世界感を“見せる”ための話運び

まず『ジュラシックパーク』の表紙では、化石から恐竜が生き返るストーリーから考えを膨らませる。今回の登場人物は科学者であり恐竜である。そこで資料や図鑑をひも解き、特に気になった恐竜の骨図を選んで表紙に使うこととした。これがこの本を端的に表し、人を引き付けると考えたからだ。

では、村上春樹氏の米国版『1Q84』ではどのように考えていったのだろうか。

この作品では、“1984年”にいた男女が、今いる世界と微妙に異なる“1Q84年”の世界に入り込み、事件に巻き込まれていく姿が描かれている。問題は、その2重で奇妙でもある世界観を「どう見せるか」だった。

「どうやって」それを表現するか? 透け感のあるカバーに「1Q84」のロゴを4か所に配し、ロゴを通して女性の顔が少し見える。そして表紙では女性の顔写真に「1Q84」の文字を乗せてカバーと逆転させた。「なぜか?」これで本来の“1984”の世界と異世界である“1Q84”の2面性を表し、キッド氏が考える「この本が“どう見えるか”」が表現できるからだった。

キッド氏のように、話の細部を詰めていく際の一番簡単な方法は……、

How? (どうやって?)、Why?(なぜか?)⇒ Because~(なぜなら~)

と話を展開していくことにある。あるいは5W1Hを使うのだが、そのあたりはまたあらためて紹介させていただこう。いずれにしても、実際にこの言葉を口に出さなくても、この考え方で「この話は何か」「どうすれば見せられるか」「なぜか」「なぜなら」~と、話を突き詰めていくことで、自然と論理を展開していけるのである。

キッド氏の作品は時系列で作品を眺めてもおもしろいが、「なぜこうなったのか」の思考過程を聞くほうが、よりいっそう作品への興味をひくだろう。こうした話の展開は、私たちの仕事や日常でもいろんな形で応用できるはずだ。