ヒステリーは鎮火できない

話をしているうちに感情が高ぶり涙を流す、取り乱す。私的な場面だけではなく、会社で営業の報告を受けているようなときでも、女性の部下が突如変貌してしまうことは間々あります。

一方、男性は何か問題が起きると、それを解決しようとする習性を持っています。女性がヒステリーを起こしたときも、まず「これは異常な事態だから解決しなければいけない」と考えてしまう。

「どうした。なに怒ってるの?」
「まあ、落ち着いて」

こんなふうに声をかけて、逆にますます興奮させてしまった、という苦い経験をお持ちの方は多いと思います。まず覚えておいていただきたいのは、ヒステリーは解決できないということです。

女性はそのことをよく心得ていて、たとえば女性同士の付き合いのなかでは、相手が怒っていたり落ち込んでいたりするときは、必ず「そうよね」と相槌を打ち、相手の感情を肯定するところから会話を始めます。必ずしも言い分の全部に同意できないとしても、こういうときはまず「共感を示すこと」が最低限のマナーだと知っているからです。

怒りや悲しみで感情的になっているときは、相手にも同じ状態になってほしい、共感してほしいというのが女性の本音です。にもかかわらず、辛い思いに寄り添うでもなく、上から目線で「泣くなよ」とたしなめるとか、逃げ腰になっておろおろするのは、女性の目から見てどちらもひどい対応です。とくに上から目線で、冷静に意見するのはやめたほうがいいでしょう。

本人だって、自分が取り乱していることくらい自覚しています。少なくともエレガントな状態とは言い難い。そんな姿を他人に指摘されるほど屈辱的なことはありません。恥ずかしい話ですが、私自身もかつて、女性が怒っているそのときに、怒りのメカニズムを冷静に分析してみせて大変な目に遭わされたことがありました。

十分に女性心理をわきまえた男性だと、怒りを爆発させる女性をありのまま受け入れ、「君がそう感じるのも無理はない」「そうだね、気持ちはよくわかる」などと、全面的に同調し共感を示します。ただ、それができる男性は一握り。普通の人は、このレベルを目指す必要はありません。

最低限、気を付けてほしいのは「女性の感情状態にはコメントしない」ということです。コメントしないというのは、逃げる、放置するということではありません。相手が泣いていても怒っていても、そんな事実はないかのように対応し、「確かに」「なるほどね」「うーん、そうか」などと相槌を打ちつつ、話を聞いてあげるのです。これができれば、「鎮火」したときにしこりが残ることもないでしょう。

怒ることや悲しむことで感情を発散させれば、意外なほど簡単に平常心に戻ります。さっきまで泣いていた奥さんが、気が晴れたらもう、携帯で友達と電話しながら笑っていたりするのです。逆にやめさせよう、なんとか止めようなどとすると、いつまでも感情が鎮まらずに長引くことになります。

こうした対処法は職場でも有効です。たとえば、女性の部下から営業報告を聞いていたら急に泣き始めてしまった、というようなとき。「ど、どうしたんだ……」と、うろたえてはいけません。目の前で女性が泣いているというのはたしかに異常事態ですが、それを見ていないかのような淡々とした態度で報告を受けることが大事です。たとえれば、お坊さんになったかのような心境です。それが体得できれば、もうヒステリーだって怖くありません。

心理学者 伊東 明(いとう・あきら)
早稲田大学政治経済学部卒業後、NTT勤務を経て、慶應義塾大学大学院修了。博士(社会心理学)。東京心理コンサルティング社長。『女性を味方にする言葉、敵にする言葉』(PHP文庫)など著書多数。