国によって異なる会計のルールを統一しようというIFRS(国際会計基準)――。日本では2009年にIFRSの任意適用を認め、12年をメドに強制適用の是非を判断すると表明していた。

しかし、米国がIFRSの強制適用を延期したのに続き、日本も判断を先送りした。そして今度は新たに「日本版IFRS」の作成に着手して、15年3月期にも使用可能になる見通しという。

日本版IFRSの策定は、現行IFRSの基準を受け入れたうえで、特定の項目を除外していく方向だとされる。この会計基準を巡る迷走、どう対応すればいいのか。

日本の会計基準では、たとえばM&A(合併・買収)を行った場合、ブランドやノウハウ、顧客との関係といった無形の固定資産を決算書に計上する「のれん」があり、時間とともに目減りすると考えて20年以内の期間にわたり規則的に償却を行う。

一方、IFRSでは償却を行わない。日本企業の決算実務に大きな影響を与えると考えられている論点の1つであり、日本版IFRSの今後の動向ともあいまって、関心の高い問題になっている。

もともと日本の会計基準とIFRSでは、さまざまな相違点があって、どちらを採用するかで決算の内容にも違いが生じる。たとえば代理人取引がある総合商社などに関して、日本基準では取引総額を売上高とするところ、IFRSでは手数料収入部分の純額を収益計上するよう求めるケースが出てくる。

実際にIFRSを採用した双日の13年3月期の決算は、日本基準では3兆9559億円だった売上高が、IFRSだとそれに相当する収益が1兆7477億円に大幅に目減りしている。また、のれん代の処理のほかに、有価証券の売却損益や評価損益についても相違点があることで、双日の純利益は日本基準で142億円、IFRSでは134億円と差が生じている。

そもそもIFRSには、会計基準を統一することで、国籍の違う企業を比較しやすくしようとする狙いがある。投資家が世界中に投資機会を求めていることに加え、企業活動がグローバル化したことで、国境を越えたM&Aの環境を整えたいという目的があったのだ。

しかし、その効果が具体的にどの程度か、はっきりしない面がある。資産家がグローバルに投資しやすいようになるのは望ましいが、必ずしもそのような情報ニーズのない利害関係者もいる。また、海外でM&Aの候補企業を選定する場合、単なる決算書の分析にとどまらず、多角的に企業を分析するもの。その過程で会計基準の違いを考慮することは、不可能ではない。現に、今の状況でも投資活動は行われている。

1949年に企業会計制度対策調査会から公表された企業会計原則は、実務のなかで慣習として発達したもののなかから、一般に公正妥当と認められたものを要約している。それゆえ、日本の商習慣にマッチして、誰もが守るべき会計基準を示した“憲法”として認められる存在となってきた。

確かにIFRSの登場で日本基準のありようが変化している。しかし、国が違えば商習慣も違ってくるわけで、各国が独自の憲法や法律を制定しているように、会計原則も国によって違ってくるのは当たり前である。極端に言えば世界で統一した憲法や法律をつくろうとしたら猛反発が起きることは容易に想像がつく。IFRSはそれを会計の世界でゴリ押しするようなものとも感じる。

会計基準を国際的に統一すれば比較しやすいという趣旨は理解できるし、その努力はある程度評価されてもよいと思うが、理想を達成するのは現実として難しいのではないか。