大衆車としては世界で初めて「プロパイロット」という自動運転機能を搭載して発売した。また、電動化については、昨年11月「ノートe-POWER」という新しいタイプの“電気自動車”を投入している。

とはいうものの、「日産パワー88」(2011~16年度の中期経営計画)で掲げた営業利益率8%、シェア8%は未達に終わった模様だ。

「やり残したことがいっぱいある。大きな成長を計画して投資をしたが、まだ8%のマーケットシェアに及んでいないし、それ以前の問題としてロシア、インド、インドネシア、ブラジルにかなり先行投資をしたが、まだまだそこが十分刈り取りができていない。宿題が残っている。これは私が引き継いでかなりのスピードでその宿題をこなしていく」(西川氏)

そのための対策として、インドネシアでは4月1日付で三菱商事出身の小糸栄偉知氏を現地法人の社長に任命した。同氏は「自動車が好きで、技術的なことにも詳しく、インドネシアにも5年ほど駐在し、同国のことを隅々まで知っている人物」(三菱商事関係者)とのことだ。

「私としては日産が得をするように、三菱自動車、あるいは三菱グループが持っているもので、先方がいいという限りは貪欲にいただきたい。その一つが人材」

そう話す西川氏は再編に関しても野心的で、「ルノー・日産アライアンスは当然成長し、大きくなると思う。3番目のパートナーとして三菱さんが入ったが、4社目、5社目のパートナーも出てくるだろう。そうやってアライアンスが成長し進化していく中で、日産はアライアンスの成長を引っ張る存在にしていきたい」と強調する。

それだけに、日産が今後、自動車業界再編のカギを握る可能性は高い。西川氏がどのような戦略を打ち出してくるのか注目が集まる。