思わずのけぞる、女性の「完全脱毛」ブーム

「両ワキ+Vライン脱毛が250円!」
「医療レーザー脱毛1パーツ1000円!」

テレビや地下鉄のドア付近などでしばしば見かける脱毛サロンや美容クリニックの広告。季節が夏から秋に移っても「今こそ脱毛です」と謳っているのはどういうことか。

「エーダツはね、時間をかけてやるものなんです。来年の夏に向けて、準備が始まっているんですよ」

とは、アキコさん(25歳)。エーダツとは永久脱毛のこと。今からせっせと毛を抜いて、夏にツルスベ肌を目指すらしい。

脱毛経験のない私だが、今回、複数の女性の話を聞いて、まあ驚いた。

一昔前まで美容脱毛といえば、ワキや手足がメインでその金額も10万円単位だった。それが、脱毛方法、金額、部位などすべてにおいて時代とともに変わっていたのである。

4年前から脱毛専門サロンで全身脱毛を行っているアヤさん(34歳)はこう語る。

「サロンに通うまでは、手足はもちろんワキもボーボーの状態でした。脱毛には『痛い、高い』といったイメージがあって。ひたすら自分で剃ったり、抜いたり。あるとき友人に『今は安いし、痛くないよ』と言われ、大手のサロンへ。ワキだけのつもりが、説明を聞いているうちに自然に、パーツが選べる全身コースを契約。金額は10万円弱。勧誘とかはなかったですよ。ただ、そのサロン、会員数が多くて、なかなか予約が取れない。少なくても3カ月待ち。予約日をキャンセルした場合、次の予約はまた3カ月後。結局、ワキや腕、脚、背中など全身の脱毛が終わるのに3年以上かかりました」

脱毛する場合、高出力の医療用レーザーで永久脱毛が可能なクリニックと、光脱毛による施術を行うエステサロンの大きく分けてふたつの選択肢があるらしい。クリニックは施術料が高いが、脱毛完了までの回数は少なくて済む。一方のエステサロンは安価だが何回も通う必要が出てくる。

アヤさんがその金額の安さに魅かれて通ったというエステサロンの施術とはどういったものなのだろう。

「サロン内は細かく部屋が仕切られ、入口は木製のスライドドア。ベッドとロッカーと脱毛マシンがあって、1人あたり2畳あるかないかのスペースです。ドアの中は白いカーテンだけで仕切られているので、隣の部屋の会話は丸聞こえ(笑)。ただし、マシンの『ゴーーーーッ』という音がうるさくて、あまり気になりません。施術は、脱毛する箇所に冷たいジェルを塗った後、マシンでの照射が始まります。太い毛の部分はチクッとしますが、悶絶するほどではありません。あっという間に照射は終わり、肌を冷やす時間がやってきます。実はこれがいちばん寒くて、つらい。でも、これを我慢すればつるつるの肌になると思うとへっちゃら」

鏡で股間見て「この毛、必要?」と自問自答

脱毛生活4年目に突入したアヤさんだが、今年いよいよ「禁断のエリア」に手を出したという。それがV・I・Oラインだ。

Vラインはいわゆるビキニラインのこと。下着や水着から毛がはみ出さないように整えるのが目的だ。Iラインは女性器周り、Oラインが肛門周り。最近ではこうしたアンダーヘアの処理がワキ毛同様に“身だしなみ”として処理するのが常識になりつつあるらしい。

「今年の6月にはじめてV・I・Oを行いました。自己処理として、施術前夜はお風呂で、絶対人に見られたくない恰好で人知れずシェービング。禁断ゾーンに踏み込んでしまうと、そこからはチクチクとの戦いです。立っても座っても不快感がハンパないです。毛抜きで全部抜いてしまおうかと思うくらい。ちなみにヒップ奥のOはうつ伏せで、シェービングからサロンの人がやってくれます。Iは仰向け。片足ずつ膝を外側に倒し粘膜ぎりぎりまでシェービングをし、光を照射します。もちろん下半身丸出し」

粘膜ぎりぎりとか、下半身丸出しとか。私も同じ女性だが、ちょっとそれはできない。何年も通っているアヤさんはそんな無防備すぎる体勢をとるのももはや抵抗ないらしい。

とはいえ、V・I・Oに照射する際の痛みは?

