19世紀以来、食品を長期保存できる容器といえば「缶詰」。しかし缶ではなく、紙で同等の機能を持つ技術が日本でもデビューするという。【記事最終ページに商品企画書を掲載】

トマトピューレやコーンなどの食品を長期保存できる容器と言えば、多くの人は缶詰や瓶詰を思い浮かべるだろう。スーパーなどに行くと、円筒形の缶詰が陳列棚にずらっと並んで売られているのはおなじみの光景だ。しかし近い将来、これらがすべて“紙の缶詰”に入れ替わる日が来るかもしれない。

紙の缶詰容器、それが「テトラ・リカルト」だ。缶詰と同様に食品を容器に詰めてから加熱調理、長期保存ができるという。消費者にとっては、缶詰よりも軽いしゴミも捨てやすい、食べかけでも口を塞げば保存ができることなど、缶詰よりも便利な点が多い。

海外ではすでにメジャーなテトラ・リカルトが日本でも上陸前夜と聞いて、開発・販売元であるテトラパック社に取材に行ってきた。

■テトラ・リカルトの気になるポイント
・“紙の缶詰”とはどんなものか?
・ 軽い・省スペース・捨てやすいと、消費者にとって便利
・ 普通の缶詰や瓶詰めに比べ、製造・流通工程でコスト削減できる
・ 容器の約7割がリサイクル可能。サステイナブルで環境に優しい
・ 共働き家庭、個食化の増加に伴い、市場拡大が見込める
・ 欧米で先行して汎用化。日本での本格導入は2018年頃から

飲料パックでおなじみのメーカーの新技術

スウェーデンで創業したテトラパック・グループ(http://www.tetrapak.com/jp/)は1951年に紙容器に牛乳やジュースなどの液体を充填する技術を開発し、世界170カ国に市場を拡大してきた。日本にも1956年と早い段階で導入されている。ピラミッド型のパック入り牛乳は学校給食にも広く用いられたため、懐かしく思い出す人も多いだろう。

テトラパック・グループは、飲料や食品などのメーカーに紙容器及び容器に内容物を充填するためのシステムを売り込み、採用してもらうというBtoBビジネスを行っている。消費者としては「テトラパックの商品を買った」という認識はないと思うが、商品そのものは、読者の皆さんもよく目にしているはずだ。紙パック入り飲料をちょっと裏返してみると、箱に「日本テトラパック」の社名が印刷されている。

こうした紙容器には、軽い・省スペース・店頭で目立つ・使いやすい・リサイクルしやすい(消費者にとっては「捨てやすい」)といった、メーカー・流通・消費者の三方にとっての利点がある。そのため、飲料を中心として広く使われるようになっている。

缶詰同様に、食品を詰めたあとで加圧加熱処理が可能

そして2003年、同社ではさらに画期的な技術を開発した。テトラ・リカルトと名付けられたこの技術のポイントは、充填及び殺菌のための加圧加熱処理を紙容器のまま行えるようになったところにある。つまり、従来の紙容器は水分や熱に弱いため、100~130度の蒸気を加えて加圧する充填過程に使うことができなかった。特にスープ、カレーといったいわゆるレトルト食品については、高温加熱・加圧することが調理の一過程ともなる。必然的にこうした食品は、缶や瓶、あるいはレトルトパウチ入りに限られていた。

紙容器が持つメリットに加え、加熱充填処理を行うことができるようになったことにより、さらに汎用性が高まったわけだ。缶や瓶・レトルトパックの代替用品として、現在、約50カ国で、150ブランドに及ぶテトラ・リカルト商品が販売されている。欧米のスーパーなどでは、スープや食品素材の陳列棚で缶に代わってテトラ・リカルトがズラリと並ぶ光景も見ることができる。

開発から10数年が経ち、このたびそのテトラ・リカルトが日本市場に本格導入されることになった。導入を担うのは、テトラパック・グループの日本法人である、日本テトラパック。ビジネス開発マネージャーの坂尾伸一氏が日本及び韓国への導入を専門に担当し、企画を進めている。

「そもそも、日本はレトルトや缶詰食品の消費が非常に高いことから、重要な市場として注目されていました。今後高齢化、少人数世帯・共働き世帯の増加、個食化といった日本の市場ニーズに、テトラ・リカルトの持つメリットが非常にマッチしていると感じています。また、持続可能な容器として、今世界的に広がっている環境配慮のニーズに応えられる商品です」(坂尾氏)。

実はテトラ・リカルトは今までにも、限定的に日本にも輸入されていた。トマトピューレ、ボイルした豆、コーンなどの調理素材である。2005年頃から輸入されすでに10年が経つが、ここ数年で急激に販売が伸びているそうだ。2016年秋に開催された「東京国際包装展 Tokyo Pack2016」などの専門展示会でも多くの問い合わせが寄せられたという。3月7日から幕張メッセで開かれる「FOODEX JAPAN 2017」にも出展予定だ。

