会社の「顔」として、営業パーソンが顧客に与えるイメージの影響は計り知れない。世界で10人、アジアでは2人しかいない国際イメージコンサルタント・イメージマスター(AICI CIM)である著者が、顧客と接する人間であれば知っておかなければならない、服装に留まらないスタイル・所作など「外見のツボ」を伝授する。

営業パーソンに求められるものは、何でしょう。以下に3つ挙げてみました。

「マーケティングマン」になる

営業のプロフェッショナルである私の知人は、(ピーター・ドラッカーの言葉を借りるまでもなく)こういいます。「営業とは企業活動そのものである」と。ところが、企業の組織が細分化され、営業=セールスだけをしていればいいんだ、作ったものを売ってくるのが仕事だ、となったとき、もちろんすべてではありませんが、営業はたちまちプレッシャーの多い、靴をすり減らし、汗をかきながら訪問を繰り返して「ものを売り込む」、というイメージになってしまいます。

マーケティングとは、簡単にいうと、物が売れる仕組みをつくり、手順を追って実行していくことです。営業とは、そのプロセスを分解していくと、与えられた商材(もの、こと)をそのバックグラウンドを含めて理解し、市場を俯瞰し、訪問する顧客について事前にできるだけ調べ、ライバルとの優劣の分析からセールスポイントを導き出してキラートークを決め、準備万端で出かける。そして、相手の反応を見ながら傾聴と説得、相づちと間を効果的に活用しながら臨機に応酬話法をし、スムーズにクロージングに持って行く、というもの。

つまり営業とは、それ自体、マーケティングの要素をすべて持っているということです。そう考えることができれば、そしてそれが実行できれば、営業活動は汗の匂いから開放され、誇りと、自分自身の知恵と創意に満ちたやりがいのあるものとなるでしょう。

「選ばれる人」になる

しかしながら、以上のことができたとして、まだ足らないものがひとつあります。それを発信する営業パーソンのアピアランスが、その中身に見合わないものであったとしたら、どうでしょう。ここに、第一の壁があります。

営業パーソンが、ほぼ同じタイミングで2名、しかも飛び込みでやってきたとします。販売代理店として扱っている商材は同じ○○社のファックスマシーン。もちろん、スペックに差はありません。1人は、よれよれになったスーツ、背中を丸めた姿勢、伏し目がちでうつろなまなざし、ヘアスタイルの手入れをした様子もなく、なによりも、自己紹介、あいさつもたどたどしい。これをD君としましょう。

もう1人は、決して高級とはいえないが、身体にスリムにフィットした手入れの行き届いたスーツ姿。ズボンのセンタープリーツもシャープだ。すっくと真っすぐに立ち、顔を上げ、緊張感のなかにも柔らかいスマイルをたたえた明るい表情。自己紹介とあいさつもきちんとしている。これをE君としましょう。

もしあなたが接客したとしたら、どちらを「選び」、話を聞いてみよう、と思いますか。もちろん、E君ですよね。あなたは、D君に対して、こう思います。「なんだか足を棒にして歩き回って、それでどこもうまくいかず、疲れきって当社にきたのだな。そういう人の話を聞いても時間のムダにちがいないから、帰ってもらおう」。

一方、E君に対しては、「おお! なかなかの好青年、いいじゃないか。さっそうとして爽やか、あいさつも明快。目に力もある。きっと何か良い提案をしてくれるにちがいない」と。さらにいえば、この面談者は、E君を通して、「こういう社員を育成している会社なら、信頼できるにちがいない」とも。もちろん、そのときニーズがなくても、ニーズが生まれたとき、まず彼に声をかけよう、名刺はとっておいて……」と、記憶にとどめることになるはずです。E君は、外見力で「選ばれる人」になり、第一の壁をクリアしたのです。

