「1人になりたい」。未婚・既婚を問わずネットカフェの女性客はそう語り、漫画に没頭する。だが、「女」を休んでいるうちに、恋愛からも仕事からも遠ざかってしまう――。

なぜネットカフェの女性客が増えているのか?

ネットカフェの女性客が増えている。背景には、ネットカフェの女性向けサービスが進化し、地方からの上京者や終電を逃した人がホテル代わりに利用しやすくなったこともある。

かつてのネットカフェといえば、暗くて閉塞感があって(筆者の中では)モサい男の巣窟というイメージだった。それが今ではカードキーなどがないと入室できない個室や「女性専用エリア」が続々でき、明るくて清潔なエリアで安心して一夜を過ごせる仕様になっている。

さらに、エリア内にはシャワーやパウダールーム、店によってはコインランドリーやゲルマニウム温浴も設置され、まるでカプセルホテルのレディースプラン。ナノケアスチーマーやヘアアイロンが無料レンタルできる店では、待ち合わせ前に身だしなみを整えに来る人もいるそうだ。

この夏、池袋などにネットカフェ内にアルコール専用のドリンクバーが設置された店も登場(1000円60分で20種のアルコールが飲み放題など)。密かに、漫画片手にひとり飲みするOLも少なくないらしい。

「ネットカフェはどうしても女性が入りづらいイメージで、利用客の大半は男性か、併設のダーツやカラオケ利用のカップル客でしたので……」

と、女性集客に力を入れる理由を話すのは「快活CLUB」の広報担当。2013年4月から女性専用エリアを順次導入してきた。「おかげさまで女性専用エリアのある店舗は、男女比が7:3と、女性の割合が3割まで増えました」と喜ぶ。

そんなネットカフェ。安く宿泊するには楽園のような場所だが、非宿泊客、つまり休日の昼間にあえてネットカフェで過ごす女性も当然いる。貴重な休日をネットカフェで過ごす人は、そこで何をしているのだろうか。単に暇なのか、それとも万事を排して行くのか。

というわけで、ある土曜日、入退店が最も多い15時から17時過ぎの2時間余り、「快活CLUB」川口東口駅前店の入口でアンケート調査を行わせてもらった。

 ネットカフェで120%くつろぐ女性の生態

まず、14時半過ぎに入店したA子さん(27歳・独身彼氏なし・PC関連企業の一般事務)を直撃。

「休日は主にゲーム。それか映画鑑賞やショッピングです。最近では『ベイマックス』が面白かったですね~。合コン? 行きません。今日は4~5年ぶりにネットカフェに来ました。実はずっと漫画を読みに来たいと思ってたんです。でも買うとお金がかかる。それで近場のネットカフェを検索していたら、ココが会員登録無料のクーポン券が配布されていたから来ちゃいました。え、女性専用エリア? それは特に考えなかったですね」

話し終えると、A子さんは入店手続のためカウンターへ。スタッフから女性専用エリアの案内も受けたようだが、向かった先はオープン席(男女共用)だった。その後A子さんは左手側にマンガ雑誌を積み上げ、右側にドリンクを置き、記者が退店する1時間半後まで一心不乱に漫画を読み続けていた。

次に、15時過ぎに現れたB子さん(37歳・既婚子ナシ・会社員一般事務)に話を聞いた。

「休日は漫画かゲームが多いですね。一番の趣味は漫画。もう漫画が好きで好きでかれこれ20年くらいネットカフェに通っています。月に20冊は読んでるかな」

ココにも週1ペースで通っているという。

「ココは駅から近いので、夫の帰りが遅い平日の会社帰りや休みの日にサクッと1~2時間読んで帰ります。漫画は別世界に入れるんですよ。その世界観にどっぷり浸かることで気分転換になるから、手っ取り早い娯楽ですね」

そうしてやはり、B子さんも入店手続のあとオープン席へと向かった。A子さんと同様、着席後は石のように動かず、ひたすら前かがみで漫画のページを繰っていた。

なるほど、漫画への思いがここまで強くなければ、休日に、それも1人で訪れないだろう。

さて、カウンター形式のオープン席は次々と埋まる。見ていると、みな一様にもくもくと読み続けている。トイレに行く時間すら惜しそうな鬼気迫る雰囲気だ。隣に男性がいても、一切気にしない。

