2013年8月2日(金)

レンコン――年末年始に人気だけれど、本当においしいのは夏から秋

dancyu 2011年10月号

福地享子=文

レンコンの穴から向こうが見える。見通しのよさにひっかけて、縁起物とされるレンコン。来年こそは運気晴らしてすっきりと、というわけで需要が多いのは、なんといっても年末年始。ほかの月の3倍以上。ゆえにその時期を旬としてもいいのだが、なにやら微妙である。

築地市場は飲食の店が得意先に多いから、新物が珍重される。新物にはごちそう感がありますからね。で、レンコンの新物登場は3月。熊本県からハウス栽培のそれがやってくる。レンコンは泥田で育てるが、その泥田をビニールハウスですっぽりおおえば水温が高くなり、レンコンの成長をうながすというわけだ。キロ5,000~6,000円をつけることさえあって、料亭さんなどに買われていく。

ついで6月~7月になると、茨城県から同じくハウス栽培の新物登場。

レンコンは各地で栽培されているが、市場流通の主流となる産地は、熊本、徳島、岡山、茨城の4県。うち最大シェアを占めるのは、霞ヶ浦という豊富な水量を誇る茨城県である。

圧倒的シェアの茨城県産の新物入荷。これをもって新物としていいのかもしれないが、おっと待てよ、である。

毎度、私の野菜の師となってくださる仲卸の政義青果の社長、近藤義春さんは、きっぱりと言いましたね。

「ホントの新物といってほしいのは8月、茨城の露地栽培が出たときです」

2月~3月にレンコンのもとになる地下茎、種ハスを植えつける。7月に美しい花を咲かせると、それが根っこも育っているよ、の合図。そして8月、花が終わって収穫が始まる。それが自然の摂理にあった新レンコンの始まり、と。

そして収穫は春まで続く。

なるほどねぇ。私、かなりのレンコン好きなわりには、おいしい時期に無頓着だったけど、新物が出てしばらくの秋。ここですね、集中して食べるべきは。

【つくり方】
レンコンを分厚い輪切りにして、たっぷりのバターで焼いて、軽く塩、胡椒して熱々のうちに食べる。塩の代わりに、醤油を最後にジャッとからめても。

レンコンは、まっこと使いやすい野菜だ。さっと火を通しただけのシャキシャキ感が好きなので、なおさらである。ササッとキンピラ。ササッとゆでてサラダ。分厚く切って、たっぷりバターでのソテーは、時間がないときの超便利な1品。ステーキのおりには、肉汁といっしょに焼きつける。ハンバーグに入れたときの、シャキシャキ感もたまんなくいい。

実は、このシャキシャキ感がレンコンの新たな魅力となり、年末年始だけでなく、周年での需要が増えているという。

そうですよね、景気の不透明感とやらがレンコンの向こうに透けて見えるはずはなし。ぶっとく切って、シャキシャキと音させて、それで憂さのひとつも晴らすほうがレンコンの功徳というもんです。

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福地 享子

かつて女性誌の編集者、その後、築地の鮮魚仲卸「濱長」の看板ネエサンとして大活躍。現在は築地の書庫「銀鱗文庫」役員。ここを拠点に、築地を走り回っている。