鳥取県民が1人1つ持っているのに、北海道民が1人0.21分しか持っていないものは何か。答えは、参院選の選挙権だ(2012年12月16日現在。総務省資料に基づく)。住む地域によって選挙権の価値が違う状態は、憲法で保障されている法の下の平等に反する。しかし現実は条理どおりになっていない。前回の衆院選は1票の格差が最大2.42倍。冒頭に示したように、7月の参院選では最大4.75倍の格差が生じる見込みだ。

これまで1票の格差問題については国民の関心が低かった。風向きが変わったのは、今年3~4月に出た選挙無効請求訴訟の高裁判決が出てからだ。

これまでの裁判で出ていたのは、「違憲状態」(1票の格差は憲法に反するが、格差是正に向けて合理的な期間が残っているので違憲とまではいえない)、「違憲」(違憲だが、選挙を無効にするとその地域のみ議員を出せず不都合になるため、無効請求は棄却)という判決ばかりだった。しかし、12年衆院選を対象とした全国17件の無効請求訴訟のうち、広島高裁と広島高裁岡山支部の2つで、初めて「違憲・無効」判決が出た。無効になれば、その選挙で選ばれた議員は議員でなくなる。これまでと比べてグッと踏み込んだ判決だ。

現在、2012年衆院選の無効請求訴訟は最高裁で審理中だが、一連の訴訟で原告を代理する升永英俊弁護士は、早くも7月の参院選を見据えている。

「投票翌日の7月22日に、全国14の高裁・高裁支部で、すべての選挙区に原告を立てて裁判を起こします。選挙区すべてで訴訟を起こせば、『一部の選挙区だけ無効にすると不都合が生じるから無効としない』という判決理由も成り立たない。9、10月には高裁の無効判決が次々出ます。そうなれば最高裁も無視できないでしょう」

最高裁で無効判決が確定すれば、参院選で選ばれた議員たちは失職する。現実にそんなことが起きれば、国政は大混乱だ。