地域活性化と連動させ、太陽光発電を推進

そしてもう一つ、北九州市における再生可能エネルギー関連の動きで、見逃してはならないのが太陽光発電のプロジェクトだ。固定価格買取制度の開始もあり、各地でメガソーラーの建設が進んでいるが、同市もその有数の立地エリア。響灘地区という埋め立て地では、すでに合計で40メガワットを超える事業が決定済みだ(稼働予定含む)。

メガソーラー建設にあたって要件となるのは、「自然環境」「用地」「系統連系」といわれる。まず、一定の水準を超える日照時間があるのは当然の条件。そのうえで、相応の面積をもつ敷地が必要となる。そして発電した電気を電力会社の配電網に送らなければならない。産業用地として開発され、現在分譲中の響灘地区は、すでに電力インフラも整備されており、いずれの条件もしっかりとクリアしていたわけだ。

日本アジアグループが開発する「響灘ソーラーウェイ」(写真)をはじめ、響灘地区には多数のメガソーラーが立地。

複数のメガソーラーの建設が並行して進む一方で、北九州市では視点の異なるユニークな取り組みも展開されている。「工場・倉庫の屋根への太陽光パネルの設置」の促進だ。発想の原点には、「臨海部に広大な工業地帯を形成する地域特性をなんとか活用できないか」という同市の思いがある。試算によれば、全ての工場等の屋根にパネルを取り付けた場合、年間発電量は3億2300万キロワット時。およそ9~10万世帯分の電力に相当するという。

注目すべきは、こうした活動を推進すべく、北九州市自体が中心となって産学官からなる「北九州市太陽光発電普及促進協議会」という組織の立ち上げなどを行っている点だろう。産業界への太陽光発電の普及をベースに、地元企業による関連部材の開発、施工技術者の養成などにつなげていく考えで、自治体が地域活性化、都市経営の一環として戦略的に取り組みをけん引しているのだ。

そうした姿勢は、市内における“再生可能エネルギーの見える化”にも表れている。北九州市では、市庁舎の壁面や商店街のアーケードなど、市民にとって身近な場所に太陽光パネルを設置し、そこで発電した電力を各所で活用。再生可能エネルギーと生活とのつながりをリアルに実感させることで、その価値を端的に伝えている。地道な取り組みによって、「市が本気で再生可能エネルギーの進展を後押しし、それをまちづくりに生かしていく」という方針を発信しているのだ。

北九州市内の各所で、再生可能エネルギーの見える化が進められている。

エネルギーというものが、非常に貴重であり、同時に不可欠なものであることは誰もが理解しているに違いない。しかし、それが目に見えづらく、手で触れられないこともあって、また日常の中に溶け込んでいることもあって、なかなか自分事として考える機会が少ないのも事実だろう。そうしたなかで、エネルギーと生活やビジネスとの関係性を明確にして、実践的な施策を展開する北九州市の動きは、今後の都市のエネルギー戦略のモデルにもなり得るに違いない。現在も着々と進められる各種の取り組みがどんな効果をもたらすのか──。今後の成果が期待される。