「他の部位にくらべて、かなり痛いです! がまんしていたらエステティシャンに『痛みには、お強いほうですか?』と聞かれました。なので、『ふつうはもっと痛がるもんなんですか?』と逆に聞いたら、『自分の時は、施術1回目2回目は、痛くて飛び上がりましたよ』と。身体の中で、一番の剛毛地帯。やはり痛い。毛孔(毛穴)に存在する黒い毛根を、ひとつひとつ潰していく感じがわかります。バチッと。ただ、このひと孔ひと孔の痛みが、明日のツルツルに繋がる。そう信じて、痛みにも、屈辱的な恰好にも耐えるわけですよ」

実際、まだ1回しか施術していないのに、「毛のない快適さは、想像以上でした」と語るアヤさん。だがアンダーヘアの脱毛にハマりつつあるなかで、さらなる脱毛願望がわきあがってきた部位があるらしい。

「V・I・Oを処理することで浮かび上がるトライアングルゾーンですよ! 鏡を見ながらふと、『この毛、必要?』と思い始めて。サロンには、いわゆるアンダーヘアをすべてなくしてしまう、ハイジニーナコースもあるんですよ。でも、いくらエステティシャンが全員女性で、紙パンツをずらしながら手入れすると言えども、恥ずかしい恰好で他人にアソコを晒す行為が、私にはできるはずもありません。私は日本人であって、ブラジル人でも、オーストラリア人でもない。なかなか一歩踏み出せないでいます」

将来「下の世話」をしてもらうため毛を駆逐

アヤさんが言うハイジニーナとは、アンダーヘアがまったくない、いわゆるパイパンのこと。hygine(=衛生・清潔)が語源となった言葉でムレやニオイもこもらず衛生的、かつムダ毛を気にせず下着や水着も自由に選べると若い女性の間で密かに話題となっているそう。

ちなみに、ブラジルやオーストラリア、欧米ではアンダーヘアの脱毛はもはや一般的。だが、ここは日本。まだまだ下半身に毛が生えていて当たり前なのだ。そんななか、外国人張りのハイジニーナを目指している女性に話を聞くことができた。

脱毛歴5年のミカさん(35歳)。ダンサーでもなければAV女優でもなく、風俗で働いたこともない、一般企業に勤めるOLだ。

「私も最初は手足の脱毛だけでした。たまたま担当していたエステティシャンの彼氏がイタリア人で、『外国人は、男女ともに多くの人がアンダーヘアのお手入れをしているんですよ』と。当然、そのエステティシャンのアソコもツルツル。なんでも、ラクでいいのと、いずれ歳をとって介護されるときに、ちゃんとお手入れしているほうがいいとか。あぁ、そうか。ビキニを着るためや、おしゃれのための脱毛ではなく、私の場合は排泄や生理、いずれ介護されるようになった時のために脱毛をする。なぜか、そうふんぎりをつけたわけです(笑)」

とはいえ、アンダーヘアをすべてなくすことに違和感は?

「とりあえず試しに、トライアングルゾーンの形を整える程度に脱毛しはじめたんです。菱形にしてみたり、たまご型にしてみたりと、やっているうちに面倒になっちゃって、結果『全部、無くしちゃってください』と」(ミカさん)

毛があるべきところに無い状態に恥ずかしさはないのだろうか?

「よく聞かれます。『なんの必要があってそんなところを脱毛するの?』とか『温泉に行ったとき恥ずかしくないの?』とか。でも、私からしてみれば、ワキ毛と一緒でアソコに毛があることのほうが全く意味ないと思う。温泉で人目が気になればタオルで隠せばいいだけのことですよ」

トイレも生理のときもラクで、衛生的で、ツルツル感覚が気持ちがいいという、ハイジニーナ。ということは今後、「ワキ・両ひざ下脱毛で200円(税込)」コースでサロンの門を叩き、自然に全身脱毛コースへとステップアップ、さらにもう一歩踏み出すようなハイジニーナ女子が増える可能性もあるかもしれない。

ちなみに、男性のアンダーヘア処理も、ムレない、臭わない、絡まない、と流行っているのだそう。もしかしたらそうしたツルンツルン男子、試しに「ひげ脱毛(2回1000円)」を始めたものの、いつの間にやら、すね毛も胸毛もなくなり、最終的に「全身不毛地帯」になってしまったのかもしれないけれど。