さて、次に私の体験だが、感想は彼女とほぼ同じだ。乗ったのは同じプレミアムドリーム号で、日付が違うだけ。

そして、最初から結論をいうけれど、深夜バスは慣れてさえいれば便利で快適な乗り物だが、慣れていない人はまず眠れない。翌日、大切な用事がある人が初めて利用する交通機関ではない。

女性席は最後部にあり、寝顔を男性に見られることは少ない。

女性席は最後部にあり、寝顔を男性に見られることは少ない。

慣れていないとバスが高速道路を走る音はうるさい。さらに、周りに人の気配がするなかで熟睡するのは難しい。加えて、私が乗ったバスには泣き出す子供こそいなかったけれど、酒を飲みながら独り言をいう男性客がいた。つまり、深夜バスに乗車すれば、ひとりやふたりは癪に障る同乗者が必ずいる。そういったことをわきまえて乗るのが深夜バスだ。

また、寝ているうちにスーツのパンツにはしわがよる。防ぐことはできない。だからといって、着替えのスーツを持って乗ろうとしても荷物を置くスペースは広くはない。ヨレヨレのスーツで仕事の場に臨むのが嫌な人は無理に深夜バスを使うのではなく、料金の安い早朝の飛行機便を利用することだ。

何が何でも深夜バスに乗ることを考えるのではなく、プライベートで旅行したり、新幹線に乗り遅れたりしたときに使うべきものだと思われる。

繰り返しになるが、深夜バスに乗ってつらかったのは、ぐっすりと眠れないことだった。途中休憩のサービスエリアを過ぎても、まんじりともできず、羊が1匹、羊が2匹と数えたり、とにかく身体を動かさないようにした。しかし、時間は刻々と過ぎていく。焦燥感がつのる。眠ったのか眠らないのかわからず、うつらうつらした後、ふとアイマスクを外したら、外は明るくなっていた。ああ、徹夜だ。やばい。どうしよう、と思った瞬間、私は座席で目を覚ました。大阪駅に着く寸前だった。

つまり、私は深夜バスに乗りながら「深夜バスのなかで眠れない夢」を見ていたのである。睡眠はとったのだけれど、妙な夢のせいで身体はひどく疲れた。深夜バスを利用する人へのアドバイスはひとつ。夢は見ないようにしよう。といっても無理な話かもしれないけれど……。

(増田安寿=撮影)