普段は抜け目ない人でも、異性に対してはつい気を許してしまうもの。男女関係を利用してだまし、だまされる場面を日々目撃している探偵が語る人間模様。

探偵歴40年余の経験から言うと、だまされやすい人には共通した傾向がある。人がよくて、他人を疑わず、頼まれたら嫌とはいえない。こういうタイプが多い。

たとえば、新聞の勧誘を断りきれない、上司から無茶な仕事を振られても受けてしまう、といったことに思い当たるフシがあるなら気をつけたほうがいい。

ただし、自分は違うと思っても安心するのは早い。人をだまそうと近づいてくる輩はちょっとした心のスキを見逃さず、言葉巧みにつけこんでくるからである。

一流企業に勤める男性が、バーで知り合ったハーフの女に2000万円を貢がされたという一件がある。その女は「自分はスペイン王室の血筋を引く」などとでまかせを言い、自国に戻ればいくらでもお金はあるが、国の情勢がよくない今は引き出せないから貸してほしいと持ちかけた。「スパイ組織があなたを狙っている」と恐怖心を煽ることもあったという。

男性を信じ込ませるために、あの手この手が駆使された。付き合い始めた頃に「自分が代金を払ったから旅行に行こう」と誘われたこともあったそうだ。しかし、旅行の代金を払ったというのは大ウソ。予約もしていないのに、急用ができて行けなくなったとごまかして、お金があるように見せかけたのである。

恋は盲目というが、スペイン王室だのスパイだの、いかにもうさん臭いと誰もが思うはずだ。なぜ、だまされたのか。男性は40歳を過ぎても独り身で、そろそろ身を固めたいと焦っていたのだ。恋愛経験も乏しかったようで、女と2年間も付き合いながら、手を握ったことさえなかったそうだ。

当然、この逆のパターンも起こりうる。女性は周りの友達が次々と結婚していくと、途端に焦りを感じるようだ。親からのプレッシャーもあるだろう。

そんな女性が駆け込む結婚相談所は、ある意味、カモを狙う男が集まる場所だ。ここでターゲットを見つけて、結婚をチラつかせながら肉体関係を持ち、本人や親の財産を狙う手口は少なくない。探偵の仕事に多いのは結婚相手の素行調査だが、調べてみると2股、3股はよくある話だ。最悪だったのは、結婚式の当日に、花婿になるはずの相手が姿をくらませたというケースだ。新郎側の列席者は誰もいなかった。

女はなぜ見た目が悪い男にハマるのか

下心を持って近づいてくる相手にだまされないためには、詐欺師の行動パターンを知ることだ。都合の悪い話題が出ると話をすり替える、やたら饒舌で口がうまい、写真を撮らせない、友達を紹介しようとしても会わない、といった行動が見られたら要注意だ。貯蓄の額や親の財産などを聞きたがる場合もあやしいと思ったほうがいいだろう。

さらに、幅広い知識を持つことも大切だ。先のハーフ女のようなスペイン王室云々も、知識があればありえないとすぐにわかったはず。冷静になって、相手の言動を反芻してみることも必要だ。酔ったときに、以前、聞いた話を持ち出してみると、人の名前などが食い違っているということがある。不安を感じたら、友人に相談してみるのもいいだろう。とはいえ、相手を疑ってばかりでは、恋愛ができないのもまた事実。だからだまされる人が絶えないのだ。

結婚して家庭を持つ男女であっても、心のスキはいくらでもある。妻に多いのは出会い系サイトで知り合った男にだまされて、お金を巻き上げられるというパターン。昨今、セックスレス夫婦が増えているというが、夫が構ってくれない、あるいは、連日、酔っ払って深夜帰りする夫に嫌気がさして、憂さ晴らし程度の軽い気持ちで出会い系サイトを覗くのが始まりだ。

詐欺師というのは見た目はパッとしなくても、とにかくマメだ。メールや電話を頻繁にしてきたり、相手の趣味に合わせたイベントのチケットをプレゼントしたり。話題づくりにも長けていて、口もうまい。結婚以来、言われたことのない歯の浮くような言葉を浴びせられると悪い気はせず、術中にハマってしまう。「うちの女房に褒める部分はあるのか」と首を傾げる人もいるだろうが、「目がきれいだ」「口元がかわいい」など顔のパーツを褒めるのがテクニックである。ホストクラブ通いがやめられなくなるのも、そうやっていい気分にさせてくれるからだ。

一方、男性の場合は見栄から女の罠にハマることがよくある。キャバクラなどにポケットマネーで行ったとき、女の子に高い酒の注文をねだられても「いいよ、いいよ」と応じてしまう人は、紛れもなく見栄っ張りでだまされやすい。水商売の女性はそういうお客を鋭く見抜く。「この指輪、お客さんに買ってもらったの」と見せつけてライバル心を煽り、ブランドのバッグや宝飾品をたかるのはよくあるパターンだ。

ちなみに、常連客からのプレゼントは彼女たちの収入源でもある。同じブランドバッグを複数のお客に買ってもらい、一つを残してお金に替える。そうすれば、どの相手に対しても売り払ったことはバレない。男のあさはかさにつけいった錬金術というわけである。

男は浮気を自慢する女は墓場まで持っていく

もちろん、浮気という行為自体、作為的ではないにしても夫なり妻なりがだまされていることになる。浮気経験が全くない男性は僅かだろうが、最近は妻の不倫も急増している。結婚後、夫以外で肉体関係を持った相手の数は、平均5~6人とも言われるご時世だ。

妻の依頼で夫の浮気調査をしていたら、同じホテルで夫婦が鉢合わせしたことがあった。依頼してきた妻自身も浮気をしていたのだ。

老舗菓子屋を営む若旦那にふりかかったのは、育てていた子供が他人の子だったという悲劇だ。その若旦那は子供が自分に似ていないことから疑念を抱き、まずは自分が病院で検査を受けた。すると、子供ができない無精子症であることが発覚。同窓会に行った妻がかつてのクラスメートと不倫してできた子だとわかったのである。結局、不倫妻は子供と一緒に家から追い出されたそうだが、この手の話は決して珍しいことではない。

妻は夫の浮気に敏感で夫は妻の浮気に鈍感だと言われるが、その通り。男は浮気をすると、急に携帯電話のロックをかけたり、朝の整髪が念入りになったりと行動に出やすい。友人にぽろっとしゃべって、妻の耳にはいることもある。

それに比べると、女性はガードが固く、浮気がバレにくい。親しい友人にも一切語らず、「墓場まで持っていく」と話す女性は多い。

もっとも、男にもツワモノはいて、浮気相手はなんと7人。彼は同じスーツを7着仕立て、全部の家に置くという工作をしていた。長い出張と偽って愛人宅を渡り歩いても、同じスーツを着て戻れば疑われないからだ。だますほうは相応のお金と知恵と労力を使っているのである。

小原誠
オハラ調査事務所・所長。40年以上の実績を誇る探偵社で、浮気、ネット被害対策など企業や個人の様々な調査に携わる。著書に『探偵裏事件ファイル』(文春文庫)