「付加価値のある人」になる

そして、いよいよプレゼンテーションのシーン。「入りたまえ、話を聞こうじゃないか」と招き入れられ、面談に向かうE君。ここに、第二の壁があります。めりはりのある自己紹介、正確なお辞儀、名刺交換、時間をいただいたことのお礼、つまり、きちんとしたビジネスマナーができるかどうか、マナーは身を助ける、といいます。清潔な身だしなみとともに、マナーは自分自身の知性の表現であり、相手への敬意を表すことでもあります。そして、相手の表情や仕草を観察しながら、伝わる話し方をすること。時折笑顔や相づち、感謝の言葉などを折りまぜ、伝えるべきことを分りやすく話して行く。

そうして、相手は思うのです。「話はムダがなく論理的に整理され、わかりやすい。押し引きの呼吸も見事で、提案の良さも伝わってきた。何よりも、人柄に惚れた。僕の第一印象はあやまりではなかったな。よし、導入するなら彼にまかせよう」。

このとき、E君は第二の壁もクリアしたのです。商材は他社製品とさして変わりません。成約意志決定の決め手になったのが、人、つまり営業パーソンの印象です。商材に差別化が困難になったいま、営業パーソンこそ、自分の持てるポテンシャルを最大限に「見える化」して、自ら商材の付加価値となるべきなのです。

ポテンシャルを「見える化」するABCとは

ここで、実際にD君からE君へと変化した事例をご紹介しましょう。

企業からのご依頼が多い私のところには、個人で、ポケットマネーをはたいてコンサルティングを受けにくる方も多くいます。きっかけは、さまざまです。新規開拓のリーダーになったことで、それにふさわしく、自分を戦略的に磨きたい、というポジティブなケースもあれば、成績を挙げないと減俸されるという予告を受けてやってくるネガティブなケースもあります。たとえば、こんなビジネスパーソンです。

外資系ITメーカー、コンサル営業のYさんは、上司に促され、当社に個人コンサルに訪れました。事前の入手データからは30代後半なのに、会ってみると20代の若者にも見える彼ははなはだ信頼感に欠け、クライアントである中小企業の経営者に「君のような若い人にいわれてもねぇ……」となかなか大きな契約が取れず悩んでいました。当社を訪れたのは、上司から「その幼く見える外見を何とかしないと年収を半分にするぞ」と言い渡されたからです。

そこでまず、外見力の基本的なファクターである服装を、職種と知性を表現するスーツに変え、相手に合わせたシャツとネクタイのコーディネーションをアドバイスしました。さらに何度か通っていただき、表情づくり、姿勢、動作、立ち居振る舞い、ビジネスマナーのブラッシュアップ、話し方の基本と好印象を与える効果的なプレゼンテーションをトレーニングしていきました。

ヘアスタイルもさわやかに決まり、ひととおりのコンサルテーションを終えた頃、表情はいきいきと、目には輝きが宿り、背筋はピンと伸び、歩き方も自信に満ち……。彼は、すっかり「できるE君」に変わっていました。

その後商談に臨むと、効果はてきめん。以前は決断を渋っていた経営者に同じ事を言っても、「確かに、あなたの言うとおりだね」と変化し、大きな契約もスムーズに決まり始めたのです。やがて、会社との契約更新日。彼の年収は、半分になるどころか何と数百万円も上がっていました。

D君を、できるE君に変えたのは、外見力を構成する次の3つです。

A:Appearance(=プロフェッショナルなアピアランス)
B:Behavior(=洗練された立ち居振る舞い、表情、仕草)
C:Communication(=伝わる話し方)

私がつねに提唱しているのは、中身と外見に一貫性を持たせる、ということです。その人の持つポテンシャルを最大限に引き出し、それを、服装で、立ち居振る舞いで、マナーで、話し方で、目に見える形で表現して行く。それらを統括したものが、自分を語る力、外見力なのです。第一の壁をクリアし、第二の壁を超えるための外見力。それは、ことに営業にたずさわる人に必須のコミュニケーションスキルといえます。中身を磨き、効果的に表現するためのABC。では、どうすればいいのか。次に、具体的なノウハウをお話ししていきましょう。