雑巾を絞るように簡単に無駄が出た

ある意味で、JALほどアメーバ経営がマッチしやすい会社はなかったのかもしれない。というのは、JALは半官半民で創業した経緯から、長年、予算(売り上げ)だけを重視する経営を続けていたからだ。コストを勘案した儲けは本社部門で月次集計していたものの、把握するまで2、3カ月もかかり、現場にフィードバックされることは稀だった。

経営難に喘ぐJALを取材していた筆者は、十分に売り上げのノルマを達成しているのに本社が文句を言うとこぼす子会社社長に、扱っている格安ツアーでいくら儲けが出るのか問い質したことがある。すると、採算を把握していない事実が判明、絶句したものだった。現場には真面目に働く社員も多かったが、正しい目標がなく間違った努力をしていた。

導入当初、アメーバ経営へのアレルギーがなかったわけではない。むしろ、高過ぎるプライドが邪魔をして、反発の方が強かったぐらいだ。特に、製造業の京セラの仕組みがサービス業のJALに合うはずがないという疑念は猛烈だった。いざ導入となっても、売上目標をできるだけ低く設定しておき達成度を競う体質や、別の部署にコストを押し付ける体質があり、混乱は容易に解消しなかった。「人間として何が正しいか」「利他の心はあるか」といった「京セラフィロソフィ」を徹底し、なんとか軌道に乗せるような状況だった。

しかし、軌道に乗ると、効果は大きかった。採算管理はおろか、コスト概念もロクになかったJALは、びしょぬれの雑巾を絞るように簡単に無駄を絞り出した。過去最高の営業利益を記録した2012年3月期決算は、そのことをよく現わしている。500億円を超す営業赤字だった破綻直前の2009年3月期決算と比べると、2012年3月期の売り上げは4割近く減っているのだ。