【弘兼】確かに嫌われる上司には、嫌われる要素もあります。でもそれがまた勉強になるんですよ。「ああ、こういうことをするから、この人は嫌われるんだな。じゃあ自分はこういうことをしないようにしよう」とかね。とはいえ、上になるからには必ず優れたところがあるんです。教師にもなり反面教師にもなる。親しくすることは絶対マイナスにはなりませんよ。

【俣野】長所と短所の両方が学びになるんですね。よく「サラリーマンなんかやってられない」と言って会社を飛び出す方がいますが、独立してつくるのがまた組織ですから今度は自分が人を使う立場になる。そのとき使われる人の気持ちがわからなくて苦労する人が少なくない。その点、上司で苦労した経験があると、わりといい上司になれるようです。みんなが嫌がる人とか、みんなが嫌がる仕事とか、そういうところにこそチャンスがあるのかもしれません。

【弘兼】そうですね。それにサラリーマンなら、やはり上から好かれる人間になったほうがいいですよ。いつも反抗的な態度をとったり、上司の言うことも聞いてるんだか聞いてないんだかみたいな態度はよくない。本当は聞いてなくてもいいから、まっすぐ上司の目を見て相づちを打ちながらメモをとったりすれば、もうそれだけで上司はうれしいものです。

たとえばローソンの新浪剛史社長は、経済同友会あたりのベテラン経営者たちから非常に好かれています。体育会系でシャキッとしているし、相手の目を直視して、「はい! わかりました!」と大声で返事をする。だから「こいつは可愛いやつだ」と思われる。それは組織のなかで仕事をする以上、やっぱり必要なことなんです。おべっかを使ったり、摺り手揉み手をしろということじゃなくてね。

僕も最初そうだったけど、若いころなどは、組織に対してちょっと斜に構えるのが格好いいと思う傾向があるでしょう。しかし組織に生きるのであれば、それは1番ダメなことです。いくら実力があっても肝心なときにメンバーから外されたりする。

【俣野】そんなことで外されるなんて、もったいない。だから僕は、まず型にはまればいいと思うんです。その会社に入ったんだから、その会社の型にはまってみる。