「スープなどの調理済み食品については、女性が働く世帯が増えたということで、海外では数年前から拡大傾向にあります。その波が日本にも訪れたと見ています。また環境やオーガニック食品への関心が高まったことも、背景にあると思います」(坂尾氏)。

テトラ・リカルトのメリット

テトラ・リカルトには、製造から消費されるまでを通じ、すべてのプレイヤーにとってメリットがある、と坂尾氏は話す。

製造面では、軽量かつ、空の状態では折り畳んで運べること、また直方体なので無駄なくスペースを利用できることなど、輸送効率向上によるコスト低減が大きな利点だ。流通面でも、同様に棚を無駄なく使えることが挙げられる。また平面に印刷できるので、缶や瓶のような曲面より商品パッケージの訴求力が強まり、消費者に選んでもらいやすい。

同じ容量の食品を入れた場合、円筒形の缶詰や瓶詰めに比べて直方体のテトラ・リカルトはぐっと省スペースになる。これは消費者にとっても大きなメリットだ。かさばらなければストックにも便利だし、ゴミの処理も紙パックなら楽である。

実際にテトラ・リカルトに詰められた食品を食べてみて気づいたのは、家事の負担を軽減する工夫がされていることだ。缶切りやはさみがなくても手で開けられるほか、開封口が尖っているため、スプーンなどを使わずに片手で中身を容器に移せる。またコーンや豆の水煮などの場合、先に開封口の先を小さく開けて水を切り、あとで大きく開けて中身を出すことができるなど、細かい部分で使い勝手がよい。レトルトのようにそのまま湯煎することもできるし、使い残しは口を閉じてそのまま冷蔵庫で保存できる。

また意外だが大きなポイントが、味の違い。缶のように、容器の匂いが食品に移ってしまうということがない。テトラ・リカルト入りのコーンの水煮をそのまま食べてみたが、明らかに缶入りのコーンとは味が違い、フレッシュなおいしさが味わえる。

最後に挙げられるのが、リサイクル性能や持続可能性という、社会全体にとってのメリットだ。テトラ・リカルトは約7割が紙として再生可能で、残りのアルミ以外の樹脂素材は燃やして熱源として使用できるという。すでにテトラパック製品が普及している国・地域では、リサイクル資源として分別が行われている。また、FSC(責任ある森林管理が行われていることを保証する認定基準)認証を取得し、森林資源が持続的に確保できる。

ナチュラル&シンプルなイメージ

こうした味のフレッシュさやリサイクル性の高さから、テトラ・リカルトには“ナチュラル&シンプル”というイメージが付加されているようだ。ある大手スープメーカーなどでは、普通の商品には缶を使用し、オーガニックなど高付加価値の商品に紙容器を使用するという具合に、使い分けをしているという。

「そのほかスポーツをする人などは、自然環境への関心も高い。ダイエットやトレーニングをしている人向けの食品なども、市場の一つとして考えられます」(坂尾氏)。

テトラパック・グループの調査によると、近年、消費者の関心が高まっているキーワードとして「人とのつながり、健康、食品の安心、体験、シンプルな生活、環境」の6つが浮かび上がっているそうだ。

「いずれも、テトラ・リカルトの持つメリットに関係があります。社会全体に、テトラ・リカルトが受け入れられる下地ができてきたということであり、市場としての可能性は非常に大きいと感じています」(坂尾氏)。

日本への本格導入に向けての準備は始まったばかりで、テトラ・リカルト入りの商品が店頭に並ぶのは早くて2018年だという。まずは営業先の食品メーカーや製造会社に、充填ラインを導入してもらう必要があるためだ。

いずれにせよ坂尾氏からの説明にもあるように、飲料、食品素材、調理済み食品、またペットフードなどと、想定される市場は非常に幅広い。トータルコスト低減やイメージ訴求力のほか、環境に関わるメリットを企業や消費者にうまく伝えることができれば、注目度は高まるのではないだろうか。

■次のページでは、日本テトラパック「テトラ・リカルト」の商品企画書を掲載します。

テトラ・リカルトの企画書

「製造から始まって、流通、消費者、そして社会全体に至るまで、すべてのプレイヤーにとってメリットがあるのがテトラ・リカルトの特徴です。企画書では、そこをいかに分かりやすく見せるかがポイントでした。基本的に社内向けですが、お客様へのプレゼンテーションで使用できるイメージで作成するように心掛けました。文字は少なく、見た目で分かりやすく、そして、見ている人が楽しくなる(興味がわく)イメージです。

自分の手掛けている商品に愛着がわいてしまうタイプなので、主観的になり過ぎる恐れがあります。そこで、企画書を考える際には、3つの目『鳥の目(全体像)、虫の目(現場)、魚の目(時代の潮流)』を意識しています。ここで言えば、レトルト食品業界全体の現状は? 現場では何を求めていて、何に困っているのか? 食品業界と世の中全体の潮流はどう動いていて、どこにギャップがあるのか? のバランスを意識しました」(日本テトラパック ビジネス開発マネージャー・テトラリカルト担当 坂尾伸一氏)