健康診断で引っかからないための直前対策

私は買い物カゴ・ウォッチャー。カゴの中身を覗けば、その人の食生活や健康状態がおおよそ推測でき、食生活の改善ポイントが見えてきます。

とある日の夜8時。スーパーは、仕事帰りの男性で賑わっていました。30-40代の恰幅のいい男性のカゴの中をちらりと見やれば……。

・厚焼き卵
・ポテトサラダなどのお惣菜
・ビール
・そして赤ワインとお茶のペットボトル

などが入っています。

お茶は「血糖値が気になる人」向けのトクホ(特定保健用食品)のマーク入り。なるほど、食べたいけれど、健康にも注意したいというわけですね(共感します)。

さて、4月は健康診断の季節。今年も「メタボ健診」の日がやってきます。

この男性は健診で引っかからないようにと、血糖値対策のトクホのお茶を選んだのでしょうか。もしかしたら、本当は揚げ物を食べたいのを我慢して厚焼き卵を選び、野菜も食べなきゃと思ってのポテトサラダかもしれませんが、ビールの誘惑には勝てなかった……といった葛藤の結末とも読み取れます。

考えぬいた選択。けれども、実際には、血糖値だけの対策を講じても、血糖値はなかなか下がりにくいものです。栄養士としては、これを期に1日の食生活全体を見直すことをおすすめしたいです。その具体的な方法をお伝えする前に、ここで簡単にメタボ検診直前「特別講習」をやりましょう。

メタボ腹!「内臓脂肪」は実は落ちやすい

近年の研究で、脂肪細胞は体内の糖代謝や脂質代謝に関わる物質(アディポサイトカイン)を分泌していることが明らかになっています。

内臓脂肪が蓄積し、脂肪細胞が肥大すると、この物質の分泌異常が起こり、「中性脂肪値」、「血糖値」、「LDLコレステロール値」、「血圧」が高くなることも確かめられています。メタボ度が高い人ほど、そうした異常のリスクが高まるといわれています。

これらの数字が気になる人は、何よりもまず、内臓脂肪(内臓の周囲に付いた脂肪)を減らすことを考えることが得策なのです。

「体脂肪を減らすのは大変」と感じている人も多いようですが、健康のために減らした方が良いのは体脂肪のうち、内臓脂肪です。

皮下脂肪(つまむことができる、お腹の皮膚の下にある脂肪)を減らすには努力と忍耐が必要ですが、内臓脂肪はたまりやすい反面、落ちやすい特徴があります。

内臓脂肪がたまる最大の原因は、食べ物や飲み物の摂り過ぎにあります。いくらトクホで気を使っても、カロリーオーバーには太刀打ちできません。でも、逆にいうと、摂取量に気を付けるだけで、脂肪は落ちます。

とはいえ、きっと腹八分目になるよう自制心を働かせ続けるのは大変でしょう。それは、よくわかっています。

でも、脂肪を減らし痩せる最高のタイミングは「検診前」です。決断できない人は「いつ、自分はお腹をへこますのか」と自問自答してください。今年も、検診で「要再検査・診察」とジャッジされたり、医師や保健師、管理栄養士などの専門家に説教されたりしますから。

健診直前の「血圧・血糖値対策」

健診前になると、巷の情報に振り回される人が続出します。

「悪玉コレステロール対策にはコレ」
「血糖値対策にはアレ」
「高血圧対策にはソレ」

など。結局、何をどう食べればいいのか分からなくなっている人も多いことでしょう。

困った時には、まず「一汁三菜の和食」と考えてみてください。一汁三菜。ご存知の方も多いでしょうが、ご飯を主食にすえ、汁物と主菜1品、副菜2品のそろった食事のことです。

「一汁三菜の和食」が健康に役立つことは、日本人の寿命の変化を見れば、一目瞭然です(図1)。日本人の平均寿命は戦後、ほぼ一貫して延び続けており、現在は女性が86.83歳(世界1位)、男性80.50歳(世界3位)です(2015年、厚生労働省調査)。

