10年10月から警察庁が促し始めた通り、道交法では、自転車は車道を走ることになっている。しかし、これには例外規定があって、「道路標識等により通行することが認められているとき」は歩道を走ってもよいとされている。

さらに、07年の道交法改正により、この例外の範囲が広げられている。「運転者が、児童、幼児その他の者(主に70歳以上の者等)であるとき」と「安全を確保するため歩道を通行することがやむを得ないと認められるとき」である。

問題は、後者の規定だ。法文では「車道又は交通状況を照らして」と条件がつけられているのだが、これでは何をもって「やむを得ない」と認められるのかがわからない。運転者が独自の判断で、歩道を走ることができる。つまり、原則は車道走行、しかし歩道を走るかどうかは運転者まかせということになってしまっている。

07年の道交法改正によるこの通行区分の例外規定は、自転車事故の増加を受けて考えられたものだ。だが、実際にはむしろ通行区分があいまいになってしまっている。道交法改正前、自転車対歩行者の事故は、そのほぼ半数が歩道上で起きていた。今、自転車と歩行者の関係は、むしろ道交法改正前よりリスキーな状況にある。

交通事故の損害賠償請求訴訟では、被害者にも過失があった場合、加害者の過失責任が相殺され、請求額が減額される。しかし、歩道上で起きた自転車対歩行者の事故では、自転車側の過失を100%とした判例が少なくない。まして飲酒運転という法令違反を犯していればどうなるかは、言うまでもない。怪我でも、程度によっては賠償金額が数百万円以上にもなる可能性がある。

東日本大震災で帰宅難民を経験して以降、自転車通勤族が増えたといわれる。事故対策の第一は車と同様「飲んだら乗るな」だ。が、例えばクレジットカードに、他人に与えた被害を填補する賠償責任保険がついていたり、加入している自動車保険が自転車事故も対象としていたりする場合もある。ともに該当しなければ、自転車保険の利用が重要だ。年間4000円余の保険料で1億円まで補償されるものもある。自転車通勤をしている人にぜひ、お勧めしたい。