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対ウォン円安進行の目安は?

アジア通貨危機の際には、1円=7.43ウォンから15.15ウォンへと、わずか1カ月で価値が半減してしまった。08年9月のリーマン・ショックでも、09年3月までの半年間で1円=9.24ウォンから16.42ウォンと、一気に80%もの円高ウォン安になっている。

現在はそこからの反転局面にあり、過去の水準を考えれば、まだ上値余地は十分ある(図)。

とはいえ、世界経済に不安定要因があれば、また一気にウォン安に振れる可能性が高い。特に今は、これまで日本との間で結ばれていた通貨スワップ協定(通貨が危機に陥った際、一定のレートで相手国と通貨を融通しあう協定)が延長されなかったことから、何かあったときのアンカー(錨)が失われた状態。平時は問題ないとしても、“嵐”が吹き荒れればどこに流されていくかわからない。

韓国の中央銀行は利下げにあまり積極的でないところがあるが、それも自国通貨安に対抗できる措置が限られていることが一因とも考えられる。ただ、こうした問題はウォンだけでなく新興国通貨全般に言えることでもある。初心者は手を出さぬほうが無難だろう。

そこで私は、こうした新興国通貨の特性と先進国通貨の特性の双方を併せ持つカナダドルに注目している。G7参加国だけあって、値動きも豪ドルほど不安定ではない。同時に、シェールオイルやオイルサンドの埋蔵量が多く、シェール革命の恩恵を特に大きく受ける資源国でもある。

カナダの景気は米国に連動しやすいが、米国より経済規模が小さい分、機動的な金融政策を取ることができる。北米全体が景気回復していくとき、米国より早く金利を上げてくる可能性が高い。今後の上昇が期待できる通貨の1つといえるだろう。

(構成=久保田正志)
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