安倍首相が歴史の見直しをやりたいのなら、取り巻きの経済学者にアベノミクスを考えさせているように、「専門家」にやらせればいいのである。

そもそも政治家の仕事というものは、「歴史を書き換えることではない」と私は考える。それでもあえて歴史を書き換えたいのなら、政治家にできることは2つしかない。1つは政治の実績を積んで、過去のどの時代よりも今の日本のほうがいいと国民や世界に思わせること。

もう1つは、積極的に中国や韓国に関与して、彼ら自身の口から「日本の植民地支配にも見るべきところはあった」と言わせることだ。政治家にできるのは“将来をつくる”ことで、「過去に問題があった」と思う人々の意見を変えてしまうことである。韓国人と中国人におしなべて、「安倍さんは偏見のない素敵な人だ」と思わせるのも効果的だ。

このような人が存在してくれれば、韓国人や中国人の中に、「過去の“おかしな時代”は再現されない」と思う人も増えて、歴史認識にこだわる人はいなくなる。実は中国にも韓国にも日本贔屓な人は結構いる。バッシングされるのが怖いため、大っぴらには言わないが、「わが国が経済成長できたのは日本のおかげ」「日本大好き」という声は決して少なくない。

中国や韓国で反日教育が盛んなのも、そこまでやらないと反日の火種が消えてしまうからである。一皮剥けば中国人も韓国人も「日本が好きだし、関心がある」のだ。韓国の著名な経営トップの多くは、日本語が話せるし、日本への留学経験がある。大統領官邸の青瓦台は、日本統治時代の象徴的な建物だ。

日韓、日中の歴史にはプラスの面もたくさんある。それを日本側から持ち出すのではなく、関係を緊密化して、向こうから話が出てくるようにすることが重要だ。

歴史の事実ではなく、事実と教えられ、ある意味で信じ込んできた両国民の積み重ねによって、日中関係や日韓関係は塗り固められてきた。これを解きほぐすために政治家ができることは、良好な外交関係を築くことで「あるべき将来をつくり出していく」ことしかない。

(小川 剛=構成 ロイター/AFLO=写真)
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