太り気味、体力低下などの理由から、「走らなきゃヤバい」と焦る人は多い。忙しいビジネスマンがランニングを継続させるコツとは?

テクノロジーの活用で「走る」をもっと楽しく、もっと身近に

いつ・どこでもできる手軽さから、ビジネスマンがハマるスポーツとして上位にあがるランニング。誰もが一度は経験したことがあるはずだ。2月に開催された東京マラソン2017の一般枠抽選倍率は、実に12.2倍(定員2万6350名)。エントリーフィー約1万円を払ってでも参加したいというランナーが30万人以上いるということからも、もはやマラソンは国民的スポーツといっても過言ではない。

かつて箱根駅伝に出場した“元箱根ランナー”の大森英一郎氏。一度は走ることをやめたものの、社会人となり、走ることそのものを楽しむ市民ランナーたちと触れ合ううちに、タイムや勝敗に捕われない“Run”の楽しさに気付いた。そんな大森氏が代表を務める「Runtrip」は、走ることを軸に、新たな出会いや地域資源の有効活用といった付加価値を提供する。

忙しいビジネスマンこそランニングを

「走ることはフィジカルはもちろん、メンタルにも大変有効です。実際に私自身もランニングを再開してからは、一日息切れすることなく仕事ができるようになりました。煮詰まったり、落ち込んだりしたときに走れば、頭がスッキリして気持ちが切り替えられます」と、大森氏はいう。

日々の生活のなかにランニングを取り入れることで、具体的には以下のようなメリットが得られる。

◆肉体的側面:新陳代謝がよくなり、身体が引き締まる。肩こりや腰痛が改善する。眠りが深くなる。一日中アクティブに過ごせる。
◆精神的側面:リフレッシュできる。ポジティブ思考になる。頭が整理されいいアイデアが湧く。集中力が増す。
◆社会的側面:日中の仕事が捗る。時間の使い方がうまくなる。会社以外のコミュニティーができる。

さらには、うつ病など精神疾患にも有効であることが脳科学的にも証明されており、治療法のひとつとしてランニングを取り入れる精神科医もいるそうだ。心身ともに疲れたり、悩んだりしたときには、机上で頭を抱えるのではなく一歩外へ出て身体を動かす。これが解決への近道なのかもしれない。

「走りながらコミュニケーションをはかると、お互いにアドレナリンが出た状態なので、よりよい関係性が生まれます。いわゆる“飲みニュケーション”ではなく、ランニングを介したコミュニケーションならば、素面の状態でポジティブな会話が成立するのです。また出張先でランニングをすれば、同時に観光もできてしまう。出張先や旅先で早朝の街を走ると、その街の目覚める前、つまり“スッピン”を見ることができ、昼間の街とはまた違った良さを感じられます」(大森氏)

シューズさえあれば、いつ・どこででもできるランニングだが、ビギナーや膝などに持病がある人が始める際は、身体に負担をかけない走り方などをレクチャーしてくれるビギナー向けランニングレッスンを受講した方がよいと大森氏は勧める。最近ではリーズナブルな料金で実施する団体もあるという(主にグループレッスン)。

ランニング継続のコツは「まず予定を入れる」

一方で、ランニングを始めたいけれど仕事が忙しく時間がとれない、始めてはみたものの膝や腰を痛めたなど、そもそもチャレンジできなかったり、なかなか継続できなかったりで悩む人が多いのも事実だ。それについて大森氏は、3つのポイントを意識するとよいと話す。

1.テンションを上げるためにも、お気に入りのウェアやシューズを見つけ、形から入る。
2.ペースをあげず、息切れしない程度に走ったり、距離を短くしたりと、いかに苦しまず、楽に走るかを考える。
3.レースやイベントにエントリーする、トレーニングの予定を組むなど、予めスケジュールを押さえてしまう。

上記以外でも、仲間を見つけたりコミュニティーに参加したりするなど、ランナー同士で交流することがモチベーションとなり、継続へとつながる。既存のコミュニティーに入るのが苦手というタイプならば、自らSNSで呼びかけたり、会社で仲間を募ったりと自分で作ってしまえばよい。

