基本はスキルを高めること

今回は自分で自分のワーク・エンゲイジメントを高めていく方法を考えてみましょう。

まず取り組むべきは、仕事に関連したスキルをきちんと磨いていくことです。会社の研修制度などを活用しながら「これなら他人に負けない」という能力を身に付け、自信を付ける。すると自己効力感が高まっていきます。

自分のキャリアについて長期的なビジョンを考えながら、その中でいま何をやるべきかを組み立てていくことも、前向きに自分を動かす原動力になります。ある程度長期的な目標がないと、人間はエネルギーを持続するのが難しいからです。

「できる!」「楽しい!」「嬉しい!」といったポジティブな感情を持つことも、実はさまざまな行動の原動力になることが知られています。これを踏まえると仕事をスモールステップに分けて、少しずつ「できる!」という感覚を積み上げていったり、自分で肯定的な出来事をつくり「楽しい!」と感じられるようにしたりすることが考えられます。

「ジョブ・クラフティング」で環境を整える

個人の資源だけでなく仕事の資源を豊かにすることもワーク・エンゲイジメントを高めるのに重要です。それは上司やマネージャーの仕事で自分には関係ないと思われる方がいるかもしれませんが、最近は「ジョブ・クラフティング」という概念が注目を集めるようになっています。これは個人が能動的に組織や周囲の環境に働きかけ、仕事をつくりあげていくという意味です。つまり、誰かが環境を整えてくれるのを待つのではなく、自分から主体的に仕掛けていこうというわけです。

たとえば周囲の人と協調し、積極的にサポートを求めていく。自分から上司にフィードバックをもらえるよう働きかける、あるいは「こんな仕事をしたい」と提案していく。そうすることで仕事の資源を豊かにし、自分の仕事をより魅力的にしていくのです。

見落とされがちですが、仕事以外の要因もワーク・エンゲイジメントに影響します。仕事が終わった後の夜、あるいは週末の時間をどう過ごすかによってその後の健康状態やパフォーマンス、意欲が大きく違ってくることがわかっています。たとえば週末に地域のボランティアや仲のいい友人と遊びにいくといった社会的活動をした翌週はストレスが下がり、パフォーマンスが上がるのです。

週末に仕事を肯定的に振り返ると、その後の意欲向上につながることもわかっています。従ってパフォーマンスを上げたいのなら、週末は仕事以外の活動で気分転換しつつ、肯定的に仕事を評価していくとよいでしょう。ただし数カ月も休暇を取るなど、仕事との心理的距離を取り過ぎるとワーク・エンゲイジメントが高まらない状態になるので注意が必要です。

島津明人(しまず・あきひと)
東京大学大学院医学研究科准教授
1969年、福井県福井市生まれ。早稲田大学第一文学部、同大学院文学研究科卒業後、ユトレヒト大学社会科学部客員研究員などを経て、2007年より現職。「ワーク・エンゲイジメント」「ストレス対策」「ワーク・ライフ・バランス」をテーマに、企業組織における人々の活性化・メンタルヘルスを研究している。精神保健学、産業保健心理学。共著・単著に、『ワーク・エンゲイジメント入門』(星和書店)、『自分でできるストレス・マネジメント』(培風館)、『じょうずなストレス対処のためのトレーニングブック』(法研)等。