前回(前編 http://president.jp/articles/-/13998 を参照)、営業パーソンの成果は「外見力」に大きく左右されることが自明であることはわかった。だが具体的にどう対処していけばいいのだろうか。世界で10人、アジアでは2人しかいない国際イメージコンサルタント・イメージマスター(AICI CIM)が、教える「外見のツボ」とは。

前回挙げた、営業パーソンに求められるABCをおさらいしましょう。具体的にはどうすればいいのか、概略を述べます。

A:Appearance(=プロフェッショナルなアピアランス)
B:Behavior(=洗練された立ち居振る舞い、表情、仕草)
C:Communication(=伝わる話し方)

服装を戦略的にする

Appearanceとは見た目、つまり服装と、好感度を左右する身だしなみです。「身だしなみの3原則」は、「清潔」であること。身なりに汚れが無く、ヘアスタイルから靴先まで「清潔感」が感じられるかどうか。次に「上品」。着こなし、服装のコーディネーションに、自社にふさわしい品位があるか。そして華美にならず、ビジネスパーソンにふさわしく「控え目」であることです。

ビジネスでは職種やシーンによりふさわしい服装があります。相手に受け入れられる、といったほうがいいかもしれません。作業現場なら、働きやすいユニフォーム、内勤であれば、少しカジュアルなコーディネートも許されるでしょう。しかし営業パーソンは、そうはいきません。「あなた、いいね、話を聞こう」と第一の壁をクリアするには、服装を戦略的に捉え、自分を最大限にアピールし、相手への敬意をも表現するビジネスフォーマル・スタイルを基本とすべきです。

濃紺、またはチャコールグレーのジャストフィットのスーツ、白か淡いブルーのシャツ、プレゼンテーションであれば、ネクタイは攻めのイメージである赤のストライプ、クロージングでは、ブルー地に落ち着いた小紋柄で品格を表現していきます。もしものお詫びなら、誠実を表す濃紺の無地などがふさわしいでしょう。

そして、シャツの第一ボタンを必ずかけること。細部にスキがあると、「この人は詰めが甘そうだ、大きな仕事はまかせられないな」と思われてしまいますから。相手に与える印象を考え抜き、適切に選択してコーディネーションすることにより、受け入れられる間口は大きく広がり、切り開いたビジネスチャンスを前に、相手がどんなレベルであっても気後れしないで済みます。

女性の場合も同じ、色こそ男性の濃紺とグレーに、黒、キャメル、ベージュ、オフホワイトなどが加わりますが、性差のないスーツスタイルが基本です。社員研修で企業に伺うと、プライベートでのオシャレをそのまま持ち込んでいたり、逆に普段着のままのラフな服装だったりという女性が多いのが気になっていました。それが、女性のビジネススタイルが確立していない、お手本がなかったからだと気づき、女性の服装術の本を出版するきっかけとなりました。

さて、「気後れ」といえば、こんな事例があります。地方で長年製造業を営む2代目社長。その会社は、微細なバネとネジをつくる技術を持ち、ほぼオンリーワンとして業績も順調に伸びていました。その実績を持ってヨーロッパの顧客を開発しようといさんで出かけたときのこと。

しかしいざ面談となったとき、握手の手が出なかった、というのです。詳しく聞いてみると、広く豪華なオフィス、完璧に整えられた調度品、そしてそこに立っていたのは、見るからに高級そうなスーツを見事なコーディネーションで着こなし、落ち着き払った紳士だったのです。それに対し、外見にさほど関心のなかった自分の姿を思い、気後れしてしまった、というのです。これでは始めから勝負あり。対等な商談などできるわけがありません。

もちろんその社長は直ぐさま当社を訪れ、服装やヘアスタイルを一新し、すべてのトレーニングを終えて見事に変身しました。さらには、オフィスや工場まで、イタリアのビラを思わせる建物に変え、外国からのお客様をいつでも自信を持って迎えられるようにしたのです。

