アメリカ式リーダーシップの「型」を叩き込む

日米のリーダーシップの違いに着目した山口氏は、リーダーシップ、グローバルマネジメントを軸にしたカリキュラムを作成した。では日米のリーダーシップ教育の違いとは何か。山口氏は「型」を身につけることだと言う。

「柔道でも茶道でも型があります。たとえば柔道の受け身は何百回も練習することでできるようになる。リーダーシップもそれと同じでアメリカ人には当たり前の習慣になっています。リーダーになると初日に自分がやりたいことを宣言し、次に組織、人のレビュー、ビジネスプロセスのレビューを通じて自分のチームをつくり上げていく。その過程で辞める人、採用する人も発生しますが、最終的にパフォーマンスの高いチームでゴールを目指すことになります。私の頭にあったのはそれを日本人に応用することでした。自分のチームをつくり上げるリーダーシップの型を明文化して、研修の中で徹底的に叩き込むことを考えたのです」

具体的にはリーダーシップの「型」を7つに細分化し、1つの型ごとに教育プログラムを作成。課長以上の研修からスタートし、2年間で4500人が受講した。それをグループ企業にまで発展させたのが選抜型経営研修のグローバル&グロース・リーダーシップ・ディベロップメント・プログラム(GLP)と呼ばれる研修だ。各事業の責任を担う人材を選抜して6カ月の研修を行う。部長クラス向けの研修ではハーバード・ビジネススクール教授を講師に英語で講義が実施され、学習成果は「成長戦略提言」として経営トップの前で発表する。

もちろん、教育だけではグローバルリーダーは育たない。育成と同時に配置による経営職としての経験を繰り返しながら鍛えていく必要がある。その司令塔となる「人財委員会」を昨年10月から始動させた。委員会は中西宏明社長をはじめ各カンパニーの社長たちで構成。経営人材の選抜・育成・配置について議論する。

日立グループは約40のビジネス領域に分かれる。その頂点に立つCEOの育成が主眼だ。まず、ビジネスごとに事業目標達成に必要なグローバルリーダーのポジションを明確化し、それに必要な人材要件を定義する。

「今のポジションではなく、たとえば5年先にどういうビジネスになるかを想定し、そのときに求められるCEOの要件とは何か、必要な人材要件をビジネスごとに全部書くことになっています。それに基づいて委員会では各カンパニーが出してきたCEOの候補者の1人ひとりについて評価してどう育てていくかを議論します」(山口氏)