II.負の感情に陥らないようにする

感情は思考の結果として生じるものだ。したがって怒りや不安などの負の感情をできるだけ感じなくするには、それに先行する思考を変えることが不可欠である。以下、4つの観点から、負の感情を抑制するための思考練習を紹介しよう。

(1)「あるべき」を解除する

「物事はこうあるべきだ」と決めつける傾向の強い人ほど怒りっぽいことは、すでに述べた。したがって、その軽減のためには「あるべき」を解除することが必要である。

最初にやらなければならないのは、自分の中にある「あるべき」を知ることであるが、それは「自分がどんなときに怒ったか」を振り返れば、おおよそわかってくる。

たとえば、後輩があなたに「タメ口」で話しかけたとき、強い怒りの感情を覚えるようならば、あなたの中には「目下は目上に対して敬語を使うべきだ」という「あるべき」が強く存在することがわかる。

それが自覚できたならば、後はこれを解除し、怒りを覚えなくなるようなほかの「内面の言葉」に置き換える努力をするだけである(たとえば「若者の言葉は英語と思うようにしよう」のように)。さまざまな状況で、こうした転換ができるようになれば、怒る回数は減少していくはずである。

(2)「トレードオフ」を認識する

トレードオフとは「一方を追求すると他方が犠牲になるような両立しえない関係」のこと。経済用語で使われることが多いが、ここでは嫉妬の感情を少なくするための考え方として提示する。

嫉妬しないためには、他人と自分とを比較しなければよい。しかし、それは常人になかなかできることではない。そこで提起するのがトレードオフの考え方である。

簡単に言えば「嫉妬の対象となっている相手も、実際には多くの苦労を抱えている(犠牲を払っている)ことを認識しましょう」ということである。相手の苦労を知ることによって相手に共感を抱き、それをもって負の感情を中和するのである。