ビジネスの場面では、作家のような文章力はいらない。要点をまとめる論理力。数字を駆使した説得力。読み手の興味をかきたてるコピーライター的センス……。達人によるビフォーアフターで、「通る文書」のつくり方を身につけよう。

マラソン大会に出場するときは、事前のトレーニングが欠かせません。ところが企画書を書けと言われるとすぐ机に向かってしまう人が多い。これは練習しないまま大会に出場してしまうのと同じです。

企画とはいわば記憶の複合で、頭の中に散らばっている「これは面白い」という気づきのピースが2つ以上くっついて生まれます。日々、人と違う視点で物事を見て、「気づき」を重ねる努力をしなくては生まれません。

ただし、誰もが見ている部分をくっつけても、相手に「そんなの俺だって思いつくよ」と言われるのがオチ。一番重要なのは「何でこんなことを思いついたんだろう?」と思わせることです。普段道を歩いていても、人と違う視点で物事を見るクセをつけ、それらを記憶しておいて必要なときに結合させる。「出どころのわからない企画」と僕は呼んでいますが、実は出どころはちゃんとあります。

ただ奇をてらった企画書がいいわけではありません。大切なのは与えられた課題の枠内の中で「振り幅」をできるだけ大きくすること。「ありそうでなかった」企画を出すことが重要なのです。そこで市場調査をしたり、相手にヒアリングをして本当に望んでいる課題について考えます。その枠の中で、他が思いつかない解決策を盛り込んだ企画なら通るでしょう。

そして、ここまでのプロセスにしっかり取り組み、頭の中で内容が9割方仕上がっている状態にしてから机で紙に落とし込みます。書くときのポイントは、自己満足ではなく実際に読むクライアントのおじさんでも「いいね」と言わせるわかりやすさ。昨年、「イクメンオブザイヤー」の企画をプロデュースしたのですが、男の育児参加という意図がまずは説明いらずで伝わるはずです。一言で心に響くタイトルを考え、その後に相手が抱えている課題に対する解決策を個条書きで示すのが基本です。

昔、僕の師匠であるテリー伊藤さんから「どうかな」と見せられた企画のタイトルが「高校生制服対抗ダンス甲子園」でした。最初からタイトルが完成していました。これだけで内容は一目瞭然です。結果、一大ブームになり、企画とタイトルの深さを強く感じました。なお、例に挙げた「部下上等」については、いま書籍実現を考えています(笑)。

プロデューサー おちまさと氏が添削!

【×BEFORE】

(1)タイトルは企画で最も大切な「キーワード」。最終的に変わるとしても、読み手を考えさせたり、内容を説明するようなものはNG。一目で内容がわかるものにしたい。

(2)自分のアイデアが、読み手にわかりやすいように説明されているだろうか。「具体策を提供する」とあるが、何のための具体策なのか、踏み込みが一歩足らない周知の情報を入れてもインパクトに欠ける。

(3)説得材料としてデータを示すのはよい。しかし、ターゲットにする層にマッチしたものでないと意味がない。

(4)概略をダラダラと説明しても読み飛ばされるだけ。簡潔、明瞭に。

(5)根拠のない売り上げ目標よりも、競合との比較情報がほしいところ。

【○AFTER】

(1)ありそうでなかったタイトルに全力を――「ヒラ社員の部下のままでいたい」ということをストレートに表現する。そうすることで「ありそうでなかった」「やられた」という印象を与え、読み手の心を引き込めるようになった。

(2)消費者の悩みに解決策を出せ――想定するターゲットにコンテンツと解決策を出せて、はじめてビジネスが成立する。また「何が悪いのか」といった刺さる言葉で「驚き」を持たせるようになっている。

(3)意外なデータで説得力を増す――意外な客観データを提供することで、読み手は「この企画にのってみよう」という意識になる。企画書を書く目的は、自分を有利にすることなのだ。

(4)内容はキャッチーな個条書きに――単に内容を整理したものでなく、読み手の心を掴む目次をたてる。書籍以外の企画書でも具体的な内容を個条書きに。

(5)一貫した論理構成で――他の競合する可能性のある商品と比べることで、ありそうでなかった企画であることを一貫して主張し、マーケットの確実性も強調する。

プロデューサー おちまさと
東京都生まれ。人気テレビ番組やウェブサイトの企画・プロデュースをはじめ、ファッションプロジェクトや企業ブランディングも手がけるオールラウンドプロデューサーとして活躍中。『「気づく」技術』など著書も多数ある。