就活本番! 企業が求める6つの能力

いよいよ就活本番だ。すでに始まっているところもあるが、大手製造業などはこれから本格的に始まる。有名企業の採用は、売り手市場とは言いながら学生に対する視線は依然と厳しく、ハードルは高い。出身大学は見るにしても、同じ大学から多数を採るわけではなく、逆に大学内で選別される。加えてこれまで採用してこなかった大学にも触手を伸ばし、優秀な人材を探しだそうとする傾向も強まっている。

筆者はリーマンショック以降、100社以上の大手企業を対象に、新卒人材に求める資質・能力とは何かを取材してきたが、基本的には不況期だろうが、好況期だろうが変わっていない。企業が求める人材の能力は何か。一部の技術系学生を除き、日本企業の多くはポテンシャル採用だ。

では各社に共通するポテンシャルとは何か。大別すると以下の6つだ。

(1)チャレンジ精神(変革する力、バイタリティ)
(2)チームワーク力(共感力、チーム志向)
(3)コミュニケーション力(論理的思考、伝える力)
(4)リーダーシップ力(周囲を巻き込む力、主導力)
(5)主体的行動力(自律的アクティビィティ、やりぬく力)
(6)グローバル素養(異文化受容力、語学力)

6つの要件は共通するといっても、企業・業種によって比重の置き方も違えば、同じ言葉でも込められている意味が微妙に違う。以下、業界別の人事担当者にその中身を解説してもらう。

チャレンジ精神(変革力)の意味については、「結果を恐れず信念を持って仕事に取り組める人」(化粧品)であり、「強い思いと迅速な行動で変化に挑む人」(石油)でもある。テレビ局の場合は「何事にも臆することのない器量、度胸、肝が据わった“胆力”のある人」だ。

もちろんチャレンジ精神はそれだけにとどまらない。ホテル業の場合は「既存の伝統や価値観を所与のものとせず、顧客の嗜好やニーズを先取りし、常に変革を志向する人材」。また、テレビ局では「既存の常識や概念にとらわれていては番組を作れない。奇抜な発想でも信じたら全力でやり抜く“突破力”のある人」が求められている。過去の前例や経験値にとらわれない人材を意味している。

そして変革を実現するにはどうするか。建設業の人事担当者は「多角的な視点を持ち、直感ではなくしっかりとした情報収集に基づいて自ら導き出した考えを周囲に納得させ、行動できる人」と言う。

大家族で育った人材が注目される理由

チームワーク力と言えば、協調性や自分の主張を抑制し、多数に同調するイメージを想像しがちであるがそうではない。携帯電話会社の人事担当者は「単なる迎合ではなく、チームの中で自分の果たすべき役割を持ち、仲間と共に目的を達成できる人」だと言う。あるいは「個々人が高度の専門性を持つプロ集団の一員としての自覚を持っている」(建設)といった積極的な意味合いで使っているのが特徴だ。さらに自動車会社の人事担当者は「周囲の話に耳を傾け、積極的に学び取ろうとする意欲を持った人」だ。

コミュニケーション力は学生に限らず、今では社会人全体に欠けている能力の一つであるが、その意味や使われ方は企業によって違う。鉄道会社の人事担当者は「愛想が良いとか人あたりが良いというだけではダメだ。相手にどう伝えるのか、論理的思考力に裏打ちされた説明能力のある人」と言う。顧客先との打合せや社内プロジェクトのメンバーとの意思疎通が不可欠な情報通信業の場合は「単なるメッセンジャーではこの仕事は務まらない。第一人称の立場で自分はどうしたいのか、自律性を持って顧客や社内の人間と会話や議論ができる人」といった主体性を重視する。

同じように自社のビジネス的視点からチェックしている企業も多い。たとえば旅行業の人事担当者は「自分が信じる価値を人脈・ネットワークなどあらゆる手段を使って、その価値を認識してもらうようにする人かどうか」を見ているという。

また、別の旅行業の人事担当者は「旅行業はあらゆる世代がお客様だ。世代を超えて若い人から老人まで相手の立場を尊重しながら会話ができる人なのかどうかをチェックしている。そのために核家族で育ったのか、あるいは小さい頃からおじいちゃん、おばあちゃん、親戚の人に囲まれて育ったのかを確認している。大家族で育った人のほうがどんな人に対しても自然体で対応できるし、仕事もできる」と指摘する。

ホテル業の人事担当者は「ホスピタリティ(心のこもったおもてなしの心)を備えた人」を重視する。また、そのチェック手段として「企業説明会の受け付け時の対応や歩き方、面接時の控え室でのしぐさも見ている」と言う。

また、医師に対して営業活動を行うMR(医薬情報担当者)職におけるコミュニケーション力は「伝える力」に重点を置いている。製薬業の人事担当者は「面接では派手なパフォーマンスより、質問に的確に答え、必要な情報を確実に伝えることができるかどうかを見ている」と語る。

幹部人材に必要なリーダーシップ

リーダーシップ力は将来の経営を担う幹部人材候補である総合職に対して昔も今も求められている能力だ。入社後は人事異動によってあらゆる職種を経験させながら国内にとどまらず、海外の拠点などの現場でマネジメントができる人材の育成が行われてきた。