表情、仕草に語らせる

気後れしていた社長を、世界を飛びまわるトップ営業マンに変えたのは、プロからのアドバイスを受け、トレーニングを続けたという「自信」でした。自分に自信が持てるようになると、まず姿勢が変わります。背筋は真っすぐに伸び、下向き加減の顔は明るく前を向き、目が輝きます。人と会うのが楽しみになります。面談の際も、表情が豊かになり、自然に身振り手振りが加わり、好感度が上がって良い第一印象を与えることができます。もちろん、挨拶や仕草、ビジネスマナーも洗練されていなくてはなりません。これらの要素が、Behaviorです。

面談相手の営業パーソンが、姿勢が悪く頼りない印象、笑顔もなく、暗くて無表情であったら、そのような人に重要な仕事を任せようとはだれも思わないでしょう。自分のメッセージと情熱は、言葉の前に全身で表現しなければ伝わりません。

ポイントは、「元」のマネジメントです。「目は心の鏡」といわれるほど、多くを語ります。表情に自信のない人は、目力をアップして目元をパワーアップしてください。トレーニングは簡単。目を一度呼吸させる感じで大きく開け、自然に戻す。これを何回か繰り返すことで、目に光が集まり、キラキラと輝いてきます。

次に、口元です。口角(口の両端)が下がっていると、相手に傲慢な印象を与え、不満を抱いているかのようなネガティブなイメージを与えてしまいます。横一文字に結んでいると、我慢、必死など余裕のないメッセージになってしまいます。表情を良くするために、軽く口角を引き上げておくことを憶えておいてください。

とどめは、スマイルライン。ニッ!と笑い、上の前歯から犬歯までの6本が見えるこのラインを見せて話すことで、表情が明るく、相手に爽やかさを伝え、好感度がグンとアップします。ビジネスの世界で交渉が成立するか否かは、面と向かってならわずか2~4分と言われています(アリゾナ州立大学ジャネット・G・エルシー教授)。正しい姿勢、洗練されたマナー、そしてスマイルラインで、この数分間を制してください。

言葉に感情を乗せる

外見力を構成するもうひとつは、Communicationです。第一印象は、声の調子、話し方にも大きく左右されます。人は、多かれ少なかれ、話し方にクセを持っています。声がくぐもる人、母音の発音があいまいな人、「あー」とか「えーと」を多用する人、結論が遅く文脈がはっきりしない人、などなどです。さらには、言いたいことだけ一方的に話す人もいます。これでは、キャッチボールとしてのコミュニケーションは成立しません。

私は記者発表を控えた人、大きなプレゼンテーションに臨む人、講演をする人などに対し、滑舌を良くする、クセの原因を見つけて解決し、スピーチの文脈を整えるなど「伝わる話し方」のトレーニングも多く行なっています。プレゼンテーションや商談では、相手に意図が伝わり、共感されてこそ成功といえます。伝えたい内容に合わせて、話し方を変化させる。

とくに効果的なのは、「間」。ポイントを投げかけたらひと呼吸置いて相手の様子を計り、心理を読み取って次の言葉を適切に選択するための「間」。そして強調すべきところは強く、ゆっくりと話す。強弱、抑揚、速さ。言葉に感情が乗らない「無表情な話し方」では、相手の心には届きません。

3分間のリスクマネジメント

いよいよ、今日は重要な面談の日。うまくいくか否かは、出かける前の3分間で決まります。朝、鏡の自分と向き合い、身だしなみの3原則「清潔」「上品」「控え目」を思い出してチェックしてください。

ヘアスタイルはまとまっているか、スーツにしわはないか、シャツや靴下などカラーコーディネーションは適切か。その上で、その日会う人、商談相手を思い浮かべながら、目的に合わせてネクタイを選ぶ。この3分間が、一日をポジティブに過ごすための有効なリスクマネジメントになるのです。

得意先に向かう道。背筋がピンと伸び、さっそうと大股で歩く自分に気づくでしょう。自分の戦略的な服装にスキはないという自信は、得意先には信頼感として映り、スキのない身だしなみは、スキのない仕事ぶりを伝えてくれます。人から、自分はどう見えるか。自分目線から他人目線へと変え、Appearance、Behavior、CommunicationのABCをクリアすれば、あなたはもうすっかり「最強の営業パーソン」です。