なぜ、贅沢しても幸福度は急降下するのか?

富裕層だからといって、年中お金のことを考えているわけではありません。

子供が学校で問題を起こして担任の先生に謝りに行ったとか、興味のある新刊本の注文のこととか、歯医者の予約のこととか、そのときそのときでいろいろな出来事があって、嬉しくて気分が良いこともあれば悲しいこともあります。

もし、宝くじが当たるという出来事があったとしても、日常のそういったいろいろな出来事に埋没して、いずれは数ある出来事の1つとして埋もれていってしまいます。

そのため、1年もすれば人間の幸福度は初期設定の水準まで戻ってしまうわけです。

このように人間には急速に贅沢に慣れてしまうという「快楽順応」の能力があります。

たとえば、数億円の豪邸とか、cassina(イタリアの高級家具ブランド)のソファとか、ベントレーとかであっても、見慣れてしまえばただの日常風景となって何の幸福ももたらすものではありません。また、日常生活ではそのような地位財(周囲との比較により満足を得るもの)のことは1秒も考えません。

人間の適応能力にはおそるべきものがあるといわざるを得ません。

リュボミアスキー教授は1卵生双生児と2卵生双生児の研究から、幸福を決定するものの割合を割り出しました(『幸せがずっと続く12の行動習慣』ソニア・リュボミアスキー著)。

それによれば、幸せの決定割合は、

遺伝による幸福の設定値:50%
日々の意図的な行動:40%
環境:10%

となっています。

そして、10%の環境にはさらに富や容姿の美醜、健康などの要因があり、全体としてのお金が幸福に与える影響というのは非常に小さいということがわかりました。このことからも、お金がたくさんあることは幸福度に直結するものではないということがわかると思います。