しかし、近年は現場の管理者の育成に加えて、高度化・複雑化するビジネスに対応する高い専門性を持つ知識労働者の育成も重要な課題になっている。リーダーシップの意味合いも単に部下を統率する力だけではない。総合商社の人事担当者は「仕事柄、様々な事業投資先のパートナーと組んで仕事をするケースが多い。その中で相手の信頼を勝ち得て、事業を切り開く能力がリーダーシップだ」と言う。取引先も含めた関係性の中での力の発揮が求められている。

自動車会社の場合も部品会社など様々な取引先と組んで仕事をすることが多い。人事担当者はリーダーシップ力のある人を「他者の価値観を尊重し、謙虚に他人の意見に耳を傾け、周囲を巻き込みながら仕事を進めていける人」だと言う。建設業の場合も下請け、孫請けなど多くの企業と連携しながら仕事をする。的確な情報に基づいた判断力が問われる。人事担当者は「他人から聞いた情報はあくまで他人の情報であり、決して鵜呑みにしてはいけない。自分なりに分析し、“他人の情報を自分の情報にする”作業ができ、最適解に導く力を持つ人」がリーダーと定義し、より高いレベルの能力を求める。

主体的行動力とは、チャレンジ精神と並んでビジネスモデルの変革期に直面する企業にとって重視する要素の一つだ。情報システム会社の場合、企業のシステム構築作業の過程で無理難題な課題解決を迫られることも少なくない。人事担当者は「困難に遭遇しても決して逃げない、自ら飛び込んでなんとか解決してやろうという意気込みを持った人」だという。

お堅いイメージの銀行業界でも主体的行動力は必要だ。大手メガバンクの人事担当者は「お客様のニーズや要望を聞き取り、言うことが正しいと確信したら、たとえ上司が異論を挟んでも、自分が正しいと思う顧客の意見を貫ける人かどうかを見ている」と語る。

総合商社の場合は相手先とのトラブルはつきもの。その時に相手に責任をなすりつけることがあってはならない。人事担当者は「何かトラブルが発生しても、すべてを自分の責任ととらえ、問題を解決するには自分に何ができるのかを突き詰めて考えて行動する自責型人材を求めている」と語る。また、やみくもに行動するだけではいけない。百貨店の人事担当者は「何をすればよいのか自らじっくりと考える思考力を持ち、それを実現する行動力のバランスを兼ね備えた人がうちには向いている」という。

さらに主体的行動力を高めるには失敗を前向きにとらえる人だと石油業の人事担当者は言う。「常に前向きに行動し、失敗したら解決するために勉強すること。生涯学ぶ姿勢を持ち続けられる人がほしい」。

ビジネスで求められる能力は違う

グローバル素養は今、企業が最も求めている要素の一つかもしれない。一言で言えば海外で活躍してくれる人材だが、その内容は業種や職種によっても異なるし、企業がどのような活躍シーンを描いているかでも違う。

総合商社の人事担当者は「よく自分はブラジルのビジネスなら誰にも負けないし、人脈も豊富だと自慢する人がいるが、それは昔活躍した人。今はブラジルやアメリカ、アジアと国境を越えてビジネスがつながっている。どんな国・地域に行っても商談をまとめてくるタフネゴシエイターが求められている」と言う。

では、海外で活躍するタフネゴシエイターの素養とは何だろうか。石油業界の人事担当者は「語学力や海外経験があるから活躍できるとは限らない。実際にTOEICの点数が500点しかない駐在員がアメリカにいるが、なぜか彼は大きな商談を次々にまとめている。タフネゴシエイターの素養として、物怖じしないコミュニケーション力とどこにでも飛び込んでいける度胸だと思う。面接でもその点を重視している」と語る。

一方、現地に生産・販売拠点を構える製造業などの場合は、現地の社員をマネジメントできるリーダー人材候補を採用したいという思いがあるようだ。海外で活躍するリーダー人材候補を採用している化粧品会社の人事担当者は、リーダーシップ力に加えて「TOEICなどの英語力の点数が高くなくても、様々な国・人種の考え方を受け入れ、融合していけるセンスやスキルを持つ人が欲しい。そのため日本人でも、海外の大学に留学していた人、幼少時代から海外に住んでいた人、日本の大学で留学生の受入係をやっていたという経験などいろんな異文化体験の中身を聞いて見極めている」と語る。

もちろん語学力があるにこしたことはないが、それ以上に求められるのは現地に行っても仕事ができるかどうかだ。エンジニアリング会社の人事担当者は「TOEICが800点以上で、海外ならどこにでも行きますという学生が多いが、ふだんの生活ぶりを聞くと、研究室以外にあまり外に出たことがない学生も多い。本当にアジアの山奥や中東に行って相手と交渉するなどハードワークに耐えられるのか。行ってもすぐにメンタル不調になるのではないかと思うタイプは極力避けている」と語る。

企業が求めるポテンシャルは共通する要素は多いが、業種・企業の社風やビジネスによって求める能力は微妙に違うものだ。その点をしっかりと研究することをお勧めしたい。