職歴や学歴は、履歴書を読めば一目でわかる。面接官が本当に知りたいのは、学習能力や協調性、誠実さといった、目に見えない資質だ。短時間でそれを引き出すには技術が必要だ。

シリコンバレーの有名企業のCFO(最高財務責任者)のポジションに2人の候補者がいて、その2人はほとんど差がないように見える。学歴も職歴も昇進履歴も驚くほど似通っている。

しかし一方の候補者は大学を優等の成績で卒業しており、他方はそうでなかった。優等で卒業しなかった候補者は、その理由を聞かれて、大学時代にすでに結婚して2人の子どもがいたため、生活のためにフルタイムの仕事に就いていたと説明した。

この採用を担当したサンフランシスコの幹部採用代行会社、ラッシャー・ロスカヴィオ・アンド・ロプレストのCEO、ビル・ラッシャーは、そのときの様子を次のように語る。「彼はそこでいったん言葉を切り、それからこう言った。『それは取るに足りないことでした』。つまり、『当時は優等で卒業することは優先事項ではなかった。それが優先事項だったら、それを成し遂げる方法を考え出していただろう』と言いたかったわけだ」。

潔い態度が決め手になってその職は彼のものになったと、ラッシャーは説明する。「自分の行為の責任を潔く引き受ける姿勢こそ、われわれが本当に求めている資質であり、われわれは実際それを基準に選んだのだ」。

どのようなポジションでも、人を採用しようとしているときは、「ものごとに対する姿勢」のような目に見えない資質が、有能なだけで終わる人材と輝きを放つ人材の違いを表していることがある。もちろん候補者は、通常、学歴や経験の点で一定の基準を満たしていなければならない。だが、それを超えたところでは、その候補者が1年後、3年後、5年後にどれほどすばらしい働きをするかを推量するうえで、他の基準が重要になる。そして、たとえば創造的問題解決では稀に見るすばらしい手腕を発揮するが、採用側が求めている学歴・経験要件を満たしていないという候補者のほうがよい場合があると、採用の専門家は指摘する。