日本人が世界一の長寿に至ったのは1980年前後です。

この時の日本人の食生活は“日本型食生活”と呼ばれ、日本の伝統的な「一汁三菜」の食事に、戦後に入ってきた、肉類や牛乳・乳製品などが加わった食事です。この食事内容が日本人の長寿に大きく貢献したことが広く知られるようになり、海外では「和食は長寿食」として注目されています。

「一汁三菜」汁物で胃は大満足

「一汁三菜の和食」の特長は、脂質がほぼゼロである主食のご飯と、低カロリーの汁物でお腹を満たせることです。ヒトの満腹時の胃の容量は1.2~1.5リットルといわれており、ご飯と汁物で胃を満たせば、カロリーのある“おかず”を食べ過ぎないですみます。

国が豊かになりGNP(国内総生産)が増えると、肉などの動物性食品の摂取量の増加とともにエネルギー摂取量も増加することが報告されています(図2)。

けれども、日本は、この流れに迎合していません。GNPが増えても、動物性食品の摂取量やエネルギー摂取量はあまり増えていないのです。この結果には、主食と汁物を取り入れた一汁三菜の食事構成が大きく貢献していると考えられています。

ところが、最近は残念ながら伝統的な「一汁三菜」の食事構成が崩れ、エネルギーの過剰摂取により引き起こされる生活習慣病が急増しています。内臓脂肪を減らしたいなら、食べる量や質をコントロールしやすい「一汁三菜の和食」を復活させることををおすすめしたいです。

この食事構成を基本にして、さらに健診の時に気がかりな検査項目の改善に役立つ食品を選び、その調理法などを工夫すれば、もうバッチリです。では、健診直前でも“効果”が期待できる具体的なヘルシーメニューをご紹介しましょう。

検査数値の改善!実物のおいしい「一汁三菜」

それでは「一汁三菜の和食」とはどういう食事なのでしょうか。写真は、その一例です。

手作りせず、買った調理済み食品や冷凍野菜だけを使っても、このような“立派な一汁三菜”の食事になります。もちろん、手作りすれば塩分量を減らせるなど、さらにメタボ対策に役立つ食事になること、請け合いです。

▼主食:白飯一膳
【point】子供用茶碗にし、ご飯は約100g
汁物:具だくさん味噌汁(具は100g以上)
【point】“野菜の味噌煮”に見えるほどの野菜や海草、キノコなど
【point】汁は具で見えないくらいの少量に

主菜:サバの味噌煮(野菜、キノコ)
【point】肉、魚、卵、豆腐などのたんぱく質食品を毎食、変える
【point】油を使わない副菜なら、主菜には油脂分が必要 ※副菜に油を使っていれば、主菜には油は使わない

副菜:ほうれん草のお浸し(小鉢1杯分の青菜70~80g)
【point】加熱した野菜で、野菜を多く食べられるようにする
副々菜:煮豆
【point】副菜で使わなかった食品(イモ類、豆類、野菜など)を使用。

ちなみに、この食事で摂れる野菜の量は185gです。これを3食べれば、500g以上の野菜が摂れることになります。冒頭のトクホのお茶が入っていた買い物カゴには、主食のご飯や汁物の具材になりそうな野菜などが入っていませんでした。もし、家にご飯があり、野菜などの具だくさん味噌汁、副菜をもう1品添えて「一汁三菜の和食」で夕食にするなら安心ですが、ビールをカゴに入れているところをみると、ちょっと怪しいですね。

また、この男性が選んだポテトサラダには、マヨネーズの油分が含まれています。厚焼き卵には糖分や焼く時の油分が含まれています。普段なら、この組み合わせをそれほど気にしなくてもいいのですが、“健診前”を意識するなら、厚焼き卵の糖分や油分にも目を光らせましょう。厚焼き卵ではなく、ゆで卵や油を使わずに焼いた目玉焼きにするとよいですね。

そして、ビール。飲みたい気持ちはわかりますが、もし今晩が健診の2日前なら絶対にやめましょう。健診の48時間前に飲酒すると、その影響が検査結果に現れるといわれていますから。