エンディングノートに法的拘束力はない!

「エンディングノート」をご存知でしょうか?

明確な定義はないのですが、自分の終末期や亡くなった後についての希望、遺族に伝えておきたいことを書いておくノートのことを総称し、近年たくさんの種類が出回っています。

2011年に映画「エンディングノート」が公開されたことや、2012年に「終活」という言葉が、新語・流行語大賞でトップテンに選出されたこともあって、ここ5年間ほどの間で、急速にエンディングノートが広まってきています。

エンディングノートは元来、残された家族が困らないようにするために書いておくためのものです。

意思決定能力がなくなったり、亡くなってしまうと、故人にどのような希望があったのか、もう聞くことができません。そうなると残された家族に、本当はどのように考えていたのだろうと悩ませてしまったり、必要な情報がどこにあるか探させたりと、気苦労をかけることがあります。

「介護が必要になった場合にどのような施設を希望するか」「延命治療はするのか、しないのか」「どのような葬儀を希望するか」「葬儀には誰を呼んで欲しいか」「お墓はどうしたいのか」などをあらかじめ分かるように記しておき、存命中や死後の家族の負担をできるだけ減らそうとするのが、エンディングノートのそもそもの役割です。

ここで勘違いしてはならないのは、エンディングノートに法的拘束力は一切ないということ。

相続について、特定の親族を優遇するようにとエンディングノートに書いても、法的拘束力はありません。

このことを知らないと、トラブルのもとになります。

トラブル回避には遺言書の検討を

たとえば、父親が亡くなり、自宅は長男が相続するようにとエンディングノートに書いてあったとします。当然、長男は、父親の希望とおりに自宅は自分が相続したいと主張してくるでしょう。しかし、遺産がその自宅しかなかった場合、次男はそれでは納得できないかもしれません。

次男が、きちんと平等に分けるべきだと主張してくれば、エンディングノートに書いてあったとしても、法的な拘束力はないので、「長男に自宅を相続する」ということは、実現できません。

長男としては、「父親の意思を次男のわがままでかなえることができなかった」と次男に対する悪感情が生まれますし、次男としては、自分は父親から愛されていなかったのではないかと悩んでしまうかもしれません。

エンディングノートに相続についての希望を書いておいたことによって、かえって兄弟の仲を裂いてしまい、相続紛争を助長することもあるのです。

エンディングノートは、あくまで家族の負担を軽減するためのものです。自分の希望をかなえて欲しい、相続トラブルを防ぎたいというのであれば、エンディングノートではなく、遺言を書いておく必要があります。

ただ、遺言は書いておけばよいというものではなく、中身が練られていないと、遺言があっても相続人がもめてしまうこともあります。

そのためには、遺言を作成するにあたっては、きちんとした専門家に相談をするようことをお薦めします。

相続トラブルを防ぐために遺言を作ろうと思ったら、ぜひ、弁護士に相談してください。遺言作成に関するアドバイスは、司法書士や税理士、行政書士、さらには信託銀行なども行っています。

しかし、実際に相続トラブルが発生した際、それを解決できるのは弁護士だけです。ということは、実際にどのようにして相続トラブルが発生して、それがどのように解決しているのかを身をもって知っているのは弁護士だけということになります。

エンディングノートを書いたら、つぎはぜひ遺言の作成も検討してみてはいかがでしょうか。

武内優宏(たけうち・ゆうこう)●弁護士。1980年、東京都生まれ。2007年弁護士登録後、2011年に法律事務所アルシエン開設。遺言・相続に関する案件や葬儀社の法律顧問業務など、「終活」に関わる法的問題を多く扱う。オフィシャルサイト http://www.alcien.jp/