所得が増えるほど所得税率は上がる

年収が上がったのに、手取りが増えた実感が少ない。そう感じている人は多い。なぜならば、所得が増えるにしたがって、所得税率が高くなる累進課税となっているからだ。

表は課税総所得金額(収入から給与所得控除、所得控除を差し引いた金額。「課税所得」)別の税率を示したものだ。課税所得によって5~40%まで6段階で税率が高くなっていることがわかる。

ただし、それぞれの税率が課税所得の全額にかかるわけではない。例えば課税所得が300万円では、10%の税率が適用されるのは、195万円を超えた所得分105万円に対してである。195万円を1万円でも上回ったとたんに5%から10%の税率適用になってしまったのでは、税金を差し引いた残りの所得が195万円以下の課税時と比べて少なくなる可能性もある。これではあまりにも不公平ということだ。

課税所得300万円の場合の所得税は次のように計算される。まず300万円×10%=30万円=(1)を求める。次に195万円×5%=9万7500円=(2)を求め、(1)から(2)を差し引くと20万2500円となる。これが課税所得300万円の場合の所得税となる。

「累進課税は、所得が多い人ほど高い税金に耐えられるだろうという考え方が基本になっています。これが、年収が増えたほどには手取りが増えない理由です」(宝田・寿原会計事務所代表税理士・宝田健太郎氏)

例えば、独身者で年収300万円(課税所得118万円)の場合、所得税は5万9000円だ。同じく年収1500万円(課税所得1037万円)では約188万円になる。所得は5倍の開きだが、所得税はなんと32倍近くまで拡大する。

このほかに一律10%の住民税も課税される。これを加味した税額は年収300万円のケースで約18万円(均等割を除く。以下同)となる。1500万円の場合は約292万円だ。両者の税額の開きは16倍まで縮小する。言い換えると所得税の累進性がいかに大きいかがわかるだろう。

生涯賃金で考えると、さらにその差は拡大する。

例えば、22歳で就職して年収240万円からサラリーマン人生をスタートさせ、定年まで一定割合で収入が増えると仮定。途中、結婚し妻は専業主婦、子ども2人の家族構成という条件で試算してみよう。

定年時の年収が2000万円になった人の場合、生涯賃金の合計は約3億2000万円となる。この間の所得税は約2448万円だ。これに対し、定年時の年収1200万円の人は、生涯賃金が約2億3000万円で、所得税総額約862万円。生涯年収では両者の開きは1.4倍だが、支払う所得税は2.8倍となる。収入が増えるほどに重税感が募るのは、累進課税の大きな問題点ともいえる。

「所得税の最高税率70%の時代もありました。さすがにこれでは頑張る気になれない。その後、徐々に税率が引き下げられ、現在は住民税(一律10%)も含めた最高税率は50%となりました。ただ、課税所得が1800万円を超えると、半分は税金で消える。所得の再分配という点ではやむをえないとしても、経済を活性化させる意味ではやや問題があるかもしれませんね」(宝田氏)

借金まみれの国家財政。いずれ増税は避けられないことは誰もが知っている。所得税率の引き下げは絶望的だ。

※すべて雑誌掲載当時