サービス残業代を支払わせた決め手

解雇されそうになったらどうするか?
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解雇されそうになったらどうするか?

なにか問題を起こすとクビにされ、なにもしなくてもギリギリと追い詰められていく。圧倒的に不利な立場にあるビジネスマンが会社相手に戦う方法はあるのだろうか。

「『あんたやめたらどう?』『あんたの居場所は会社にないよ』『あなたの仕事は次の仕事を探すことだ』と退職しろと言わんばかりの発言も、よく聞くと解雇とは言っていない。労働者の心がくじけるのを待っている。会社側の『退職勧奨』に、断固として『NO』を言い続けることが大切です」(高井)

ICレコーダー、日記、手帳でのまめな記録も大切だ。

「相手の許可をとっていなくても、まずは記録をとり続けることが大切です。どう使うかは後になって考えればいい。賃金未払い等の民事の時効は2年。サービス残業を押し付けられた労働者が、タイムカードのコピーや手帳への記録から200万円を会社から取り戻した例もあります」(高井)

平成18年4月から施行された労働審判制度は労使争議の主戦場となりつつある。昨年だけで3500件もの争議を扱い、解決率は約80%だ。

「労働審判制度は、労働事件の裁判の形態に民間の労使の現場経験者が介入するという点で画期的です。平均して70日程度で解決します。会社側は、解雇権行使で想定されるリスクが把握できるようになった」(木下)

雇用保険が支給されるのは退職から3カ月目。それより早く金銭的解決を得られるのは労働者には大きなメリットだろう。

一方、高井氏は労働審判について、メリットは最大限活かしつつも、労働組合による団体交渉も選択肢に入れるよう勧める。

「労働審判で職場に復帰する形でまとまったことが極めて少なく、もらえる金銭の額の水準が低い。孤独な戦いを強いられるビジネスマンは、社内、社外にも仲間を増やすことが重要です。支援があれば職場復帰も夢ではありません」(高井)

(小倉和徳、渡邊清一=撮影)