加えて、ロケーションを変えることも継続するためには有効となる。毎日、同じ道を走るのではなく、その日の気分や、ランニングに費やせる時間によってコースを変えれば、意外な場所で季節の移ろいを感じられるなど、新たな発見があるかもしれない。

サーファーがいい波を求めるように、ランナーはいい道を求める

一度は走ることから遠ざかった大森氏だが、再び走ろうと思ったきっかけは、自らが運営することになったランニングのNPOだったという。

「新卒で入社したリクルートグループを退職し、次に就いた仕事が地域活性の仕事でした。職場は私の出身地でもある横須賀。地元の魅力を伝えながら、仕事とは別にランニングのNPOを立ち上げました。そこで出会ったのは純粋に走ることを楽しんでいるランナーたち。彼らのおかげで、辛い思い出ばかり浮かぶ現役時代の“走る”という呪縛から解き放たれ、走ることを心から楽しめるようになりました。ランナーのなかには、タイムや距離といった数字に縛られている人も多いはず。もちろんそれも重要なモチベーションとなりますが、それ以外にも素晴らしい面がたくさんあることを知ってほしいですね」(大森氏)

2015年、大森氏が立ち上げたWebメディア「Runtrip」は、そんなランナーたちをつなぐポータルサイトだ。Runtripとは大森氏の造語で、サーフトリップが語源となっている。

――まるで、サーファーがいい波を求めて旅をするサーフトリップのように、ランナーがいい道を求めて旅をするスタイル。それがRuntrip(ラントリップ)です。(「Runtrip」webサイトより引用)

サーファーにとってのいい波が、ランナーにとってのいい道であると置き換え、世界中どこにでもあり、誰もが自由に使うことのできる道という無料のリソースを有効活用するためのサービスがRuntripだ。

レースに出場することや記録向上だけでなく、日本各地にあるまだ見ぬ素晴らしい道を走ること、さらにその土地にしかない温泉や食を楽しむこと。そんな二次的要素が加わった、走ることを丸ごと楽しむための情報を提供している。

「ランナーにとって、素敵な道を探すことはなかなか難しいことです。Runtripでは、日本中、世界中のランナーたちが、地元の自慢の道やお気に入りの道を投稿し合い、情報共有しています。イメージはランナー版クックパッドといったところでしょうか(笑)」(大森氏)

 

ゴルフ接待はもう古い!ランニングから新しいビジネスが生まれる

2016年9月には、近畿日本ツーリスト、KDDIと連携した企画、「Run for 湯」をスタート。日本全国の温泉街やリゾート地とランナーをつなぐ、新たなサービスだ。もともと観光業や地域活性化の仕事に従事していた大森氏は、道という既存のインフラに新たな文脈を加えることで、地域の資源の本質的な魅力をダイレクトに伝えられるツールに変化させた。

「道も温泉も、すでに世界中にあるもの。これらをコンテンツとして捉えることで、無料の地域資源へと変えられます。世界中の道を地域資源にすることが、我々のミッションです」(大森氏)

地方の温泉やリゾートと連携することで、例えばゴルフ接待さながら、ランニングや温泉を介した接待というスタイルも実現しそうだ。もちろん、自分自身のリフレッシュや、家族サービスの一環でこのサービスを活用することもできる。パートナーの理解が得られず、走る時間が確保できないといった悩みを抱えるビジネスマンにとっても一役買いそうだ。

今後の展望としては、東京オリンピックを見据えたインバウンド向けのサービスなど、グローバル展開も視野に入れながら、まずは近日中にスマートフォンアプリのリリースや、スマートウォッチと連動させた初めて走るコースのナビゲーションなど、ランニング中にも豊かな体験ができる機能を提供していきたいと考えている。

元箱根駅伝ランナーが行き着いた先は、数字に捉われない、豊かなライフスタイルを実現させるためのラン。走ることそのものを楽しめば、心は物理的な距離を越え、より遠くまで行けるのかもしれない。

株式会社ラントリップ 代表取締役 大森英一郎
第84回箱根駅伝出場の元箱根ランナー。リクルートグループ退職後、観光系事業会社で集客全般を5年半経験。同時にNPO法人ランナーズサポート協会理事に就任。観光業界とランニング業界で感じた課題を解決すべく、Runtripの普及を提唱。