新しい考え方に対するゴルバチョフの傾倒ぶりは、ソビエト研究者にはそれほど意外なこととは映らなかった。それというのも、書記長に選出される前から、ソビエトの指導者層に許される文法と言語表現の枠内ではあったが、そういった考えを彼は臆することなく表明してきていたからである。しかし、彼が「選出された」という発表を聞いたときに、懐疑的な西側のオブザーバーたちは、これにはきっと舞台裏に、ファウストが悪魔と取り交わしたような約束が存在しており、彼が書記長の椅子と引き替えに現状維持路線を受け入れたのだろうと感じたのである。

それからというものゴルバチョフは、ソビエトの制度にはそれまでよりもずっと高い透明性が必要だ、ということを説明する「グラスノスチ」(日本では「情報公開」と訳されたが、直訳すると「あけすけである」となる)のようなさまざまな原則や用語を使い始めた。