キリンと同様に経営幹部の早期育成に注力しているのが帝人だ。30代の中堅社員と初任管理職を対象にしたSLP(ストラテジック・リーダーシップ・ディベロップメント・プログラム)、課長クラスの「ストレッチ2」と部長クラスの「ストレッチ1」の3つがある。いずれも研修期間は3年間。SLPは毎年40人、ストレッチ2が約30人、ストレッチ1が約15人程度選抜される。選抜された社員は「認定者」と呼ばれ、ストレッチ2は部長や事業部長などの幹部候補、ストレッチ1は役員候補という位置づけだ。

「必ずしもストレッチを経ないと役員になれないということではないが、先々の役員という意味ではストレッチ1から選ばれる可能性が高い」(酒井幸雄・帝人人財部長)という。事実、02年からスタートしたストレッチの修了者が、執行役員の大半を占めている。

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図2:帝人「選抜型」人材育成メニュー

帝人は持ち株会社制の下で繊維、樹脂、フィルムなどの事業グループに分かれている。選抜されるには、まず事業グループ長の推薦を得る必要がある。推薦の要件は該当する社内資格(課長・部長など)を満たし、かつ人事考課が基本的に上位30%以内であること。加えて年齢制限。「厳密ではないが、ストレッチ1と2は、たとえば48歳以下の人を推薦してくださいとお願いしている」(酒井部長)。

課長、部長層になると年齢が高くなるために年齢要件を課している。だが今後は「40代の役員を輩出していくためには、社内資格の要件を緩和し、若手をどんどん入れていく方向で検討している」(酒井部長)という。

推薦された社員はさらに2段階の審査を受ける。ストレッチ2の候補者は各事業グループ長が集まる人事会議での承認を受けたうえで、執行役員クラスの選考委員6人によるプレゼンの審査を行う。ストレッチ1の候補者は取締役で構成する人事会議でプレゼンを行い、それによって認定するかどうかが決まる仕組みになっている。

ストレッチの研修は経営マインドの醸成を目的とする集合研修や他社のトップレベルと交える外部研修など実践的なものが主体となる。