2013年7月17日(水)

平均年収1300万円の製造業、キーエンスはなぜ最高益を出せるか

PRESIDENT 2013年7月29日号

著者
町田 徹 まちだ・てつ
経済ジャーナリスト

町田 徹1960年、大阪府生まれ。神戸商科大学(現・兵庫県立大学)商経学部卒業後、日本経済新聞社に入社。経済部キャップ、ワシントン特派員などを歴任。雑誌編集者を経て、2004年に独立。著書に『JAL再建の真実』『東電国有化の罠』『日本郵政解き放たれた「巨人」』などがある。取材・執筆活動の傍ら、総務省タスクフォース委員や甲南大学講師も務める。

答える人=経済ジャーナリスト 町田徹
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アナリストも怒る「情報開示」の拙劣さ

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平均年収は業績に連動して増減

だが、危うさのない経営というのはなかなかないものだ。キーエンスも例外ではなく、少なくとも5つ程度の危うい点がありそうだ。

その第1は何と言っても、営業利益の1割程度を還元し、平均で1300万円超という高い給与を支払ってきた人事政策である。質の高い提案型のコンサルティング営業によって高い効率性を維持してきた根幹だ。そして、同社はリクルート用のサイトで、「2011年の離職率は2.9%、ここ5年間でも2~4%台で推移」と説明しているが、「ざっくりいうと、1人当たりの粗利益率でノルマを課す仕組みで、疲弊と崩壊の兆しがみてとれる」(同社をウォッチしている証券アナリスト)という。80年代の証券会社のノルマ営業のような無理があると指摘しているのだ(※2)

第2に、同社がファクトリーオートメーション用の機器という、いわば脇役の事業を営んでいることも、ある種のリスクといえる。主要な顧客の自動車産業の日本離れに歯止めがかかっていないからだ。例えば、四輪車の国内生産台数は、直近の4月まで8カ月連続で前年同月を下回った。逆に、海外生産データは、昨年の暦年の数字で前年比18.2%増の1582万台と増えており、キーエンスの潜在需要が流出していることが鮮明だ。

表裏一体なのが、第3の問題というべきキーエンスの海外拡大戦略だ。前期を見ると、確かに海外売上比率は伸びているが、主力だった国内のような高い利益率を確保し続けられる保証はない。特に、高い利益率の源泉のひとつが、クライアントのトラブルの際の対応をスムーズにする製品の即日出荷サービスにあったというだけに、海外向け製品でこれまでのような実績をあげられるかどうかを疑問視する金融機関は少なくない。

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