一方で、女性専用エリアを1周すると、33席中、3席しか利用されていない。うち1席は荷物が置かれているのみだった(受付で、シャワー利用を申し出ている女性がいたが、その人なのか?)。

せっかくの女性専用エリアも、A子さんやB子さんには不要のようだ。何しろオープン席は安い。ココの店舗の場合、オープン席のほうが個室より1時間あたり157円、3時間パックだと500円も安いのだ。考えてみればひとたび漫画に集中すれば他の何も気にならなくなるものだ。どんなに固い椅子だろうが隣に不審な人がいようが。

すっぴんで女を休み、心のデトックス

彼女たちにネットカフェで出会いはあるのか? 出会いは期待しているか? という質問もぶつけてみたが、即答で「NO」だったのも頷ける。自身も漫画好きで、時々プライベートでネットカフェを利用するという広報担当者はこう話す。

「ネットカフェで“出会い”は聞いたことがないですね。ドリンクバーやオープン席で利用客の間で会話が交わされる、というのもまず聞きません。ここにいる間だけは人と接せず1人の時間を楽しみたい、誰にも邪魔されず漫画を読みたいという方が来られると思うんです」

そういえば、先述のB子さんは夫と2人暮らし。家にいると夫に話しかけられるし家事をせざるを得ず、なかなか自分の世界に入り込めないだろう。漫画喫茶常連の私の友人女性(33歳・独身)も「ウチは実家だから、1人になりたい時に駆け込む」と話していたっけ。

そんなことを考えていると、ひょっこり、文化系の香りがする薄化粧の黒髪美女C子さん(25歳・サービス業総合職・彼氏アリ)が入店してきた。磨けばアイドルになりそうな天然美女である。

「今日は彼とスケジュールが合わなかったので来ました。1人の休日は料理をするか、ネットカフェに来ますね。漫画を読んで笑ったり泣いたりすると、スカッとするんです。心のデトックスですね」

Aさん、Bさんは漫画の好みがヤングジャンプなどの青年漫画や歴史漫画だったのに対し、C子さんは『失恋ショコラティエ』(水城せとな作)や『きょうは会社休みます。』(藤村真理)などの少女漫画が好きだというのが新鮮だった。また、「女性専用エリアがある店ではファッション誌や少女漫画を4~5冊読みますね」と話し、女子っぽさが漂ってきた。ただ、C子さんも「1人になりたくて来ているので、出会いなんて考えたこともない」という点では一致していた。

話を聞いた3人を含め、女性専用エリアにいた他の利用客を見ていると、ファッションや雰囲気から漂う女子っぽさに差はあれど、根底には共通して「ここに来るときくらいは人目を気にせず自分の世界に入りたい」という思いがあるようだ。

女子力・恋愛運低下で、結婚は遠のく?

実際、女性専用エリアで見かけたある女性は横になって片手で漫画、片手でポテチを食べ、完全に寛いでいた。私も利用するなら女性専用エリアに入り、顔はすっぴんで無表情、服は10年以上前に買った毛玉だらけの服で過ごすだろう。当然、そんな姿で誰にも出会いたくない。

平日働く女性にとって、休日昼間のネットカフェは、女を休める楽園スポットだ。ということは、女子力が一時的に激落ちするスポットであり、この楽園に味をしめたら最後、合コンも女子会も婚活も何もかもが億劫になるかもしれない。すると必然的に恋愛運は低下し、誰とも口を利かない気楽さに慣れれば結婚もできず将来は孤独死……。そして安い娯楽だけで満足できるようになれば働く意欲も低下し人生は下り坂? 一瞬、そんな想像が頭をよぎった。

孤独を求めた結果、孤独死予備軍となってはたまったものではない。と思いつつも、何もかもを忘れてココで1日過ごせたら……と夢想する筆者であった。